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9. 海銃≪LevaNoiA≫

Auteur: Mr.Z
last update Dernière mise à jour: 2025-08-06 23:30:57
 始まった瞬間、ケンは何かを使って飛び上がり、なんと天井に逆さで立って見せた。

「お前の事はよく知ってんだ、逆にお前も俺の事をよく知ってるだろ? だが、こいつは知ってんのか? あぁッ!?」

 想定していない場所からの激しい銃撃が続き、俺は何も対応できないまま2ラウンド取られていた。

 1試合は3ラウンド。頭か心臓に攻撃が入った時点で1ラウンド取られるため、天井からの一撃はあまりに有利だった。

「てめぇはな、家でのんびり"WAREC"見とけや、な?」

 ヤツの特に厄介のところは、こっちが天井に撃っても、なぜか弾が届かずに止まって落ちてしまうところだった。まるで勢いを失ったかのように、何も銃の意味を成していない。

「おい、早く諦めろやッ!! そうやって逃げ回って無駄な時間稼ぎすんじゃねぇッ!!」

 どうにか撃たれる前に遮蔽物へと走り、防ぎ続けているが、もうあまり耐えられそうにない。

「だからてめぇは"偽プロ"なんだよッ! スアちゃんの枷になってる事、さっさと気付けやッ!!」

 枷⋯⋯?

 俺が⋯⋯スアの⋯⋯?

 不意にスアが俺に話しかけて来た風景が浮かんだ。あの時の顔は、俺の事をそんな風に思っていないはずなんだ。

「"昔の事"をいつまでも引きずらせやがってッ! スアちゃんの優しさに、いつまでも付け込んでんじゃねえぞッ!!」

 こんなどうでもいい言葉に、なんで動揺してんだ俺は⋯⋯

 スアはずっとその事を気にして⋯⋯?

 ♢

 高1春の入学式。

「どう? 好きなりそ?」

 ピンクのプリーツミニスカートを靡かせ、俺に喋りかけてくる彼女。

 今日からお互い高校生。それを示すように、俺は水色の制服、スアはピンクの制服を着ている。

「会ってそうそう何言ってんだよ」

 俺が先に歩き出すと、スアが隣を歩き出す。

「ザイ似合うね~、やっぱこの高校の制服、かっこいいね~」

「それ俺が似合うんじゃなくて、制服が格好いいだけだろ」

「んな事ないよ~。ほれっ!」

「おいっ!? 何やって!?」

 突然スアは俺の腕に飛び付いてきた。ピンクのブレザーの上からでも、胸の感触が伝ってくる。

「ね? 似合ってるのが分かったでしょ?」

「分かったから! こんな人前で変な事すんなって!」

「変な事じゃないでしょ~。付き合いの一つだもん」

 いやここ日本だし
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