共有

第四話

作者: 響優香
last update 公開日: 2026-08-04 03:00:00

ガタン、と今日何度目かもわからない大きな衝撃が、朦朧としているエルゼの身体と脳を揺らした。

屋敷の重厚な扉をくぐり、ようやく石畳の振動から解放され、エルゼの意識は泥のように濁り、沈みそうになる。

けれど意識を失うわけにはいかない。

廊下には使用人たちが行き交っている。

意識があるからすれ違う時に跳ね上がる身体を抑えることができているのに、もし、意識がなかったら自分のはしたない様が見られてしまうかもしれない。

ようやく車椅子がエルゼの部屋で止まり、同時にゆっくりと杭の動きが停止する。

だが、酷使され、すべて吐き出したはずの身体は、熱い疼きを未だに訴えてきていた。

「お帰り、二人とも。随分と時間がかかったね? 僕の方が早く仕事を終えるなんて」

聞き慣れた穏やかで優しい声。

エルゼが必死で重い瞼を上げると、そこには完璧な微笑みを浮かべたアルベールが立っていた。

「顔色が一段と明るくなっているね。……エレノア、エルゼの”浄化”はうまくいったかい?」

「ええ、エルゼは自分から口付けを強請るほどでしたのよ。それほどまでに昂ぶって、ほら、こんなにぐっしょりと……」

エレノアはわざとらしく車椅子の湿ったシートを指さす。

エルゼはお兄様にそんなところを見られ、羞恥で死んでしまいたかった。

だが、謝る声すら出ず、ただ熱い吐息を漏らすことしかできない。

「そうか。エルゼから強請るとは珍しい。それほどまでに今日は”毒”が回っていたんだね。可哀想に」

アルベールが痛ましそうにその頬を撫でると、エルゼがその指先にピクリと反応する。

アルベールは手際良くエルゼの拘束を外し、軽々と車椅子から抱き上げる。

「んんっ……!!」

杭が抜ける瞬間、それはまたピストンとは違った快感をもたらした。

すべてから解放されたのも束の間、エルゼの火照った身体が、最愛のアルベールの体温でさらに新たな火がついてしまう。

「それでは、わたくしはこれで失礼しますわ。エルゼ、またね」

エレノアは小さく手を振り、帰っていった。

「さあ、エルゼ。エレノアの浄化は激しいから疲れたろう。少し魔力を整えてから眠ろうか」

「は、い……。おにいさま……」

アルベールはエルゼをそっとベッドへ降ろすと、エルゼの乱れた銀糸を、魔力を込めた指先で整えていく。

「んっ……」

その指が、髪を透かして僅かに白いうなじに触れただけで、エルゼの身体は再び跳ね、また昂ぶっていく。

「あっ……おにい、さま……っ」

「やっぱりエレノアの浄化で、魔力のバランスが少し乱れているね。整えてあげるから静かにしているんだよ」

アルベールは魔力を込めた手のひらをエルゼの身体のラインに沿って滑らせていく。

直接肌に触れてすらいないのに、アルベールの魔力に反応し、激しい熱を帯び破裂しそうになる。

「あぁぁ……っ! おにいさま……っ! んんっ……!」

「静かに、エルゼ。そんなに大きな声を上げたら外の人間に聞かれてしまうよ。”淫乱な女”として幽閉されてしまうかもしれない。そうしたら僕らと離れ離れになってしまうかも……」

「い、や……です。がまん、します……っ」

「いい子だ、エルゼ。僕もエルゼと離れるのは嫌だからね」

アルベールは肩を優しく抱き寄せ、額に口付けを落とす。

だが、その唇から、身体を直接灼くような濃厚な魔力を、エルゼの脳内へと直接吹き込んだ。

「……っ!!! 〜〜〜っ!!!」

エルゼは声にならない悲鳴を上げ、ガクガクと腰を揺らす。

何度も、何度も、激しい絶頂を強制される。

「……はしたないよ、エルゼ。そんなに必死に腰を振って。端から見たらエルゼが僕のことを誘っているようにしか見えないだろうね」

「……っ。……ん……は、ぁ……っ」

「こんなに淫乱な姿、他の貴族に見つかったら拐われて、光の差さない地下牢で一生慰み者にされてしまうかもしれないよ」

「い、やです……お、にいさま……たす、けて……」

「安心して、エルゼ。ちゃんと言うことを聞けば、僕とエレノアがエルゼを守ってあげるからね」

エルゼは涙を流しながら、自分を弄ぶ魔力の主であるアルベールに縋りつき、小さく頷いた。

アルベールはその無防備な姿を眺め、冷酷な笑みを深める。

「そうだ、明日は僕とエレノアから、エルゼにプレゼントがあるんだ。とても素敵な”指輪”だよ」

「ゆび、わ……?」

「ああ。きっとエルゼの魔力も安定しやすくなると思う。明日、それを”自分の手で”指に嵌めるんだよ。そうしたら、今よりもっと楽になれるはずだ」

アルベールは虚脱して目の焦点が合わなくなったエルゼの、その細い指をそっと撫でる。

それは”隷属の指輪”。

所有者が登録された後、本人が自ら指に嵌めることで契約が完了し、所有者の意のままに、心も身体も操られる呪いのような禁忌の魔具。

「さあ、おやすみ。僕たちの可愛いエルゼ」

アルベールの放つ柔らかな魔力が、抗い難い強制的な睡魔となってエルゼを襲う。

(おにいさま……)

エルゼは、自分を蝕む元凶であるはずの兄の腕の中で、安らかな寝息を立て始めた。

明日に何が起こるのかも、その指輪が何を意味するのかも、露ほども知らずに。

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

最新チャプター

  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第五話

    翌朝、柔らかな朝日が寝室に差し込む中、エルゼはこれまでにないほど身体が”軽い”感覚で目を覚ました。いつもの頭痛も、肌を滑る不快な感覚も、今は驚くほど静まっている。「おはよう、エルゼ。気分はどうだい?」枕元には、既に着替えを済ませたアルベールと、彼に寄り添うように立つエレノアがいた。「おはようございます。お兄様、お姉様。……不思議、です。今日は身体が痛くなくて……!」「ふふ。それは良かったわ。アルベール様が夜通しあなたの魔力を整えてくださっていたのよ」「そうだったんですね……ごめんなさい、お兄様……」しゅんと俯くエルゼに、アルベールは優しく微笑み、頭を撫でる。「気にしないで、エルゼ。ごめんなさいよりも、エルゼにはありがとうって言って欲しいな」「あ……ありがとうございます、お兄様」「いいんだよ。エルゼが元気になるのは、僕にとって一番嬉しいことだ。……そうそう、エレノア」「ええ、用意していますわ」エレノアがエルゼのベッドに歩み寄り、持っていたベルベットの小さな箱の蓋を静かに開け、エルゼに見せる。中にはアルベールの髪を煮溶かしたような細い銀に、昏く紅い魔石が飾られた指輪が収められていた。「わぁ……綺麗……」「さあ、エルゼ。私たちからのプレゼントよ。これを嵌めれば、あなたのその不安定な魔力も今みたいに安定するでしょう」「……これを、私が……? いいのですか……?」エルゼは、あまりに

  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第四話

    ガタン、と今日何度目かもわからない大きな衝撃が、朦朧としているエルゼの身体と脳を揺らした。屋敷の重厚な扉をくぐり、ようやく石畳の振動から解放され、エルゼの意識は泥のように濁り、沈みそうになる。けれど意識を失うわけにはいかない。廊下には使用人たちが行き交っている。意識があるからすれ違う時に跳ね上がる身体を抑えることができているのに、もし、意識がなかったら自分のはしたない様が見られてしまうかもしれない。ようやく車椅子がエルゼの部屋で止まり、同時にゆっくりと杭の動きが停止する。だが、酷使され、すべて吐き出したはずの身体は、熱い疼きを未だに訴えてきていた。「お帰り、二人とも。随分と時間がかかったね? 僕の方が早く仕事を終えるなんて」聞き慣れた穏やかで優しい声。エルゼが必死で重い瞼を上げると、そこには完璧な微笑みを浮かべたアルベールが立っていた。「顔色が一段と明るくなっているね。……エレノア、エルゼの”浄化”はうまくいったかい?」「ええ、エルゼは自分から口付けを強請るほどでしたのよ。それほどまでに昂ぶって、ほら、こんなにぐっしょりと……」エレノアはわざとらしく車椅子の湿ったシートを指さす。エルゼはお兄様にそんなところを見られ、羞恥で死んでしまいたかった。だが、謝る声すら出ず、ただ熱い吐息を漏らすことしかできない。「そうか。エルゼから強請るとは珍しい。それほどまでに今日は”毒”が回っていたんだね。可哀想に」アルベールが痛ましそうにその頬を撫でると、エルゼがその指先にピクリと反応する。アルベールは手際良くエルゼの拘束を外し、軽々と車椅子から抱き上げる。「んんっ……!!」杭が抜ける瞬間、それはまたピストンとは違った快感をも

  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第三話

    エレノアは車椅子の前に回り込み、エルゼの熱を帯びた頬に両手を添えると、そっと唇を重ねる。震える唇を奪う動作は、驚くほど優雅で、そして強欲だ。「んむぅ……っ。ん、んぅ……」震えるエルゼの唇を割り、湿った舌を深く差し入れる。エレノアはわざと水音を立て、逃げ場のない口内を隅々までまさぐり尽くした。「んっ……ふ……んん……っ」熱に浮かされ微弱な杭の動きと相まって、ひたひたと快感が昇ってくる。エレノアはエルゼからほんの少し、体調に触らない程度に魔力を吸い出す。するとエルゼの身体は余計に感覚が鋭敏になり、舌の些細な動きだけで達しそうになる。その瞬間、エレノアは不意に口を離し、二人の間に光る銀の糸を垂らした。「あっ……は、あ……おねえ、さま……」「ほら、余計に昂ぶってしまったでしょう? 身体がこんなにわたくしを欲しがって震えているわ」「ごめん……なさい……、おねえ、さま……っ。くるしい……の、たすけ、て……」エルゼは菫色の瞳を涙に濡らし、縋るようにエレノアを見つめる。エレノアは満足げに微笑み、その震える唇を指でそっとなぞった。「もちろんよ、可愛いエルゼ。すぐに”良く”してあげるわ。エルゼはわたくしにどうして欲しいの? 自分の口で言ってご覧なさい」「あの……おねえさまの……、舌で……その……くちづけ、を……」「おねだりができて偉いわ、エルゼ。それじゃあたっぷり口付けをしてあげるわね。口付けをしている間に果ててしまっても、わたくしが許すまで頑張るのよ」躊躇うエルゼのはだけたブラウスの隙間、熱を持って尖った先端まで指を滑らせる。エルゼは俯き羞恥に顔を染めながらも、身体を追い詰める快楽の飢えに負け、震える身体でエレノアの指先を受け入れる。先端を摘まれ、カリカリと引っ掻かれると、目の前にチカチカと火花が散る。「んっ……。あぁ……っ!」「いいわ、その調子よ」エレノアはエルゼの顎をクイと上げると、約束した通り唇を塞いだ。先程よりも深く、強引な口付け。エルゼの舌にエレノアの舌を絡め吸い付きながら、車椅子のスイッチを操作した。「んむぅ……っ!? んん……っ!!」(お腹の奥が…っ!? ああ、でも、お姉様の舌も……!)微弱だった杭のピストンが加速し、下から最奥を突き上げられる。上からはエレノアに口内を蹂躙され、下からは凶悪な突き上げに曝され、

  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第二話

    「さあ、行きましょうか」アルベールよりも力強く、そして容赦のない手つきでエレノアは車椅子を押す。ガタン、と石畳の段差を超えるたび、車輪と連動した杭がエルゼの最奥を無慈悲に抉った。「あぁ……っ! く、うぅ……、お姉様……少し、速いです……」「あら、そう? でも、早く行かないとお昼には萎れてしまうみたいなの。もしかして……エルゼはこの程度の刺激にも耐えられないほど、”淫ら”になってしまったの?」「違い、ます……。大丈夫、です……」エレノアは歩みを止めるどころか、わざと石畳の凸凹が大きい道を選んで進んでいく。車輪が回るたび、エルゼの体内で杭が激くピストンを繰り返し、段差を超えるたび最奥を突き上げられる。「んっ、く、うぅ……っ」(我慢……我慢しなきゃ……っ)我慢すればするほど身体に力が入り、無意識に杭を締めつける。より異物感の増した杭から送られる、逃げ場のない快楽の奔流がエルゼを襲い、脳を灼き切っていく。「ひ……あぁ……っ! や、んん……!!」「駄目よ、エルゼ。大きい声を出してはいけないわ。庭師にでも見つかったら……それも”セレスティオ家の令嬢は治療器具で感じる淫乱”だとか噂されてしまったら……。使用人の噂は広がるのが速いの。すぐに他の貴族に知れて、地下牢へ入れられてしまうかもしれないわ」「淫乱……、だなんて、そんな……っ」エレノアはエルゼの耳元で囁きながら、その敏感な首筋に爪を這わせる。恐怖と羞恥、そして抗えない身体の反応。エルゼは涙で視界を歪ませながら、必死に唇を噛み締め声を殺そうとする。けれど、ベルトで固定され熱を逃がすこともできず、ただただ”治療”という名の凌辱を受け続けるしかなかった。やがて、生い茂る庭園の最奥。木々に隠されるように温室が建っていた。エレノアが、アルベールから贈られた温室だ。「お姉様……ここが?」「ええ。ここは、わたくしがアルベール様から頂いた温室よ。ほら、あそこに新しく植えた薔薇があるわ」ようやく止まった杭のピストンに、エルゼは吐息を漏らしながらまともな呼吸を取り戻す。「わ……ぁ……。綺麗な薔薇ですね」「えぇ、とっても素敵な薔薇。香りも、格別に良いみたいだわ」エレノアは指を棘で傷つけないよう、器用に薔薇を一輪摘み取り、エルゼの鼻先に薔薇を近づけた。「……! 本当に良い香り……。甘くて……。

  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第一話

    陽の光に溢れる、爽やかで気持ちの良い午後。 けれど、エルゼはカーテンの隙間から零れる光のせいで、目覚めた瞬間から酷い頭痛でクラクラしていた。 シーツが肌を滑る微かな刺激にさえも、肌が粟立つような酷い不快感を覚える。 王国で産まれ、四歳で両親の死によって魔国の親戚に引き取られたエルゼ。 五歳になったあたりから体調を崩すことが多く、今でも調子の良い日は殆どない。 枕元にはいつの間にか従兄のアルベールが座っていた。 青みがかった白銀の髪は朝日に透け、宝石をそのまま嵌め込んだような深く青い瞳。 微笑みを浮かべエルゼを自愛に満ちた瞳で見つめる様は、まるで天使のように美しかった。 アルベールはエルゼの乱れた髪を優しく梳く。 エルゼの銀糸に光が当たるとうっすらと薄色に光り、柔らかな髪がアルベールの指の間を滑る。 「今日も顔色が悪いね。大丈夫かい? 僕の可愛いエルゼ」 アルベールがエルゼの瞳を覗き込む。 その菫色の瞳は、苦痛に揺らめいていた。 「お、兄様……。身体が、また……おかしいの……」 エルゼは知らない。 アルベールの魔力操作が、エルゼの体内の魔力を掻き乱し、内側からエルゼを傷つけていることを。 体内の魔力を、アルベールは更に強引に掻き乱した。 「あ……ぁ……! ぁ……つい……! おにい、さま……変な感じが、するの……っ!」 「可哀想に……。君の体の中で『呪われた魔力』が暴れて、また、『毒』が溜まっているんだね……。僕が今、楽にしてあげるから」 アルベールは痛ましそうに眉をひそめ、エルゼの震える両手を優しく包み込んだ。 魔力暴走をゆっくりと解除し、同時にエルゼの生命力でもある魔力を、自身の体内へと吸い上げていく。 「ぅ……ん……。んんっ……!」 魔力が抜かれ身体には喪失感と脱力が強まり、徐々にドロリとした快楽が忍び寄る。 エルゼの全身が自分の意思に反して淫らに震え、肌は熱を帯びて赤らんでいった。 「ひ……ぁあ……! んっ……あぁ……!!」 「しっ……静かに。こんなに淫らな声を出して、誰かに聞かれでもしたら……。汚らわしいと判断されて、君は幽閉されてしまうかもしれない。辛いだろうが耐えるんだよ。大丈夫。僕はエルゼの味方だから」 エルゼは羞恥に震え、涙を滲ませながらアルベールを見上げる。 (こんなにいやらしい声を上げてしまう

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status