LOGIN朝早くからの境内での掃除を軽く済ませる。 今朝は兎月が手伝ってくれたおかげで、いつもより早く終わらせることが出来た。 なお、白妙はいつも通り見ているだけだ。 小夜は箒を片付けると、拝殿へ向かい、お参りをする。「わざわざ拝殿でせんでもここにおるではないか、神が」「......白妙様のその自信、どこから来るんですか?」「自信も何も事実だからな。それより腹が減ったぞ」「......夜通し飲んでたくせに」 小夜はボソッと呟いたが、白妙は地獄耳のようで、そこからお小言が始まった。 ......もうこの流れは何度目になるだろうか。 慣れてしまって、小夜は諦めの境地である。「......白妙様。お小言はいい加減にしないと朝ご飯の時間が遅くなるだけですよ?」「む......仕方がない。それでは家に戻るぞ」「ハイハイ。......食いしん坊」「何か言ったか?」「いいえ! それより着替えなきゃいけないので先に居間に行っていてくださいな」 小夜は白妙と兎月と別れて、自室へと入っていった。 部屋着へと着替えてキッチンへと向かう。 そして、朝食の支度を始める。 すると珍しく白妙がキッチンまでやって来た。「うむ。やはりそなたの飯はいい匂いがするな」「もう。何度いうんですか?それ」「それだけではないぞ?巫女装束も似合ってはいるが、普段着ているものの方が年相応でいい」「......白妙様、酔いが残ってます?いつもならそんなこと言わないのに」(なんだか言っているのが変態オヤジ臭い......)「小夜。失礼なことを考えてはいないか?」「い、いえー? そんなことはありません!」「小夜! ご飯ご飯!!」「はいはい! 今行くよー! ほら、白妙様も手伝って!!」「......そなたくらいだぞ? 神を顎で使うのは」 その白妙の言葉を聞き、小夜はハッと何かを閃いたかのように目を輝かせた。 その目の輝きに、白妙は若干嫌な予感を覚え、身構える。「白妙様! 人間になる事は可能でしょうか?!」「......一体急になんなんだ......」「今日は土曜で休日! 参拝客は多い! よって、白妙様にも働いていただきます!!」 小夜は「名案!!」といわんばかりに無い胸を張りながら白妙に言った。「我はいるだけで大丈夫だぞ」「ふっふっふ......。働かざる
小夜は寝付けないまま朝を迎えた。 真夜中の兎月の姿......忘れることが出来ない。 この小さく愛らしい子供の姿からは想像もつかない美しい青年の姿。 美しい仕草。 そして――。 今思い出しても、ドキドキする。「ふわぁ......小夜? おはよう!」「お、おはよう......うーちゃん」 いつもと変わらない兎月の様子に、小夜は少し安堵する。「さ、さぁ! 今日も朝のお務めしなくちゃね!」「小夜」「ん? なに? うーちゃ――」 チュ。「?!」 突然、頬に柔らかい感触。 小夜が目を丸くすると、兎月は満面の笑みを浮かべていた。「夜中のこと、忘れてないぞ!! 僕はいつでも小夜を想っているからな!!」「......う、うん」『愛してるよ、僕の小夜』 昨夜の兎月の愛の囁きが耳にこびりついて離れない。 顔が熱くなる。 まともに兎月の顔を見ることができない。「小夜?」「う、ううん! なんでもない! 着替えるから、先に居間に行っててくれる?」「分かった!」 兎月はベッドからぴょんッと降りると、小夜の部屋から出て行った。 小夜はその姿を見て安堵する。 これ以上二人きりでいると......なんだか落ち着かない。 ――これから、どうやって兎月と接していけばいいんだろう...... 小夜はそんなことを考えながら巫女装束に着替え、兎月の待つ居間へと向かった。「さ、小夜!!」 階段を降りると、兎月が名を呼びながら駆け寄ってくる。「うーちゃん? どっの?」「いいから早く! 来てくれ!!」 兎月に手を引かれながら居間に入ると、そこに広がる光景に目を見開き絶句した。「な、なに、これ......」「んー?なんだ......?小夜か......?」「し、白妙様? この有様はなんですか?! 一体何本空けたんですか?! って、酒くさっ!!」「神に向かってその態度......。躾が必要か......?」「も、申し訳ございません!! ほら! お父さん! 起きて! 朝のお務めがあるでしょ!」 権蔵は空のお酒瓶を抱えながら眠りについていた。 それを小夜は必死に起こす。 ゆさゆさと揺さぶられ、権蔵はやっと目を覚ました。 そして辺りを見渡すと、顔をサァっと青ざめさせた。「し、白妙様!! 申し訳ございません!! 酒の酔ってとんだご無礼を
小夜と兎月が風呂から上がると、白妙は権蔵と共に酒を楽しんでいた。「珍しい......白妙様がお酒飲んでる......」「権蔵が一人酒が寂しいというのでな。飲めンわけではないから付き合っていた所だ」「......神様って酔っぱらうの?」「小夜、そなた神を何だと思っているのだ?」 白妙に睨まれ、まさしく蛇に睨まれた蛙状態。「兎月。そなたもどうだ? たまにはこういう付き合いもよいではないか。何より、今日は満月だ。共に月見酒といこう」「......白妙様が優しい......」「小夜」「ハーイ! 私は大人しく勉強して寝まーす!!」 小夜は逃げるようにして自室へと駆け込んだ。 *** 勉強も終わり、小夜はベッドへと入り睡魔に誘われるがまま眠りについた。 ――どれほど時間が経っただろうか。 ベッドが軋む音で目が覚めた。「ん......何......?」「......小夜。起きた?」「......どちら様で?」 ベッドに乗っかかっていたのは見知らぬ青年。 これまた美しい人がいたものだ。 ――白妙にも引けを取らないのではないか?「この姿で会うのは初めましてだね」「......まさか、うーちゃ、ん?」「! そうだよ! よかった。分かってくれて」 なんとこの美青年、あの"兎月"だというではないか。 普段の活発な少年と違い、どこか落ち着きを持っている。「ど、どうしたの? その姿......」「今日は満月だからね。こっちが本来の姿。霊力もいつもより強いよ?」「そ、そう......。でも、どうしたの?」「んー?白妙様も権蔵も酔いつぶれたからさ。邪魔者はいない方が都合がいいから」「......邪魔者?」 邪魔者とはどういうことだろうか? そう考えながら体を起こすと、兎月は小夜の髪を一房とって口づけを贈る。 小夜は一連の美しい動作に顔を赤くする。 胸がドキドキといってうるさい。「う、うーちゃ......」「小夜。僕は小夜だけのモノだから。僕が僕が守るのは小夜のことだけ。......愛してるよ、僕の小夜」「あ、愛......?!」「ふふっ。可愛いなぁ......」 兎月は小夜の頬に手を滑らせる そして、そのまま唇に触れた。「......っ」 小夜は今まで受けたことのない扱いに戸惑っていを受ける。 頭の中が真っ白
小夜は食後の片づけを終えると、兎月を連れ脱衣所へと赴いた。「うーちゃん、服脱げる?」「うん! 大丈夫だぞ!!」 小夜と兎月は服を脱ぎ、浴室へと入っていく。 まずは浴槽に浸かる前に体を清める。「うーちゃん、頭洗ってあげる」「わぁい! 小夜が洗ってくれるのか?!」「もちろん! 目に泡が入ったら大変だから目を瞑ってね?」 小夜がそういうと兎月はいわれた通り、目を瞑る。 生前、ただのうさぎだった頃はよく小夜が体を洗ってくれていた。 それを思い出すと、兎月は懐かしい気持ちになって、心をほわほわさせていた。「痒いところはありませんかー?」「んーん! 気持ちいいぞ!!」「それはよかった」 兎月の頭を洗いながら、小夜も子供の頃を思い出し笑みを零した。 そんな小夜に兎月は不思議に思い目を向ける。「? 小夜?」「あぁ、ごめんごめん!なんだか懐かしくなっちゃって」「?」「うーちゃんが生きてた頃もこうしてお風呂に入れてあげてたなぁって思って」「僕も同じことを思ったぞ!!」 二人は顔を見合わせながら笑った。 兎月はの頭と体を洗い終えると、今度は小夜の番である。「うーちゃん、先に湯船に入ってて?」「僕も小夜の頭洗ってあげたい!!」「えー?じゃあお願いしようかな?」「!! 任せろ!!」 兎月はたどたどしい動きで小夜の頭を洗い始めた。 小夜はその動作にくすぐったさを感じて思わず笑い声を零す。「ふふっ。くすぐったい」「ご、ごめんよ!!」「大丈夫よー。優しい手つきで眠くなっちゃう」 小夜は目を瞑りながら兎月の手に身を委ねた。 兎月が小夜の頭の泡をシャワーで流すと、先に兎月に湯船に入ってもらい、小夜も体を清めた。「小夜! 早く早く!!」「もう洗い終わるからね」 シャワーを浴び終えると、体にタオルを巻き、小夜も湯船に浸かった。「ハァー......生き返りますなぁ......」「そうですなぁ......」 二人は小夜が兎月を抱きしめるような形とる。 ――兎月の顔がみるみるうちに赤くなるが、小夜はそれを見て湯あたりでもしちゃったかな?と的外れの感想を抱いた。「うーちゃん、顔が赤いよ? なれないお風呂で湯あたりしちゃった?」「!! だ、大丈夫だ!!」「そう? ならいいんだけど......」 小夜には、兎月が何故そこまで慌
一週間の学校生活が終った。 その間にも、校内から校外、神社に来る人々を見てきたが、白妙が「うん」という人物は現れなかった。「んー、やっぱり神様の運命の人って難しいですね」「まぁ、そう簡単には見つからんだろうな」「そんなのんきな......言い出しっぺなのに......」「そもそもだが、簡単に見つかれば苦労はせんし、そなたらの手を借りたりはしない」 白妙はそういうと味噌汁を啜った。 今日の夕飯はサバの味噌煮にほうれん草のお浸しだ。 今までの食事を見ていると、白妙は肉より魚派のようである。「......そういえば気になっていたんですけど」「ん? なんだ? 言ってみろ」「そもそも神様って恋愛するんですか?」「......愚門だな。神が恋愛をしなければこの世に人間など生まれたりはせん」「と、いうことは、白妙様のことだからさぞおモテになったんでしょうね!」 小夜がそういうと、白妙は白妙はスッと目を逸らした。「......」 ......もしや。「まさか白妙様、恋愛経験なかったんですか?」「......そんなことせずとも子は生せる」「冷めてますね......」 神様って現実主義すぎる......と、少し残念に思もいながら小夜はほうれんそうのお浸しをつついた。 すると、兎月が元気よく手を挙げた。「僕は小夜のこと大好きだぞ!!」「ふふっ。ありがとう、うーちゃん」 小夜は子供にするように兎月の頭を優しく撫でる。「小夜! 僕お風呂に入ってみたい!!」「そっか! じゃあ一緒に入る?」「!! いいのか?!」 兎月は身を乗り出しながら目を輝かせる。 そして、白妙に勝ち誇ったような顔を向ける。 しかし、白妙は動じることはなかった。「流石、うさぎ。性欲が強いことで」「なにおぅ?!」「まぁまぁ。ケンカしないで。白妙様?うーちゃんはまだ子供なんだから性欲とか言わんで下さいな」「小夜......そなたものん気なものだな」「?」 白妙の意味深な言葉に、小夜は疑問を持った。 実際に兎月は子供の姿なのだから、何も気にすることはないだろう。 何なら、親戚の小学生の男の子とも入ったことはある。 ――その時"ぺったんこの貧乳ねーちゃん"といわれたのにはキレたのはいい思い出なのだが。「兎月。そなたに下心が見えておるぞ?」「な、なん
小夜と白妙、兎月は透と小判、貧丸と別れて神社に入っていく。 遠くから透が、「貧丸もこっちくんの?!」と叫んでいる声が聞こえる。 ――なんだか、不憫に思えて仕方がない。 透よ、達者でな。 そう思った小夜達なのであった。「お父さーん。ただいまー」「おう。おかえりさん」「急いでご飯の支度するね!」「権蔵。いつも務めご苦労だ」「い、いえいえ!! 白妙様! これが私めの役目ですので!!」 ごんぞうは白妙に対して、頭を下げる。 小夜は「大袈裟だなぁ」と思いながら、エプロンをつけ台所へと姿を消していった。 白妙はそれを見送ってから権蔵へと話かける。「権蔵。小夜はどうやら強い霊力を開花させたらしい」「......と、いいますと?」「食事などいらぬはずの我や兎月が食事を欲している。......他の飯ではダメだ。"小夜の作った飯"でなければ、な」 権蔵は、まさか小夜にそんな力が宿るとは思ってもみなかった。「......一つ忠告しておく。小夜の霊力は全てにいい影響を及ぼすものではない。悪鬼にも狙われる可能性がある」「なんですって?!」「安心しろ。我が傍にいる限り、大体のモノは近づくことすらできない。......だが、我と同等、もしくはそれ以上の力のあるモノには......」 白妙の含みのある言葉に、権蔵は生唾を飲み込む。「小夜のあの霊力......悪鬼だけでなく、神も小夜を狙う可能性がある。正直そうなった時、我でも守り切れるかどうか......」「そ、そんな......」 権蔵はサァッと血の気が引いた。 今まで普通の少女として育ててきたのに、今ではその身を狙われる存在になってしまった。 ――まぁ、変わるきっかけを作ったのは小夜自身であるのだが。「権蔵。そなたには昔から良く仕えてもらっている。だから、小夜のことは我に任せてはくれないか? ――何があっても守り切ろうと誓おう」「......よろしくお願いします。私達は白妙様しか頼ることが出来ません」「おい! 権蔵!! 守護霊である僕を忘れるんじゃない!!」「なんだ、兎月。そなた居ったのか。てっきり夕飯のつまみ食いにでも行ったのかと思っていたぞ」 兎月は忘れ去られていたことに加え、つまみ食い犯の汚名を着せられたのであれば兎月とて怒るのであった。「小夜に近づく悪いヤツは、僕が懲らし







