LOGIN誕生日、俺は大学時代の友人たちに誘われてホテルで飲んでいた。
もう大々的に祝う年ではないが、俺の誕生日というのは利害がある付き合いの奴らを集めるのに役立つ。
仕事と家の話を中心に、時に思い出話を混ぜて2、3時間過ごす。
そんな予定でいたが、あらかた酔いがまわったところで一人が同じホテルで開かれているパーティーに女が来ているから呼ぼうということになった。
男だけで飲むほうが気楽で好ましいが、こういうことはよくある。
盛り上がっている雰囲気に水を差すのも無粋なので黙っていると、個室に女たちが入ってきた。
その中に凛花がいた。
凛花は子どもの頃からしつこく俺に付き纏っていたが、ここ数年そのしつこさが増していた。
他の者なら、強引にこられれば多少痛い目にあわせて追い払えばいいが、吉川家の人間なので気を使っている。
彼らが持っている桐谷グループの株を売る口実を与えないためだ。
吉川凜花の父親はいま兄の息子である甥と次期当主争いをしており、まとまった資金を得るために持っている桐谷グループの株を売りたがっている。
それを高値で買うという海外資本の会社もあるのだが、俺たちはそこに買われると厄介。
吉川家の現当主の方針で売ることはできないでいるので、売る口実を作らせないように注意する。
面倒だけど無難にやり過ごさなければいけない、俺にとって凛花はそういう存在だった。
好意はない。
俺はもちろん、吉川凜花のほうも。
彼女にとって俺は自分をよりよく見せるアクセサリーでしかない。
この日もスマホを片時も離さず、SNSに何かを投稿しては何人が見た、どう評価されたと騒いでいた。
あの夜、体の異変を感じたのは突然だった。
面倒を避けるため吉川凛花と距離をとることに気を取られ、異様なほどの体の熱さを感じ、性的な衝動を煽る、いわゆる媚薬を盛られたと気づく始末だった。
誰が入れたのかは分からない。
そもそも適当にその場にあったものを飲んでいたから、俺を狙
下着は脇によけられて蓮司さんの手が直接あそこに触れ、くちゅっとした音を立ててそこが指で押される。「んあっ」知らない刺激。体が思いきり跳ねてしまう。「あっ……あっ……」折りたたまれた肉が幾重にも重なった部分を蓮司さんの指が押し進んでいく。自分でも必要以上に触れない場所。何となく恥ずかしくて見ることもない。私でさえよく知らない場所。そこを、蓮司さんは触れて、しかもその目でしっかりと見ている。恥ずかしい。「熱いな」分からない。「十分に濡れているが……狭そうだ。痛かったら言ってくれ」……っ!蓮司さんの指が……。「痛いか?」痛みは……ない。首を横に振ると、さらに深くまで蓮司さんの指が……。「あ、あー……」……私の中に蓮司さんの指がある。「ひうっ!」私の体の中で蓮司さんが動く。誠司がお腹の中で動いていた感覚を覚えているから、何かが体内で動く感触は初めてではない。でも、これは違う。蓮司さんは大人で、男の人で……そういう欲がある。恥ずかしい。男性に欲望の対象とみられることが。それよりも、自分がそう見られていることに喜んでいることが。これが……性行為。別の個としている二人の大人なのに、相手の体内に体の一部を埋め、相手の一部を体に埋め込んでいる。その行為が恥ずかしくて堪らない。恥ずかしくて、堪らないはずなのに……。
「もう顔を上げても大丈夫だぞ」蓮司さんの大きなコートに覆い隠され、抱え上げられて運ばれてきた部屋で床に下ろされた。「あ……」足に力が入らず、よろけた体を蓮司さんが支えてくれた。支えてくれる腕の力強さにゾクッとする。「蓮司、さ……」「っ!」ゆらゆらする視界で蓮司さんが苦しそうに顔を歪める。その表情が色っぽくて、お腹の奥がきゅっと疼く。「あ……」太腿をゆっくりと粘度の高い液体が伝うのを感じた。ゆっくりと伝い落ちていく感触は、私を焦らすようでいて、気づけば疼く体を蓮司さんに押しつけていた。「くそっ、もう少し我慢してくれ」そう言って私を離そうとするのを感じて、私は蓮司さんに縋る。「やあっ……やだあ」我慢は苦しい。苦しいのは嫌だ。どうしたらいいのか分からない。「蓮司さん、熱い、熱いの、助けて……」「……くそっ」そう言うが早いか、蓮司さんは私を荷物のように担ぎ上げ、足早に歩き出した。「んっ、あっ、あんっ」蓮司さんが歩くことで体が揺れ、熱が蠢く場所を刺激されて声が漏れる。理性ははしたないと言っているけれど、体の熱はいまや渦巻き、暴れている。「熱い、蓮司さっ……苦しっ……ああんっ!」「くそっ、たちの悪い薬を桔梗に盛りやがって」 ふわっと体が浮く感覚がしたと思ったら、次の瞬間、背中に柔らかいものを感じた。先ほどあの男に横たえさせられたソファを思い出す。「やっ」「……桔梗?」!蓮司さんの声に目をあければ、そこにいるのは蓮司さん。その怯えたような表情に戸惑ってしまい、反射的に謝っていた。「いや……どうした?」「さっきを、思い出した……あの男に、ソファに……でも、大丈夫」蓮司さんだから……。「桔梗……俺
胸の奥がざわついている。熱い。苦しい。息が浅い。得体の知れないものが自分の中から湧き上がってくる。「ん……くっ」はしたない声が抑えられない。「あっ」身を捩ると布が肌をこすり、ゾワッとして、体の奥に熱が溜まる。 どうして。どうしてこんなに、身体が火照るの。肌を擦る布の感触を、もっと……なんて。なんでそんなことを思うの?そんなこと、望んでいるの? ――君のせいではない。私のせいではない。――テストステロンというホルモンの影響で体が熱をもっているだけだ。あの薬。飲まされた薬のせいだ。先ほどのことは私の意思ではない。薬によって無理やり引き起こされたもの。医師でもあるという石川さんが言ってくれたことが救いになる。私のせいではない。……よかった。――蓮司くん以外は誰も入れない。蓮司さんが来てくれる……。――それまで自分で慰めて耐えるしかない。慰める?分からない。何も分からない。分からないのに、何かを欲しているのは分かる。喉が渇く。肌が、空気に触れるだけで敏感に反応する。指先が、震える。自分の身体が、自分のものではなくなっていく。「やだ……やめて……」懇願しても、体の熱は引かない。かえって“なにを”を意識してしまって、意識がそこに集中してしまう。嫌だ。羞恥が、理性をかき乱す。これは、薬のせい。
苦しい!「ぐっ!」自分のうめき声で目が開いた。一体何が……うっ。体の中を逆流してくるものにえづくと、口の中にあった大きなものがなくなって……。「げぇっ……ぐっ、げっ……」びしゃりと床に吐瀉物が落ちる。その様子に思わず怯み、続いてせり上がってきたものをぐっと押さえる。 「我慢してはいけない、吐きなさい」……優しい声。あの男とはちが……っ!「はな……っ!」目の前にあった体を思い切り押しのけて、距離をとると着物の合わせを強く握る。……え?知らない、ひと。誰? 「落ち着くんだ、まずは胃の中のものを吐き出すんだ」「え? あ、きゃあっ」戸惑っている間に男性の手が私の後頭部を押さえ、反対の手が私の口の中に入ってこようとする。私はその手を噛んだ。「痛っ」叫んで男性は手を引いたが、それに安心する間もなくその腕に抱きしめられる。「いやああ……っ、ぐふっ」男性の拳がみぞおちをぐっと押してきて、喉が動いたと思ったらまた胃の内容物が逆流してきた。「そうだ、上手だ。苦しいよな。でも、そこに酒瓶が落ちてた。それでこの状況だ。強い酒が何かしらの薬かは分からないが早く、できるだけ多く吐き出したほうがいい」あ……。「そうだ。体の力を抜いて、我慢するな。もう1回いくぞ」そう言われて吐いたところで胃酸しか出ず、彼の舌を打つ音に体が震えた。「これ以上は無理か……君、連れは?」「お、お義祖母様と……あ、の?」難しい顔をした男に戸惑う。「この状況を見たら君のお祖母さん、吃驚して心臓が止まるんじゃないか?」着物は着崩れどころか脱げていて、暴れながら吐いたから吐瀉物が……この人の服にも……。「あ……」私の目線を追った男性が苦笑する。
連れていかれたのは8畳ほどの部屋。動かない私の体は男に人形のように運ばれる。意識はあるのに、体に力が入らない。これは、意図的。ソファに横たえられると、背中に柔らかいクッションの感触を感じた。この先の嫌な想像にゾッとする。「やめ……て……」白州と名乗った男の私を見下ろす目は、まるで玩具を見つけたようなもの。喜びと、残忍さがチラついている。「いやあっ」せり上がった恐怖に押されて喉から声が出る。涙が盛り上がるのを感じる。 「ああ、とても素敵だ。その怯えた表情……あはあ、堪らない」男は恍惚とした表情を浮かべると、スーツの内ポケットからお酒の携帯瓶を出した。男は私の目の前でその瓶を揺らす。瓶の中の液体はほんのりと琥珀色を帯びていた。男がふたを開けると、飲み口を私に寄せる。甘い香りに、スパイスのような刺激。「飲み給え」男はそう言うと私の顎を強く掴み、口の中に瓶の飲み口を深く差し込む。「んぐっ!」喉が詰まって、反射的に吐き出そうとしたのに、私の反応を分かっていたように男は瓶の底を頭のほうに押した。慣れた手口。反った首が気道を確保して、得体のしれない液体は喉を下って体の中に入っていく。とろりとした甘さ微かな苦味。「げほっ!」男が瓶の飲み口を口から外すと、ずっと我慢させられた咳が出た。喉が痛い。生理的な涙の滲む目に、男が満足気に空の瓶を振るのが見えた。「おお、ちゃんと飲めたな。うんうん、こうすれば君の体を傷つけずにすむし、お互いに気持ちいい」男の指が帯締めに触れる。結び目の中心に指がかけられ、力を込めて引くと一瞬苦しくなり、絹のこ
「素敵な絵ですね」和美お義祖母様に誘われてきた日本画の展示会場で、私は1つの絵に魅せられたように目を奪われた。隣りにいるお義祖母様も納得したように頷く。「石川明梗の作品ね。彼はまだ若いけれどすでに名の知れた日本画家なの。彼の絵はどれも素晴らしいけれど、私は彼の美人画が特に好きね」「そうなのですね」私が相槌を打つと、お義祖母様は私の絵を見比べて笑った。「どこか桔梗さんに似ているわ」「そう、でしょうか」美人画に描かれた人に似ているなんて、美人だと間接的に言われた気がして照れくさい。それが憧れて目標としている女性の一人であるお義祖母様なら尚更だ。 「桔梗さん?」「お義祖母様、私はもう少し……」お義祖母様が楽しそうにフフッと笑う。「とても気に入ったのね。素敵な出会いは大切にしなくてはね。私はのんびりと他の作品を見ているから、満足したらいらっしゃい」お義祖母様の気遣いに感謝して、また絵に向き直る。美しい。そして――懐かしい。なぜだろう。初めて見るはずなのに、胸の奥がきゅうっと締めつけられる。まるで忘れていた誰かに再会したよう。夢の中のような朧げで、でも何かを掴んだような感覚。絵の中の女は椅子に座り、うつむき加減で顔は見えない。薄紅の小袖に墨色の帯、髪は結い上げられて白い襟足が無垢でありながら艶めかしく際立っている。目元は伏せられ、唇は閉じて、その僅かな表情とも言えない表情には言葉にならない、切なく儚げな感情が見える。静かで、凛としていて、ああ、そう、誰かを待っているような寂しさを感じる。傍にいたい?だからここから離れられないの?心が、絵の中に引き込まれていくよう……。







