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第3話

Author: ノードリーム
翌日、私は仕事を休み、家で荷物をまとめた。

荷物は多くない。数着の着替えを持って行けば十分だった。

突然、チャイムが鳴った。

離婚協議書を届けてくれたバイク便の配達員だと思い、ドアを開けた私は呆然とした。

門の外に立っていたのは、莉奈だった。

彼女は真っ白なカシミヤのコートを着て、あのビデオ通話に映っていた男の子の手を引いていた。

私はドアノブを強く握りしめ、力を込めすぎた指の関節が白くなっていた。

「紗英さん、中に入れてくれないの?」

彼女は私の青ざめた顔を値踏みするように見つめ、その顔には隠しきれない優越感が浮かんでいた。

「昨日のビデオ通話じゃちゃんと話せなかったから、わざわざ湊(みなと)を連れて会いに来たのよ」

彼女はわざと子どもを前に押し出し、その動作には見せつけるような意図が満ちていた。

「湊はもうすぐ幼稚園に入るから、朔也さんも、この子にちゃんとした家庭がないことを可哀想に思ってるの。

湊は鳴海家の孫だから、私に子どもを連れて正式に同居してほしいって言われたわ」

朔也によく似ているその子どもを見て、胃の中が激しくかき回されるような不快感を覚えた。

「出ていきなさい!」

私は目を赤くして、エレベーターの方を指差して怒鳴った。

「その隠し子を連れて、私の家から出ていって!」

彼らの顔をもう一秒たりとも見たくなくて、私は力を込めてドアを閉めようとした。

しかし、莉奈は突然手を伸ばし、ドアの隙間をがっちりと押さえた。

彼女は私の耳元に顔を寄せ、声を潜めて軽蔑するような冷笑を漏らした。

「相沢紗英、何を貞淑ぶってるの?朔也さんが本当にあなたを愛してると思ってるの?

彼が自ら私に言ったわ。あなたと同じベッドで寝るたび、吐き気を抑えるために睡眠薬を飲まなくちゃいけないって。

あなたに触れると、当時のあの不良たちがあなたに馬乗りになっている姿が頭に浮かぶんだってさ」

彼女は私の目をじっと見据え、一歩ずつ近づいてきた。

「あなたは汚らわしいから、私で発散するしかないとも言っていたわ。私みたいに綺麗な体じゃないと、興奮しないって」

私の頭の中で必死に張り詰めていた糸が、この瞬間、完全にブツリと切れた。

十六歳の時の悪夢を癒すのに、私は丸十二年を費やしたのだ。

彼はあろうことか、それをベッドでの笑い話として、愛人に話して聞かせていたのか!

「あなたがその事を口にする資格なんてない!」

私は理性を失って叫び声を上げ、腕を振り上げ、全身の力を振り絞った。

莉奈の顔を思い切り平手打ちした。

パァンッ!

非常に甲高い音が響き渡った。

莉奈は打たれてよろめき、玄関のシューズボックスの角に額を強く打ち付けた。

瞬く間に鮮血が流れ出した。

傍にいた子どもは驚いて泣き叫んだ。

莉奈は血の流れる額を押さえ、這って後ずさった。

「狂ってるわ!この頭のおかしい女!今に見てなさいよ!」

彼女は湊を抱きかかえ、よろめきながらエレベーターへと駆け込んだ。

私は力が抜けてドア枠に沿うように床にへたり込み、目を閉じた。一筋の冷たさが髪を伝った。

決心がついた私はテーブルの下から半年の間ずっと楽しみにしていた超音波エコー写真を引っ張り出し、粉々に引き裂いた。

朔也へのサプライズとして用意していたはずのものが、今となっては私の顔に叩きつけられた平手打ちのように、ヒリヒリと痛んだ。

三十分後、弁護士が書類を届けてくれた。私はサインをし、離婚協議書をテーブルの真ん中に置いた。

外は土砂降りの雨になり、雷が轟いていた。

私はスーツケースを引き、家を出ようとした。

その時、ドガンッという激しい音が響いた。

玄関のドアが、外から朔也に蹴り開けられたのだ。

私が状況を理解する前に、額に青筋を立てた彼が一直線に突っ込んできて、私の首を強く締め上げた。

「相沢紗英!湊をどこにやった!」

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