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第 41 話

Auteur: 水守恵蓮
last update Date de publication: 2026-02-08 10:15:08
「瞬。まさか、プロポーズしてないんじゃないでしょうね……?」

「い、いやいやいや!」

目力を込めて睨めつけられ、瞬が弾かれたように勢いよく首を振った。

「そういう意味合いのことは言ったし、恵麻もそう解釈してくれてる。……な?」

じっとりと咎める視線から逃げて、私に助けを求めてくる。

「う、うん……」

私は一応同意したけれど、気付いてしまうとどうにも気になる。

なんとなく目を合わせられず、ご機嫌な棗を無駄にあやして誤魔化した。

そんな私と瞬を交互に見遣り、思案顔をしていた哲也さんが、

「よし」

と悪戯っぽく目を細めた。

「わかってくれてるからいいってもんじゃない。瞬君、男たる者、こういう大事
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