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第9話

ผู้เขียน: 花野めい
財界の宴会の場で由樹に出くわすたびに、洲人は必ず何かしら突っかかってくる。

とはいえ、真正面からぶつかっても由樹には到底歯が立たない。だから彼は代わりに、由樹の周りにいる人間に矛先を向けるのだ。

たとえば、三久のような、立場の弱い者に。

三久はすぐさま踵を返し、人目につかない裏口から出ようとした。

だが、洲人はすでに獲物である三久を見つけていた。周りの取り巻きを強引に押しのけて、足早に追いかけてくる。

三久が宴会場を出て、人気のない角の廊下に差し掛かった途端、行く手を阻まれた。

「やあ。早坂さんじゃないか。見間違いかと思ったよ」

由樹が冷徹で口数が少なく、整った顔立ちに一切の隙がない男だとすれば。

対して洲人は、顔の造作こそ派手で整っているが、やたらと口が回り、隙あらばいつか一発顔面を殴ってやりたくなるような男だ。

「君、支社に左遷されたんじゃなかったのか?どうしてまた、しれっと本社勤務に戻ってきたの?」

三久は由樹の有能な右腕として、財界では広く顔が知られていた。半年前に突然支社へ異動して支社長に就いたことで、由樹の逆鱗に触れるような何か重大な失態を犯したのではないかと、尾鰭をつけて噂されていたのだ。

「仕事の都合で戻っただけです」

三久は感情を殺して短く答えた。

「神崎社長。私はこれで失礼します」

洲人は壁にドンと手をつき、行く手を強引に塞いだ。

「酒井の奴も忙しそうで、声もかけられないしさ。あいつに免じて、君が代わりに俺の酒に一杯付き合ってよ」

三久の手の中にあった水の入ったグラスを、強引に奪い取り、代わりになみなみと注がれた赤ワインのグラスを押しつけた。

「残さず全部飲んでね」

神崎家はこの街の財界では酒井家に次ぐ強大な影響を持つ。洲人も一声上げれば周りがすぐに動く存在だ。

以前の三久なら、不要な波風を立てずに穏便に済ませたくて、彼に絡まれても適当に付き合って酒を飲んでいた。

でも、今日は絶対に無理だ。

「申し訳ありません。体調が優れず薬を服用しておりますので、お酒は一滴も飲めないんです」

そのもっともらしい言い訳を、洲人は全く信じなかった。

「顔色なんか全然悪くないじゃない。なに?酒井から、俺とは縁を切れって言いつけられてるわけ?」

赤い液体の揺れるグラスが、三久の口元にじりじりと迫ってくる。このまま断り続けたら、傍若無人な洲人なら、力ずくで飲ませかねない。

少し開いた宴会場のドアの隙間から、この角度でちょうど由樹の姿が見えた。

由樹も、騒ぎに気づいて視線をこちらへ向けた。

視線が一瞬、空中で絡み合った。由樹の冷ややかな目がさらに細められたかと思うと、彼はすぐに興味を失ったように視線を外して、何事もなかったように談笑に戻ってしまった。

「ほら、見てみろよ。酒井の奴は君のことなんか、もうこれっぽっちも興味がないんだよ。初恋の幼なじみといちゃつくのに夢中でさ。あんな薄情な上司のもとで働いて、一体どうするつもり?」

洲人は三久の顔を見下ろし、大げさに肩をすくめて嘲笑った。

「君のことが気の毒になるよ」

三久は少しかすれた声で、静かに言い返した。

「ご冗談を。私は一介の部下に過ぎません。村上さんと比べられるような立場じゃありません」

「じゃあ、こうしよう」

洲人は少し屈んで、三久と目の高さを合わせた。

「うちの会社に来いよ。給料は、今の酒井が出してる倍額を払う」

三久は呆れながらも、軽くうなずいて調子を合わせた。

「私のような者に声をかけていただけるだけで、光栄です」

洲人は、おだてて持ち上げれば機嫌を良くして乗ってくるタイプだ。むやみに突っぱねたら、プライドを傷つけられて余計にしつこくなる。

次の瞬間、目の前に高級な和紙の名刺が差し出された。

「これを持って、明日、九洲グループの俺の部屋に来なさい」

三久が驚いて顔を上げると、洲人の目はにこやかに笑っていたが、底光りするような本気の色が宿っているのがわかった。

有能な三久を引き抜けば、由樹の面目は丸つぶれになる。

これが洲人にとって、生まれて初めて、憎き由樹の鼻を明かせる絶好の機会なのだ。

冗談ではなく、本気であることは火を見るより明らかだった。

本気だからこそ、あからさまにここで断るわけにいかない。そうすれば徹底的に絡まれ、トラブルになる。

三久は名刺を恭しく受け取り、静かに頭を下げた。

「ありがとうございます」

「礼は要らないよ。早坂さんは見た目も美しいし、実力もある。倍の給料を払うだけの価値がある、当然の対価だよ」

洲人は本心からそう言っていた。彼はなんだかんだで、三久の秘書としての能力を本当に高く買っていたのだ。

「過分なお言葉です」

三久が名刺をバッグにしまうのを、洲人は満足そうに見ていた。

「待ってるよ」

用は済んだとばかりに振り返って宴会場へ戻りかけた洲人は、すぐ先の暗がりに、由樹が音もなく立っていることに気づいた。

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