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第386話

Author: 雲間探
玲奈と礼二は、浅井にスミスとの面会を断らせたものの。

それから二日後、スミスはやはり押しかけてきた。

本人が直々に来た以上、玲奈と礼二もさすがに無視はできなかった。

形式的に面会はしたが、十分ほど話しただけでその場を切り上げた。

その後スミスが再び面会を申し込んでも、二人は一切応じなかった。

玲奈と礼二の態度は固く、スミスは会えなかったため、翌日優里を食事に誘った。

食事中、スミスは業界の話を少ししたあと、言った。「もし君が去年長墨ソフトに入っていたら、大きく成長できていただろうに。残念だ」

前回会った時にも、スミスは彼女の現状を尋ねていた。

当時、彼女が長墨ソフトに入れなかったと知っても何も言わなかったが、今になって改めて残念がっていた。

優里には彼の意図がよくわかっていた。

玲奈の論文は国内外で大きな反響を呼んでいた。

業界の多くの関係者は、長墨ソフトがあれほど重要な成果を論文で公表したということは、社内にはまだ公開されていない優秀な人材と核心技術が眠っている証拠だと口を揃えていた。

その点については、優里も強く同意していた。

去年彼女が長墨ソフトに入りたかったのは、長墨ソフトの自社開発のプログラミング言語のためで、まさかこんな短期間でここまで成長するとは思ってもみなかった。

もしそれを分かっていたなら、去年何が何でも長墨ソフトに入っていたはずだった。

スミスの言う通り、もしあの時長墨ソフトに入社していれば、今ごろは専門技術も大きく伸びていたことだろう。

長墨ソフトで二、三年働いていれば、退職する頃には、実家のテック企業を一人で牽引できるほどの実力がついていたかもしれない。

今になって振り返ると、彼女はようやく気づいた。玲奈が自分の長墨ソフト入社を止めたことで失ったのは、礼二という人脈だけでなく、自己成長の大きなチャンスそのものだったのだと。

スミスは言った。「今でも長墨ソフトに入るつもりはあるのかい?」

考えていないはずがない。

けれど、礼二が玲奈への態度を変えない限り、彼女にそのチャンスが訪れることはない。

もちろん、そんなことをスミスに言えるはずもない。

彼女はただこう言った。「今は自分の名義でテクノロジー会社を運営していて、以前には長墨ソフトとも協力したことがあります。技術的な安全性の観点から、湊さんが私を受け
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Comments (2)
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ぷちトマト
弟子が弟子なら師匠も師匠
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岸本史子
スミス断られても無理やり来る所がさすが愛人の先生だね
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