「んっ、あぁっ……」
「かわいい声。もっと啼かせたい」
頬や首筋、鎖骨、脇腹へと熱を帯びたキスが降り注ぐ。そのたびに、肌がじんわりと火照っていく。
漣くんも自分の衣服を脱ぎ捨て、下着一枚だけを残して逞しい身体を晒したから、思わず息を呑んだ。「漣くんっ、やぁ……」
抗うように声を上げても、唇が触れるたびに甘い快感が弾けて散る。
柔らかなキスひとつひとつが、私の抵抗を簡単に溶かしてしまう。「やだって言いながら……ねだるみたいな声、出してる。……自覚ない?」
「っ……!」
耳元に落とされた指摘に、顔が一気に熱くなる。
――そうだ、漣くんの言う通り。 拒む言葉を口にしているのに、声色は媚びるようで、むしろ悦んでいるみたいに聞こえてしまう。 恥ずかしくて反論できずにいると、彼はふっと笑い、次の瞬間、強引に唇を奪ってきた。「んんっ――ふ、ぅっ……」
衝動的で、乱暴といってもいいキス。けれど不思議と怖くはなかった。
荒々しい熱情のなかに、私への欲望と独占欲がありありと伝わってきて、むしろ心地よかった。強引に唇を押し開かれ、舌を絡められる。
抗う暇もなく深く侵入され、されるがままになっているうちに、頭の芯がじんじん痺れていく。「……そういう反応されると、優しくできなくなる。もっと大事にしたいのに」
名残惜しそうに唇を離した漣くんが、じれったそうに吐き出す。
それほどまでに私を想ってくれている。そう実感できる言葉だった。「だ、大丈夫。私、ちゃんとわかってる。……前に漣くんが、すごく慎重に……抱いてくれたこと」
私は首を振り
秘芽を探り当てた漣くんは、そこを親指で転がしながら、中指の先で入り口をくすぐった。 強烈な刺激に、あふれる蜜の量はさらに増していく。 熱を帯びたその場所は、圧をかけられるたびに少しずつ柔らかくなり、彼の指先を受け入れはじめていた。 ――わかる。漣くんの指が、私の中に入ってきているのが。「だ、めぇ……それ、だめぇっ……! んぁんっ……!」 声にならない声を上げても、秘芽への鮮烈な刺激は止まらない。 呼吸を忘れてしまいそうな愉悦に喘ぐ私の耳元で、彼がいじわるにささやく。「瑞希のここ、指に吸い付いてくる。……ナカにほしかったんだろ?」「ち、がっ……やぁ、んぁっ……!」 否定の言葉を必死に口にするけれど、その声は快感に震えて、むしろ悦んでいるようにしか聞こえない。 大好きな漣くんに“いやらしい女”だと思われたくなくて否定しているのに、身体の反応は正直すぎた。「まだ狭いけど……思ったよりすんなり広がりそうだ。ほら、もう全部入った」 下腹部に視線を落とした漣くんが、熱を帯びた声で言う。 気づけば、中指の根元まで呑み込んでいた。「熱くて、ぐにゅぐにゅしてて……瑞希が悦んでるの、伝わってくる」 出し入れされる指の感触に、腰がひとりでに揺れてしまう。 十分に潤っているのを確かめた漣くんは、さらに指を一本増やした。「ひぁっ……!」 二本の指がするりと埋め込まれ、奥を擦られた瞬間、腰が大きく震える。 お腹の裏側にぶつかるような感覚に、甘い悲鳴が止められなかった。「あぁ、ああっ……漣く、んっ、それ、やぁ…
「噛まれるの、いや?」「いやじゃ……ないっ……気持ちいいっ……」 舌先で頂を突きながら、上目づかいで問いかけてくる漣くん。 私はかぶりを振り、恥じらいに頬を染めながら答えた。 前みたいに壊れものを扱うように触れてくれるのも、大切にされている感じがしてうれしい。 けれど、こうして衝動的に愛撫されるのも、彼の思いの丈を全身で受け止めている気がして――いやじゃない。 むしろ、うれしくてたまらなかった。「もっとしてあげる」「ふぅ、んんっ……ぁあっ……!」 私の反応が気に入ったのか、漣くんはもう片方の頂も同じように愛撫してくる。 硬くなった先端に舌を這わせ、唾液を塗りつけ、軽く歯を立てて刺激を与える。 そのたびに背筋がぞくぞくと痺れ、びくびくと身体を反らしてしまう。「んっ……! やぁ……っ」 胸を責められているだけで、息が乱れる。 そんな私を見つめる彼の瞳は、熱を帯び、獲物を逃さない獣のように鋭かった。 愛撫を続けながら、彼の手が下腹部に降りていく。 恥丘を撫で、入り口を覆うレース越しに触れた瞬間、漣くんがふっと笑う。「すごいね。ここ、まだ触ってないのに、もう……」「だって……漣くんが……するからっ……!」 羞恥に耐えながら、震える声で反論する。 けれど自分でもわかっていた。 まだ触れられていないのに熱がこもり、レース越しでもわかるほどに蜜が溢れてしまっていることを。 はしたないと思うのに、止められない。そもそも、こんなふうにしたのは漣く
「んっ、あぁっ……」「かわいい声。もっと啼かせたい」 頬や首筋、鎖骨、脇腹へと熱を帯びたキスが降り注ぐ。そのたびに、肌がじんわりと火照っていく。 漣くんも自分の衣服を脱ぎ捨て、下着一枚だけを残して逞しい身体を晒したから、思わず息を呑んだ。「漣くんっ、やぁ……」 抗うように声を上げても、唇が触れるたびに甘い快感が弾けて散る。 柔らかなキスひとつひとつが、私の抵抗を簡単に溶かしてしまう。「やだって言いながら……ねだるみたいな声、出してる。……自覚ない?」「っ……!」 耳元に落とされた指摘に、顔が一気に熱くなる。 ――そうだ、漣くんの言う通り。 拒む言葉を口にしているのに、声色は媚びるようで、むしろ悦んでいるみたいに聞こえてしまう。 恥ずかしくて反論できずにいると、彼はふっと笑い、次の瞬間、強引に唇を奪ってきた。「んんっ――ふ、ぅっ……」 衝動的で、乱暴といってもいいキス。けれど不思議と怖くはなかった。 荒々しい熱情のなかに、私への欲望と独占欲がありありと伝わってきて、むしろ心地よかった。 強引に唇を押し開かれ、舌を絡められる。 抗う暇もなく深く侵入され、されるがままになっているうちに、頭の芯がじんじん痺れていく。「……そういう反応されると、優しくできなくなる。もっと大事にしたいのに」 名残惜しそうに唇を離した漣くんが、じれったそうに吐き出す。 それほどまでに私を想ってくれている。そう実感できる言葉だった。「だ、大丈夫。私、ちゃんとわかってる。……前に漣くんが、すごく慎重に……抱いてくれたこと」 私は首を振り
好きな人の部屋を訪ねるのだから――そう思って、新調したセットアップ。 水色のレース素材のブラとショーツは、漣くんがブルー系を好きそう、というイメージがあったから。 もちろん、彼によろこんでもらいたくて買ったものではあるけれど……。 でも展開は、私の想像よりもずっと早くて。戸惑いながら口を開く。「な、なんか……いつものお兄ちゃん――じゃなかった、漣くん、らしくない」「そう?」「だって……私の知ってる漣くんは、いつも冷静で余裕があって……。衝動で押し切るなんて、似合わない」 言いながら、自分の鼓動が速くなっていくのがわかる。 こんな言葉をかけている時点で、私自身も冷静さなんて失っていた。 漣くんは私の額に軽くキスを落として、ふっといじわるに笑った。「俺だって、好きな人を前にしたら余裕なんてなくなるよ。……たとえば、この服を別の男と会うときに着ていたなって思うと、嫉妬するし」「えっ……そ、それは、ち、違うの!」「違う?」 脱いだばかりのブルーのワンピースを手に取り、さらりとつぶやく。 私ははっとして、大事なことを言い忘れていたのに気づいた。慌てて首を振る。「あの日は、デートなんてしてない。外で時間をつぶしてただけ……。漣くんと朝まで一緒に過ごしたあとに、別の人となんて会えなかったから」 彼に「前を向いた」って証明したくて、あえて出かけるふりをしただけ。「……そうだったんだ」 漣くんが目を見開く。その顔を見て、胸が熱くなる。 私は恥ずかしさを紛らわせるように、思い切ってお願いした。「私、まだデートってしたことないから……。今度、してくれる?」「もちろん」 やわらかく響く声。答えがうれしくて、自然と頬が緩んでしまう。 漣くんとのデート。それは私がずっと夢見ていたこと。叶うなんて――胸がいっぱいだった。 けれど彼は少し言いにくそうに視線を逸らし、ぽつりと切り出した。
――確かに。私たちは好き同士で、しかも厳密にはきょうだいじゃない。 なのに、いつまでも「お兄ちゃん」と呼び続けるのは、おかしいのかもしれない。「……漣、くん」 私たちが初めて結ばれた朝、もう二度と口にできないと思っていた名前。 その響きを、恋人として再び呼べるなんて――胸がいっぱいになった。「……めちゃくちゃ新鮮。……でも、うれしい」 照れているのは私じゃなく、漣くんのほうだった。 面映ゆそうに笑いながら、私の顎先にそっと触れ、自然に唇を重ねてくる。「んっ……」 柔らかな唇が触れては離れ、また重なり、甘いリズムを刻む。 ちゅ、と艶めかしい音が耳に残り、熱い舌がするりと入り込んできた。「はぁ……ん、ふ……」 舌の動きに合わせて必死に応えれば、頭の奥がとろけるように痺れていく。 ――あぁ、またこの感覚を味わえるなんて……。「まさか、もう一度瑞希とこんな風に触れ合えるなんて」 名残惜しそうに唇を離した漣くんが、私の心を読んだみたいにささやいた。「私も……まだ信じられない。うれしすぎて、夢のなかにいるみたい」「かわいい」 抱き寄せられて、額に軽くキスされる。 けれど、次の言葉は甘さだけじゃなく、真剣な響きを含んでいた。「……いい? 瑞希がほしい」 その意味は、痛いほどわかっている。 ここに来るときから、もしかしたら――と期待していた。 胸の奥が熱くなり、私は恥じらいながらうなずいた。「……あ、でも……シャワー、借りたい、
体調もすっかり回復した八月下旬。 私は初めて、兄の部屋を訪れていた。「はいこれ、お母さんから」「ありがとう。……って、すごいな」 ずしりと重い紙袋を兄に渡す。 中身は母が心配して用意した作り置きのおかずが詰まったタッパーの山だ。「ひとり暮らしの息子の食生活が気になるみたい」「うれしいけど、冷蔵庫がパンパンになりそうだな」 困ったように笑いながら、兄は玄関脇の小さな冷蔵庫にタッパーを詰めていく。 その背中を眺めながら、私はベッドに腰を下ろし、きょろきょろと部屋のなかを見渡した。「それにしても……清々しいくらいなにもないね」 目につくのはベッドとデスク、本棚だけ。飾り気も私物もほとんど見当たらない。「生活するっていうより、寝てるだけの部屋だから」 冷蔵庫の扉を閉めた兄が、ペットボトルのお茶をふたつ手に戻ってきて、ひとつを私に差し出す。 そして自然に、となりに腰を下ろした。「――でも安心した」「安心?」 私がうなずく。「女性の影を感じたら、やきもち妬いちゃいそうだったから」 冗談めかして笑うと、兄は真顔で答えた。「部屋に入れたのは瑞希が初めてだよ」「本当?」 今度はしっかりとうなずく。「じゃあ……新庄さんも?」 彼女と付き合っていた一ヶ月。恋人なら部屋を訪ねていてもおかしくない。 自分で自分に言い聞かせるみたいに問いかけると、兄は毅然と首を振った。「入れてない。付き合ってたといっても、数回食事しただけだ。お互い忙しかったし、それ以上のことは何もない」「そ、そう……だったんだ」 胸の奥でほっと息をつく私に、兄が優しく笑う。「安心した?」「…