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禁欲系男子の解毒剤、お断りします!
禁欲系男子の解毒剤、お断りします!
Author: 水音

第1話

Author: 水音
あの冷徹な男が薬を盛られたその夜――

私は身を差し出すことなど決してせず、警察にセクハラの被害を通報した。

そして、彼のスキャンダル写真が競売にかけられるのを、ただ静かに見届けた。

彼が拘留されている間に、私はさっさと婚約を破棄し、彼の世界から跡形もなく姿を消すことを選んだ。

前世では自ら身を捧げたというのに、彼は私が仕組んだ罠だと決めつけた。二十年もの間憎しみ続け、娘のりんにさえ「パパ」と呼ばせようとしなかった。

そして、私が一生をかけて溺愛したその娘は、すべての罪を私に押しつけたのだ。

「あんたさえいなければ、パパは香奈おばさんと別れなかったのに。私たちの人生をめちゃくちゃにしたのは、全部あんたのせいよ!」

死後でさえ、りんは私の墓を暴き、あの二人を幸せな夫婦として合葬した。

私の遺灰は、犬の餌に混ぜて無造作に捨てられた。

ならば――人生をやり直せるというのなら、今度こそ彼らの望み通りにしてあげましょう――

……

温かく大きな手が私の体を覆い、服のボタンを探るように外そうとしている。

男は暗い瞳を揺らし、喉を上下させながら、焦るように頭を私の首筋に埋めてきた。

「責任は……取る」

低く冷たい声が耳を打ち、私の意識は一瞬で覚醒した。

私は深谷修(ふかや おさむ)に長年密かに恋い焦がれていたが、その想いを口にする勇気はなかった。

だから前世で彼がこの言葉を告げたとき、彼も私に好意を抱いていると勘違いして喜んで受け入れた。まさかそれが、一生を台無しにする選択だとは夢にも思わず。

今回は、絶対に同じ過ちを繰り返さない。

男の体が触れようとした瞬間、私は力いっぱい彼の腕を振りほどいた。

修は勢いよくベッドに倒れ込み、信じられないといった目で私を見つめた。

「おまえ……」

彼が口を開きかけた途端、廊下から慌ただしい足音が響き、部屋の外でぴたりと止まった。

修は何かに気づいたようで、私を見る目に緊張の色が走った。

額には細かい汗が浮かび、瞳はどんどん乱れていく。明らかに薬の効果で理性を失いかけている。

私は冷ややかに彼を一瞥すると、期待に満ちた彼の視線の前でゆっくりと携帯を取り出した。

「もしもし、警察ですか?通報します。セクハラを受けて――」

修はがばっと顔を上げ、目に怒りの炎を燃やした。

「綾瀬静香(あやせ しずか)、勘違いするな。俺がおまえにそんなことするわけないだろう!」

私は肩をすくめ、嘲るように言った。「さっきあなたが私にしたことは、セクハラじゃなくて何だというの?」

「おまえは……嫌だったのか?」

薬の効果で眉間の皺はどんどん深くなり、声もひどくかすれている。

「私がいつ、いいって言ったの?勘違いしているのはあなたの方でしょう」

前世で彼を受け入れた結果は――彼に薬を盛った悪女扱いされ、理由もなく二十年間恨まれ、侮辱され続けることだった。

どれだけ説明しても聞く耳を持たず、苦労して集めた証拠すらゴミのように燃やされた。

死ぬ間際になってようやく分かった――私が薬を盛ったかどうかなど、彼にとってはどうでもよかったのだ。

彼が私を憎んだのは、私の存在が彼と夏目香奈(なつめ かな)を永遠に引き裂く障害だったから。ただそれだけだった。

ノックの音が響いたとき、修は目に見えて動揺し、口調も多少柔らかくなった。

「静香、さっきは悪かった。頼む、助けてくれ」

修はよろめきながら私に近づき、手を伸ばして私を掴もうとした。

けれど彼が触れる直前、私はさっと身をかわした。

彼は床に倒れ込み、シャツがはだけて白い肌が大きく露わになった。

同時に、ドアが外から開かれ、悪意に満ちた数人がこの光景を目にし、一斉にカメラを彼に向けた。

いつも冷静沈着な修が、ついに慌てふためいた。

「静香、まさか俺のこんな無様な姿を外に流して、笑い者にされるのを平気で見ていられるのか!」

私は彼を見下ろし、くすりと笑って言った。

「この人たち、あなた自身が呼んだんじゃないってどうして言い切れるの?それに、あなたの写真なんて普通の人が見る資格ないでしょう。わざわざお金を出して買ってくれる人たちは、ちゃんと鑑賞するために買うんだから。笑ったりなんかしないわよ」

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