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第1135話

Author: 風羽
願乃は静かに頷いた。

「ええ。イギリスに行くの。少し、自分を磨いてくるわ」

そう言った瞬間、胸の奥がわずかに痛んだ。

彼女はとても若い頃に彰人と出会い、そのまま人生を共にした。

その後、学業を深めることもなく、慈善活動に関わる上流夫人たちの輪の中で生きてきた。

その生活は穏やかで、華やかで、まるで童話のようだった。

周囲から見ても、そして何より自分自身が幸運だと思っていた。

――まさか、三十を過ぎてから、再び外の世界へ出ることになるなんて。

彼女はイギリスへ渡り、月に一度は帰国して結代に会うつもりでいる。

彰人の顔色ははっきりと青ざめていた。

ちょうどその時、店員が近づき、小声で尋ねる。

「お客様、コーヒーはいかがなさいますか?」

彰人は手を上げた。

指先がわずかに震えている。

「ブルーマウンテンを一杯、お願いします」

店員は空気を察し、すぐにその場を離れた。

やがてコーヒーが運ばれてくる。

だが彰人は口をつけなかった。

低い声で、ぽつりと漏らす。

「願乃……もし、俺が後悔しているって言ったら……まだ、間に合うだろうか」

そう言って、彼女を見つめ
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