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第743話

Author: 風羽
澄佳はしゃがみ込み、そっと彼のセーターをめくった。

「傷口、見せて」

彼が家の使用人に薬の処置をさせるはずもなく、大抵は自分で適当に済ませていることを澄佳は知っていた。ここ数日でどれほど治っているのか、気になって仕方がない。

翔雅の胸中は柔らかくも、密かな喜びで満ちた。

——やはり彼女は気にかけてくれている。

彼はあっさりセーターを脱ぎ、半ば横になって見やすくした。

セーターを脱げば、鍛え抜かれた腹筋があらわになる。その左腹には七、八センチほどの傷痕があり、まだ完全に塞がってはおらず、薄紅色の生々しい肌が覗いていた。

澄佳は指先でそっと触れ、顔を上げて問う。

「まだ痛むの?」

翔雅は顔色を変えず、「もう痛くない」と応じた。

そして彼女の指先を取り、そっとそのままに置いたまま、自ら身体を起こして抱き寄せ、唇を重ねた。雰囲気が整っていたせいか、今度は澄佳も受け身ではなく、むしろ積極的に応えた。

唇を離すと、澄佳は伏し目がちに囁く。

「これからは、もう馬鹿なことはしないで」

翔雅は答えなかった。

愛も、憎しみも、すべては時間の流れの中に消えていく。

正誤を追い立てる者はもうなく、ただ前に進むしかない。行き着く先がどこであれ、それはまた新しい課題だった。

……

一階では、澪安が明らかに電話を待っていた。気もそぞろだ。

以前、病院で慕美に自分の名刺を渡し、「困ったら連絡して」と言った。

だが待てど暮らせど彼女からの電話はなく、後に会員制クラブを訪れたときにはすでに辞めており、行き先も分からなかった。

それでも心のどこかに引っかかりは残り、やがてH市で偶然再会するまで忘れかけていたのだ。

応接の間では、願乃が彰人の隣に座り、素直に従っていた。

彼を見上げる瞳には、星屑のような光がきらめき、惜しみない好意を映していた。

さもなくば、これほど早く結婚を決断することなどあり得ない。

視界を広げれば、周防邸の隅々までが歓声と笑い声に満ちていた。

周防寛夫婦は書斎で、亡き人に線香を手向けている。

周防祖父、そして周防礼夫妻も一緒だ。

寛は線香を供えると、数歩下がってソファに腰を下ろし、微笑を含んで口を開いた。

「礼、お祝いを言いに来たよ。今日は願乃の佳き日だ。相手も申し分のない青年だな。澄佳と翔雅も、どうやらうまくやっているじゃない
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