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第四章『酔った勢いのキス』 その2

Auteur: 壽倉雅
last update Date de publication: 2025-10-18 08:10:35

久子の炎上に関するネットニュースの記事を見たのは、笑理も同じであった。

クライマックスを迎える新聞連載小説の執筆の途中、参考資料を調べるためにネットを立ち上げたとき、記事の存在を知った。

「ああ、炎上してるよ」

笑理は呆れたように、記事を閲覧した。また、他のメディアやネットニュースでも、同じような内容で、久子の記事がアップされていた。誤字脱字や乏しい文章力を批判した久子のことが書かれている記事そのものが、誤字脱字や文章力が酷いのが何とも皮肉であると、笑理は記事を見ながら思っていた。と同時に、久子の担当をしている梢のことも心配になっていた。

「梢、大丈夫かな……」

久子のことを考えるとバカバカしいと思ったが、梢のこととなると話は別である。笑理はスマホを手にすると、梢を気にかけるLINEを送り、再び執筆作業に取り掛かった。

梢は、自ら久子の新作原稿をプリントアウトしたうえで一通り読み終わった後、その原稿を高梨にも渡した。高梨もその場で原稿を読み終えたようで、梢はミーティングルームに呼ばれた。<

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