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36.Epilogue②

Author: 鷹槻れん
last update Last Updated: 2025-10-24 17:03:09

結局挙式はうちのお母さんの希望に合わせる形で白無垢しろむくを着て、紋付袴もんつきはかま奏芽かなめさんと、三三九度さんさんくど玉串拝礼 たまぐしはいれいなどの、まごうことなき神前式になりました。

披露宴入場時は白無垢を赤系の色打掛いろうちかけに掛け替えてから和装のまま、その後のお色直しでやっと。奏芽かなめさん希望の純白のウェディングドレスに着替えることが出来た。

奏芽さんは和装もキリリとしていて文句なしにカッコ良かったけれど、洋装もすごく素敵で。私、式の間中ドキドキさせられっぱなしだった。

ちなみに奏芽さん、日頃白衣で白ばかりだからと、タキシードはダークシルバーを選ばれたんだけど、それが背の高い奏芽さんによく似合っていて本当にカッコよくて……。

奏芽さんは緊張しまくりでカチンコチンになっていた私を「すげぇ綺麗だ」ってベタ褒めしてくださったけれど、私にはそんな風に言ってくださる奏芽さんがいつもに増して男前すぎてしんどかったです。

お式には四季しきちゃんと彼氏さん、それから霧島きりしまさんご家族や、雨宮あまみやさんご夫妻もいらしてくださった。

知らない人たちがたくさんの中に、顔見知りを見つけられてホッとした私だったけれど。

そんな中でも、一番顔が見られて良かったと思えたのは、幼なじみののぶちゃんかも知れない。

「来て……くれたの?」

ひとつひとつの席を回った時に恐る恐る聞いたら、「当たり前だよ?」って優しく微笑まれた。

私がのぶちゃんと同じ立場だったらそんな風に優しく笑って、「当たり前」だって言えるかな?

そう思ったら、胸がギュッと切なくなって……。

「ありがとう、のぶちゃん」

目元を潤ませて言ったら、「りんちゃん、泣いたら駄目。お化粧落ちちゃうよ?」って叱ってくれた。

のぶちゃん、本当に有難う。

***

そんな感じで結婚式だけは早々に済ませた私たちだったけれど、入籍は私が大学を卒業した日――22歳の3月25日までしなかったの。

私自身は1日も早く奏芽かなめさんと名実ともに家族になりたかったし、奏芽さんの年齢のことを考えるとそれなりに焦ってしまっていたのだけれど。

出会った頃は33歳だった奏芽さんも、入籍の時には36歳。

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  • 私のおさげをほどかないで!   36.Epilogue②

    結局挙式はうちのお母さんの希望に合わせる形で白無垢を着て、紋付袴の奏芽さんと、三三九度に玉串拝礼 などの、まごうことなき神前式になりました。 披露宴入場時は白無垢を赤系の色打掛に掛け替えてから和装のまま、その後のお色直しでやっと。奏芽さん希望の純白のウェディングドレスに着替えることが出来た。 奏芽さんは和装もキリリとしていて文句なしにカッコ良かったけれど、洋装もすごく素敵で。私、式の間中ドキドキさせられっぱなしだった。 ちなみに奏芽さん、日頃白衣で白ばかりだからと、タキシードはダークシルバーを選ばれたんだけど、それが背の高い奏芽さんによく似合っていて本当にカッコよくて……。 奏芽さんは緊張しまくりでカチンコチンになっていた私を「すげぇ綺麗だ」ってベタ褒めしてくださったけれど、私にはそんな風に言ってくださる奏芽さんがいつもに増して男前すぎてしんどかったです。 お式には四季ちゃんと彼氏さん、それから霧島さんご家族や、雨宮さんご夫妻もいらしてくださった。 知らない人たちがたくさんの中に、顔見知りを見つけられてホッとした私だったけれど。 そんな中でも、一番顔が見られて良かったと思えたのは、幼なじみののぶちゃんかも知れない。 「来て……くれたの?」 ひとつひとつの席を回った時に恐る恐る聞いたら、「当たり前だよ?」って優しく微笑まれた。 私がのぶちゃんと同じ立場だったらそんな風に優しく笑って、「当たり前」だって言えるかな? そう思ったら、胸がギュッと切なくなって……。 「ありがとう、のぶちゃん」 目元を潤ませて言ったら、「凜ちゃん、泣いたら駄目。お化粧落ちちゃうよ?」って叱ってくれた。 のぶちゃん、本当に有難う。 *** そんな感じで結婚式だけは早々に済ませた私たちだったけれど、入籍は私が大学を卒業した日――22歳の3月25日までしなかったの。 私自身は1日も早く奏芽さんと名実ともに家族になりたかったし、奏芽さんの年齢のことを考えるとそれなりに焦ってしまっていたのだけれど。 出会った頃は33歳だった奏芽さんも、入籍の時には36歳。

  • 私のおさげをほどかないで!   36.Epilogue①

    「鳥飼さーん、鳥飼凜子さん、どうぞ」 日中より若干照明が控えめになっているように感じられる白い空間。 夜間受付を済ませて長椅子に座っていたら名前を呼ばれて……。 奏芽さんが私の手を握る手に力を込めた。 「立てるか?」 「はい」 身体が思うように動かせなくなってきてからは、こんな風に奏芽さんに労られるように支えられることが時々あって……そのたびに奏芽さんの優しさが嬉しいのと同じくらい照れ臭かった。 でも今日は――今夜だけはそんなこと言っていられそうにない。 立ち上がって奏芽さんに身体を預けるようにしてすり足で恐る恐る少し歩いたら、下腹部から生温かいものがチョロリと溢れ出た気配がして、思わず立ち止まる。 「凜子?」 「あ。だっ、大丈夫です」 慌てて言ったら、 「無理はするな。凜子だけの問題じゃないんだからな?」 そう言われて、慈しむようにお腹に触れられて……それだけで私はじんわりと幸せな気持ちに満たされる。 初めて奏芽さんと結ばれた日、いつか奏芽さんの赤ちゃんをこのお腹に宿すことが出来たならどんなにか幸せだろう、と夢見たことを思い出す。 *** 私と奏芽さんは私が大学4年生の春に、周りから急かされる様に大きなホテルで挙式・披露宴だけ先に済ませた。 私は洋装でも和装でもどちらでもよかったのだけれど、うちの母が和装を見たいとゴネて、奏芽さんは洋装も捨てがたいとおっしゃった。 結果、贅沢にもどちらも着ることになった私は、一着追加するごとに一体どのぐらいの上乗せがあるんだろう?とそればかりが気になってしまった。 最終的には奏芽さんのご両親やうちの母から、「こんな時のために親はお金を貯めているのだから気にすることはない」と言い切られてめちゃくちゃ恐縮したのを思い出す。 質素で小ぢんまりとしたお式でいいのに、と半べそをかいた私に、奏芽さんが「一応俺、あの小児科の跡取りだかんな。親の方にも付き合いとか体面とかあんだよ。窮屈だろうけど付き合ってやってくんねぇか?」と諭されてハッとした。 結婚って……家同士のことでもあるんだ。 自分たちの気持ちだけでどうこうしてはいけない部分もあ

  • 私のおさげをほどかないで!   35.貴方のものだと思えるから⑤

    バイトに入っていない時も、奏芽さんをここで待たせていただく間は少し作業を進めるのが常。 何もしないでぼんやりしているより、何かしながらの方が時間が経つのが早いから。 院長先生である奏芽さんのお父さまと、若先生である奏芽さんの2人体制で診察が行われている鳥飼小児科医院は、診察後に子供達に渡されるご褒美――折り紙のコマやぴょんぴょんカエルなど――がすぐになくなってしまう。 折り紙のおもちゃが間に合わない時は出入りの製薬会社などからもらえるシールを渡すことも多かったらしいのだけれど、凜子が通うようになってからは手作りのおもちゃが尽きることが殆どなくなってすごく助かってる、って奏芽さんが話してくれた。 それだけでも私、ここにいる存在意義がある気がして……席についてせっせと折り紙――今日は女の子向けの指輪と、男の子向けの腕時計――作りに勤しんでいたら、休憩室のドアがノックされた。 「はい」って応じると扉が開いて、奏芽さんが立っていた。 思わず立ち上がって彼の方へ駆け寄った私に、 「凜子、大学にいるんじゃなかったのかよ?」 って問いかけられてソワソワする。 「まさか、1人で来たのか?」 静かな声音で責めるように問われて、私は恐る恐るコクン、とうなずいた。 「ごめんなさいっ。でも……私っ、どうしても――」 日常を取り戻したかったんです、と小声で付け加えたら、途端ぎゅっと抱きしめられた。 休憩室の扉、開きっぱなしだし、誰かに見られてしまいそうでドキドキしてしまう。 でも、それ以上に大好きな奏芽さんの香りに包まれたことが嬉しくてたまらない。 「大丈夫……だったんだな?」 今、ここで普通に過ごせているということは、1人でこの町に来ても動けなくなったりしなかったんだな?と言外に含められて、私は抱きしめられたまましっかりとうなずく。 奏芽さんはそれにホッとしたように私を抱く腕を緩めると、 「無茶すんなって言ったのに、凜子のアホ」 ポツンと落とされた言葉に、私は思わず瞳を見開いた。 でも見上げた奏芽さんのお顔はどこか泣きそうな、でも何だか嬉しそうな表情に見えて……私はそんな彼の頬にそっと触れる。 「はい、奏

  • 私のおさげをほどかないで!   35.貴方のものだと思えるから④

    私が言う前に 「ひょっとしてペアアクセ?」 って聞いてくるとか、四季ちゃん相変わらず察しが良すぎてドキッとしちゃう。 「うん」 私の小さなピンクゴールドの月を、奏芽さんの大きなDLC加工の黒い月に嵌め込めるようになっているそのデザインは、奏芽さんに護られているという実感を私にくれるの。 このネックレス、「BESIDE YOU」の刻印とは別に、私のには「with K」、奏芽さんのには「with R」という文字が刻まれている。 離れていても私は奏芽さんと繋がれている。 そう思えるアイテムが、心臓に近いところにあるのって、気持ちを落ち着かせてくれる効果があるんだなって実感して、 「凜子ちゃん、愛されてるね」 にっこり笑って告げられた言葉に、私は照れとかそういうのを感じるより先に「うん」って素直にうなずけていた。 ちょっと前までの私には考えられないことかもしれない。 誰かから愛されているということを、こんなにも何の疑いもなくすんなりと受け入れられる日が来るなんて! でも、今はあんなに私のことを考えてくれる人のことを疑うとか有り得ない、って思うの。 これから先、奏芽さんほど私を大事にしてくれる人は現れないと思うし、私も奏芽さんほど愛しく思える相手には出会えないと確信してる。 「無茶はしちゃダメだけど――」 物思いに耽っていた私に、四季ちゃんが言う。 「凜子ちゃんが少しずつでも日常を取り戻せて行けたらいいなって、私も思う。だから頑張る凜子ちゃんのこと、心の底から応援してる!」 そこで一旦言葉を区切ると、真剣な顔をして私を見つめてきて、 「でも――。辛い時は必ず遠慮せず周りにSOSを出すこと。相手は鳥飼さんでも私でも、それこそ他の誰でも構わないから」 そう付け加えられた私は、小さくうなずいた。 ひとりで頑張りすぎるのは良くないって、よく奏芽さんにも言われる。 「四季ちゃん、ありがとう」 頼られて嫌な気持ちはしない、むしろもっと頼って欲しいって……誰かからそう言ってもらえるのって、とても幸せなことだなって思った。 *** 大学が終わって、帰りは途中まで四季ちゃんと帰って……

  • 私のおさげをほどかないで!   35.貴方のものだと思えるから③

    「鳥飼さんにはもう連絡した?」 無事に着いたことをちゃんと知らせておかないと、きっと今頃ヤキモキしてるよ?って四季ちゃんに手を握られて、私はハッとする。 「ま、まだっ。ごめん、四季ちゃん。ちょっとメールして……いい?」 人と一緒にいるのに鳴ってもいないスマホを取り出して操作することは失礼な気がして……申し訳なく思いながらそう問いかけたら、四季ちゃんは「もちろんだよ」ってにっこり笑ってくれた。 私は四季ちゃんにお礼を言うと、「無事大学につきました。私、ひとりでもちゃんと外、歩けました!」と、笑顔でガッツポーズをするうさぎのスタンプと一緒に、そんな文言をメッセージアプリで奏芽さんに送る。 今、四季ちゃんに会ったことで気が抜けてヘナヘナになっていることは、もちろん内緒。 変なことを言って、これ以上大好きな奏芽さんに心配かけたくないもの。 きっとGPSで確認すれば、私が大学の敷地内に入っていることは一目瞭然だと思う。 それでもこうやってメッセージを入れることは、きっと奏芽さんをより安心させることに繋がると思うの。 案の定、奏芽さんからすぐに既読がついて、『良かった。けど、無理はするな』って返信が。 奏芽さんは恐らく私が今、こんな風に立ち上がれなくなってるの、お見通しなんじゃないかな。 無理はするな、という文言に、それを感じながら。 あえてそこには触れず、私は務めて明るい雰囲気をかもし出す、「はーい!」というコミカルな文字付きの、諸手を上げたうさぎスタンプを送った。 お仕事中なのに返信させてすみません!って思いをこめたそれが既読になったのを確認した私は、スマホをカバンに仕舞った。 「鳥飼さん、なんて?」 私がスマホを手放したのを確認して、そう聞いてくる四季ちゃんに、「無理するなって言われちゃった」って淡く微笑んだら「同感」ってじっと顔を見つめられて、 「凜子ちゃん家に迎えに行くより、門前で凜子ちゃんを待ってた時の方が、ソワソワしてしんどかった!」 って眉根を寄せるの。 私はそんな四季ちゃんの存在が、心の底からありがたいって思った。 *** 「ね、そういえば誕生日はどうだったの?」

  • 私のおさげをほどかないで!   35.貴方のものだと思えるから②

    奏芽さんには内緒にしていたけれど、私、実は昨夜のうちに四季ちゃんに、「明日はひとりで大学に行きたいと思ってるの」って連絡を入れていた。 当然のように四季ちゃんからも今朝の奏芽さん同様散々心配されたのだけれど、「いつまでもひとりで出歩けないのは困るし、頑張ってみたい」と真剣に胸のうちを説明して、何とか引き下がってもらった。 もちろん、あの事件以来初めて外をひとりで歩くことになるわけだし、何も不安がなかったかというとそんなことはない。 奏芽さんや四季ちゃんに大丈夫だと大口を叩いた手前、頑張らなきゃって気負いがあって、そのおかげで私、逃げ出さずに踏ん張れたと思う。 大学が近くなって、若い男女に出会う割合がぐんと高くなって……。 前に、見知らぬ男性とすれ違った途端、監禁された記憶がフラッシュバックして、座り込んで動けなくなってしまった辺りまで差し掛かった時には、さすがに心臓がバクバクして息が苦しくなった。 このままではまた前回の二の舞になってしまうと思った私は、奏芽さんにもらったお守りや、スマホのGPSのことを思い出して、深呼吸をした。 それでようやく少しずつ気持ちが落ち着いてくる。 加えて、私は心身ともに本当に奏芽さんと繋がれたんだからって思ったら、すごく励まされたの。 金里明真がこだわっていたように、望んでもいない相手に力づくで純潔を散らされる心配がなくなったと思えることが、驚くほど私を強くしてくれた。 初体験だったあの日、身体中に奏芽さんが刻みつけてくださったキスマークの数々も、私は奏芽さんのものになれたんだって思わせてくれて嬉しくて……。 昨夜お風呂に入った時、鏡に映った自分を見て、まだそれらが消えていないことも知っているから。 それも、私の大きな支え。 それに――。 「奏芽さん……」 さっき、奏芽さんの前でもしたように、服の上から胸前のものに触れて……。 私は、そこから沢山沢山勇気をもらうの。 *** 「凜子ちゃん! ひとりで大丈夫って……本当に何ともなかった⁉︎」 大学に着くと、門のところに四季ちゃんが立っていて、私を見つけるなり走り寄ってきた。 少しもしんどくなかったと言ったら嘘になる。

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