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第17話

Author: Hayama
last update Last Updated: 2025-11-09 12:00:00

「もしかして、寝室別なの…?」

記憶を失っている彼にとって、今の生活の細部はすべて新鮮で、その中でふと違和感を覚えたのだろう。

けれど、私にとってはその言葉が、過去の痛みを呼び起こす鍵のように響いた。

一緒に暮らしているのに、同じ部屋で眠ることはなかった。

それが当たり前になっていた日々。

その寂しさを、彼は知らない。

でも、今こうして問いかけてくる彼の目は、どこか不安げで、私の答えを恐れているようにも見えた。

「そうだよ、?」

私は努めて平静を装った。

でも、声の端に棘が混じってしまったのは、抑えきれない感情が滲み出たせいだった。

あのときの湊さんの態度は、私にとって拒絶そのものだったから。

「いつから?」

まるで自分の記憶の空白をなぞるように、過去の事実を確かめようとする響きがあった。

記憶がない彼にとって、私たちの関係の始まりは霧の中にある。

私たちがどんなふうに暮らしていたのか、どんな距離を保っていたのか。

だからこそ、その問いは純粋で、責める意図なんて微塵もなかった。

それが分かっているのに、私は一瞬、言葉に詰まった。

答えるだけで、あの頃の寂しさが胸に蘇ってしまいそうで。

「いつから…初めから」

ようやく絞り出した言葉は、どこかぎこちなかった。

一緒に暮らし始めたその日から、湊さんは当然のように寝室を分けた。

理由は聞けなかった。

聞いたところで、傷つくだけだと思ったから。

だから私は、ただ黙って受け入れた。

彼にとって、私は“同居人”でしかないのかもしれないと、何度も自分を納得させようとしていた。

その答えを聞くと、湊さんは小さく目を見開いた。

そして、ふらりと体を揺らした。

突然の動きに、私は反射的に手を伸ばした。

彼の体がふらりと揺れ、バランスを崩しかけた
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