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第61話

Author: Hayama
last update publish date: 2025-12-21 18:30:51

「食後のコーヒーどうぞ」

湊さんがそっと差し出したマグカップから、ふわりと湯気が立ちのぼる。

その香りは、どこか懐かしくて、やさしかった。

私は両手でカップを受け取りながら、自然と笑みがこぼれる。

「ありがとう。皿洗いもありがとう」

私はそう言いながら、湊さんの目を見た。

感謝の言葉が、こんなにも素直に出てくるなんて、自分でも少し驚いた。

いつもなら、「ごめんね」が口をついて出ていたはずなのに。気を遣わせたこと、迷惑をかけたかもしれないこと、そういうことばかり気にしていたのに。

「どういたしまして」

私はそっとカップを口に運び、一口含む。

さっきまで冷たかった指先が、じんわりと温まっていく。

「…ん、美味しい」

思わず、声が漏れた。

苦すぎず、でも香りはしっかりと立っていて、口の中にやさしく広がる甘さが、今日のこの空気にぴったりだった。

「良かった」

湊さんの声が、どこか嬉しそうだった。

その一言に、私は胸の奥がふわりとほどけるのを感じた。

「どうして、」

私は不思議そうに尋ねた。

だって、ブラックコーヒーじゃなかったから。

「昨日、苦そうだったから。角砂糖二個入れてみた」

湊さん
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