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413話

last update Veröffentlichungsdatum: 15.09.2026 18:36:29

祖父母の病室を出たもみじと髙野辺。2人は真っ直ぐ病院の駐車場に向かっていた。

髙野辺の車に乗り込むと、すぐに髙野辺がカーナビに住所を入力し始める。

「まずは、ホームページなどが無い業者からあたりましょう」

「ホームページが無い?そんな業者、あるんですか?」

もみじの質問に、髙野辺は入力を終えて答えた。

「ええ。昔からの縁や……まあ、そうですね……今回のような後暗い事をしている業者なら……横の繋がりは多いでしょう?わざわざネットに情報を上げて、客を取らなきゃいけないほど、仕事に困っている事はないんでしょうね」

「……事故車の処理って、そんなに多いものですか……?」

「──まあ。俺も昨夜父から聞くまで知りませんでしたが、具体的な件数を知って驚きましたよ。今まではざっくりと、そう言う世界があるんだって事は知っていましたけど……。実際、処理している件数を耳にしたら確かにわざわざ新規顧客を獲得するためにホームページなんて作らなくても平気だな、と……」

「……事故を起こしたのがバレたら不味いお仕事の人とか、いますもんね……」

もみじがそう告げると、髙野辺は何とも言えない表情で
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    もみじは、じっと髙野辺を見つめる。 まるで、何かを訴えるようなもみじの瞳。だが、髙野辺にはもみじが何を訴えたいのか、分からない。 ──もみじに、経験がなければ。 髙野辺もまた、そういった経験は、ない。 仕事や、それ以外──恋愛以外の事であれば、髙野辺は人の気持ちを汲み取る事に長けている。 だが、どうしても自分自身に経験が不足している恋愛事に関しては、考えを読む事が出来ない。 しかも、それが異性の感情、ともなれば尚更だ。 だからこそ髙野辺は、分からない事は素直にもみじに伝える事にした。 恋人の感情が分からない。それを恥ずかしい事だと、そのままにしておく事はせずにはっきりと伝える。 そうすれば、大切な恋人とすれ違う事はなくなる──。 「すみません、もみじさん。その……恋人同士の触れ合いが、ここ暫くは無かった、と言う事ですよね……?だから、恥ずかしかった、そういう事……ですよね?」 「──っ、」 髙野辺の言葉に、もみじは口元をもにょもにょと動かし、ちらりと後方を見やった。 もみじの後ろには、寝室がある。 「──えっ、と……?」 寝室が、どうかしたのだろうか。 髙野辺が首を傾げるのを見て、もみじは覚悟を決めたように一度目を瞑ると、髙野辺としっかり目を合わせ、口を開いた。 「その……今日、ここに泊まるんですよね……?一緒の、ベッドで……寝る、んですよね?」 最後の言葉になるにつれて、もみじの声はか細くなって行く。 それに比例して、真っ赤になったもみじを見て、ようやく髙野辺はもみじの言いたい事を察した。 そして、察した髙野辺は真っ赤になって慌てて首を横に振る。 「──ちっ、ちがっ!違うんです……っ!今日ここに泊まるのは、泊まるんですが……っ!そんなつもりはなくて!俺はリビングのソファで寝るつもりだったんです……っ!」 「えっ、え……っ!?」 「すみません、その……まだ恋人になったばかりなので、そういう事は……もう少しお互いの事を分かってから、と……」 髙野辺の言葉に、もみじは言葉を失ってしまう。 「ご、ごめんなさい……っ、私、なんて勘違いを……っ」 「いえっ!不安になるのは当然です!俺が最初からちゃんと話していれば……!」 2人して、わたわたとしながら謝罪をし合う。 真っ赤になって謝罪をし合う状況がおかしくて。 2人

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    ふわり、と髙野辺の唇が優しくもみじの唇に重なる。 啄むような、可愛らしい口付け。 もみじは、ぎゅっと目を瞑り緊張に体を縮こまらせていたが、想像していたよりも優しく、可愛らしい口付けに強ばっていた体から力が抜けて行く。 「──ん」 角度を変え、擦り合わせるようなキスの心地良さに、もみじが小さく声を零す。 可愛らしく声を漏らしたもみじに、髙野辺は堪らず抱きしめる腕の力を強めた。 こんな風に、好きという感情がこれ程こめられたキスなど、もみじは経験が無い。 髙野辺とのキスは、もみじへの感情がこれでもか、と言うほど込められている。 それが嬉しくて嬉しくて、もみじの目からは自然と涙が零れた。 「──っ!?すみません……!調子に乗って……っ!」 もみじが泣いてしまった瞬間、髙野辺はひゅっと息を呑み、慌てて体を離した。 「ち、違……っ、違うんです……っ、嫌で泣いたんじゃなくて!」 あわあわと慌てて自分の涙を拭うもみじ。 目元を擦るもみじに、髙野辺は優しくもみじの手を掴み、静止する。 「擦ったら良くないです。……嫌じゃ、なかった?」 不安そうに聞いてくる髙野辺に、もみじは頬を染めたまま頷く。 嫌なはず、無い。 むしろ、その逆で。 嬉しくて、嬉しくて涙が溢れてしまったのだ。 その気持ちを素直にもみじが口にすると、髙野辺は一瞬きょとん、としたがすぐに嬉しそうに微笑んだ。 「嫌じゃなかったのなら、良かったです……。すみません、もみじさんが可愛らしくて止まらなかったんです」 「か、かわ……」 「ふふっ、本当ですよ」 くつくつと楽しげに笑う髙野辺に、ぎゅっと抱きしめられる。 もみじの髪の毛に唇を何度も落とす髙野辺に、もみじは嬉しいやら恥ずかしいやらで訳が分からなくなってきた。 「う、うう……恥ずかしい……」 「──もみじさん?」 髙野辺に抱きつき、胸元に顔を埋めるもみじ。 髪の毛の隙間から除くもみじの耳は、真っ赤に染まっていて。 恋人同士の触れ合いに、ここまで恥ずかしがるもみじに、髙野辺は首を傾げた。 もみじは、かつて結婚していた。 夫がいたのだから、夫婦としてこういった触れ合いなど、数多くしていただろう。 元夫の不倫が判明した時期は触れ合いは無かったかもしれな

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    案内された部屋は最上階にあるスイートルーム。 部屋の扉を開け、一礼して去って行った支配人。 もみじは自分の目の前に広がるスイートルームの部屋の豪華さに唖然とした。 こんな部屋が。 常に用意されているなんて。 「髙野辺さん……」 もみじが戸惑いつつ振り返ると、苦笑いを浮かべた髙野辺が「まずは座りましょうか」とソファに促した。 テーブルの上にはシャンパンとグラスが用意されていて。 髙野辺はシャンパンを開けた。 「──どうぞ、もみじさん」 「あ、ありがとうございます」 グラスに注がれた琥珀色のシャンパンがパチパチと弾ける。 その光景をじっと見つめていたもみじに、髙野辺が息を吸い、姿勢を正した。 「──もみじさんは、髙守株式会社を知っていますか?」 髙野辺の低く、静かな声が広い室内に響いて落ちる。 「髙守、株式会社──」 髙野辺の言葉に、もみじは同じ言葉を繰り返す。 髙守株式会社。 髙守は、古くから続く大財閥だ。 国内でホテル事業、不動産事業、アパレル関連事業など手広く事業を展開している大企業。 この国で暮らしている人なら、誰でも聞いた事がある企業だ。 それに、誰もが1度は髙守の製品を手にした事があるだろう。 それほど、大きな会社。 財閥としても有名。 そして、その名前が今、このタイミングで髙野辺の口から出て来たと言う事は。 もみじは信じられない気持ちで髙野辺を見た。 もみじの視線を受け、髙野辺は苦笑いを浮かべたまま、口を開く。 「髙守株式会社の現社長は、俺の父です。会長は……祖父、です」 「で、でも……っ髙野辺さんは、苗字が……っ」 「髙野辺、は母の旧姓です。……髙守の名を借りるのはどうしても嫌だったんです。……髙守の御曹司が、デザイン会社を設立した。髙守と言うブランド名を得た状態で、会社を経営して……利益を上げたって、それは俺の力ではなくて髙守の力になってしまう。だからこそ、俺は自分の手で一からデザイン会社を大きくしたくて……」 どうして、髙野辺が母親の旧姓を名乗っているのか。その理由を話されたもみじは、ただじっと話を聞く。 髙野辺の話は、まだ続く。 「俺の家の事は、TKに居る社員達は誰も知りません。取引先の一部には髙野辺、と言う苗字を知っている人は居ますが、ただの親戚筋だと思っています」 「そう、だ

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    それから。 もみじと髙野辺は再度男性に声を掛け、誠司の車を引き取る事にした。 今後、証拠を揃えたら警察に通報する事になる。 その際にこの車が既に壊されてしまっていたらどうにもならない。 男性には金を渡し、後の処理はこちらでやると言って髙野辺の部下に車を引き取らせた。 ここからそう離れていない車庫に、車を保管する。 そう言った髙野辺に車の対処はお願いし、金はもみじが払った。 この業者で、全てやる事を終えた頃には、既に夕闇が広がっていた。 「──遅くなってしまいましたね」 車に戻り、髙野辺がナビを操作しながらそう呟く。 「ええ、あっという間に時間が経っちゃいましたね」 「今日、新島社長の車を回収出来たのは良かったです。我々がこの車を引き取ったのが新島社長にバレる前に、確認出来る事はしてしまいましょう」 髙野辺の言葉に、もみじも頷く。 「きっと、彼は近い内にこの業者に連絡をして進捗状況を確認するはずです。その前に警察に通報しちゃいましょう」 「車が引き取られた、と彼が知ったら引き取ったのはもみじさんだと知られるかもしれませんしね」 「ええ。祖父母に接触を図ってくるかもしれませんから、私は早くデザイン画を見つけ、ステッカーの作成者が私だと言う事を証明しますね」 「その方がいいと思います」 そこまで話した所で、ナビの入力を終えたのだろう。 髙野辺がシートベルトを締め、もみじに顔を向けた。 「──では、そろそろ車を走らせますね」 「分かりました。お願いします」 車が走り出す。 髙野辺は、予約をしているような気配は一切無かった。 ホテルに電話している素振りも、ネットでホテルを予約している素振りも無い。 当日、ホテルに行って空いているだろうか。大丈夫だろうか、ともみじは心配したが、その心配は結局杞憂に終わる。 車を走らせ、数十分。 髙野辺の車が向かった先は、国内でも有数な高級ホテルだ。 もみじが驚いていると、髙野辺はホテルの正面に車を停めた。 すぐにホテルマンが出て来る。 「車を頼む」 「かしこまりました」 言葉少なに会話をすると、もみじに降りるように促した。 「た、髙野辺さん……」 予約していないが、大丈夫だろうか。 もみじの心配が顔に出ている。 そんなもみじに髙野辺は微笑むと、もみじの腰に自分の腕を回して

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    「さっき教えてもらった区画と違う……。高く売れるからか……?」 そう呟きつつ、髙野辺が問題の車に近付く。 すると、髙野辺の目にもボンネットにステッカーが貼られているのが確認出来た。 「もみじさん、これが……?」 「……ええ、そうです。馬鹿ね、こんなステッカーを貼ったままにしているなんて……」 もみじは呟き、過去に自分が作ったステッカーを手でなぞった。 過去の自分が本当に愚かに思えてきて、もみじはふっと口元を歪めた。 「……本当に、馬鹿みたい」 「もみじ、さん……?」 こんな表情をするもみじが珍しく、髙野辺は驚いた。 まるで、自嘲するような、過去の自分の愚かさを笑うような。 だけど、愚かなのはもみじではない。 永遠の約束をしたのに、裏切った男が愚かなのだ。 なんと言葉をかければいいのか、髙野辺が迷っていると、ふっともみじが髙野辺に顔を向けた。 「──すみません、髙野辺さん。このステッカーの写真と、ステッカーが貼られている車の写真を撮ってしまいましょう!それで、このステッカーをデザインしたのが私だと分かる資料を用意します!」 「え、ええ……分かりました」 「あ、でも……。この車が処分されちゃったら大変です、よね……?どうしたら……」 悩むもみじに、髙野辺は安心させるように笑った。 「それについては大丈夫です。こちらで対応しておきますね」 さらり、となんて事ないように答える髙野辺に、もみじはむむっと眉を寄せた。 「髙野辺さん、もしかしたらお金で解決しようとしていますか?」 「……」 「あっ、やっぱり……!笑って誤魔化そうとしても駄目ですよ。私だって、Seaとして働いてお金を稼いでいますから。ちゃんと自分でお金を出します……!」 「だけど、こういった事は……」 「新島誠司の車です、それに、轢かれたのは私の祖父母です。……私が対応するのが、普通なんです」 もみじの強い意志を感じた髙野辺は、それ以上誤魔化す事はせず「分かりました」と答えた。 「本当なら……こういう事に、もみじさんを関わらせたりしたくないんです」 「……髙野辺さんのご実家が、大財閥……だから、ですか?」 もみじの言葉に、髙野辺ははっとして顔を向ける。 だが、猪谷とのやり取りを聞いていたなら。 もみじにもある程度、髙野辺自身の家の事は推測できてしまうだ

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