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第10話
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私の結婚式はお別れの手紙 第16話
律は震えながら、私の手を握った。私が消えてしまうのではないかと不安だった。「楓、僕と一緒に行こう。もう一度だけ、チャンスをくれ、お願いだ！」私は眉をひそめて、彼の言葉を遮った。「律、私たちはもう無理だよ。諦めてください」律は何かを訴えるような切実な表情で私を見つめた。「僕と晴菜の仲が良すぎるから、ずっと怒ってたんだろ？もし嫌なら、彼女とはもう関わらない。いや、今すぐ彼女を追い出す」私はもう我慢できず、力いっぱい手を引き抜いた。「律、一体何を考えているの？」私がそう言うと、彼はポケットから慎重に指輪を取り出した。私の前に片膝をついた。「楓、ずっと、僕との結婚式を楽しみにしていたんだろう？ごめん。前は心が揺れていて、自分の気持ちがわからなかった。今、やっと気づいたんだ。本当はあなたを愛してるって。でも、自分が自信がなくて、ずっと認められなかった。あなたも、僕のことを愛しているんだろう？」私は冷ややかな目で彼が自分に酔って泣いているのを見て、彼の言葉が馬鹿馬鹿しいと感じた。どうして彼は、振り返りさえすれば、私が必ずそこで待っていると思っていたのだろう？「本当に愛を分かってるのか？律、愛してるかどうかは心が決めるんだ。軽々しく口にするものじゃない！本当は、あなたは誰も愛していなくて、自分だけを愛している」律の表情が固まり、顔色も青ざめた。「違う、楓、本当にあなたを愛している」彼は焦って私を掴もうとした。私は心の中で抵抗があり、体をひねってよけた。律は空振りして、そのまま情けなく地面に倒れ込んだ。その直後、拓真を取り囲むようにしてボディーガードが数人入って来た。律を地面に押さえつけた。拓真を見て、律は目が真っ赤になり、狂ったように彼に向かって叫んだ。「楓を返せ！彼女のことを全然知らないくせに、結婚なんてふさわしくない！」拓真は優しく私の腰に腕を回したが、その声はまるで氷室に入ったかのように冷たかった。「京極律、彼女を失くしたのはお前のせいだ。彼女はもう戻りたくないんだ。彼女を知ることについては心配しなくていい。これから先、私たちには時間がいくらでもあるから」私は冷たい目で律を見つめ、一言も言わなかった。結局、ボディーガードに彼を追
私の結婚式はお別れの手紙 第15話
結婚当日、朝10時まで寝てしまった。情けなくて、母を責めた。「なんで起こしてくれなかったの？もうだめだ。きっと天海家に笑われるよ」母は笑いながら私を見た。彼女はゆっくりとルームサービスで運ばれてきた和食を私の前に押し出した。「お腹がすいただろう？まず少し食べて」私はあまりにも急いでいたので、食べる気になれなかった。「メイクさんは？カメラマンは？母ちゃん、早く彼らを呼んできて、準備しないと、本当に間に合わないよ」母は手を上げて私を椅子に押し戻した。「間に合うよ」「でも、結婚式の時間は……」「拓真くんは結婚式の時間を夜に変更したよ」「え？」私は目を見開き、耳を疑った。母は意味ありげな目で私を一瞥した。「それに、具体的に何時にするかは、楓の起きた時間で決めるって拓真くんが言ったのよ。」「そんな無茶なこと！」そうは言っても、まるで誰かが突然、私の心にそっと飴を置いてくれたような気がした。昨夜、拓真が言った言葉を思い出した。そのあと、いっぱい話した。彼もずっと優しく、付き合ってくれた。おざなりな態度は一切なかった。最後、私たちは朝三時に寝た。でも、話し合ったあと、彼との関係は以前ほど気まずくなくなったように感じた。拓真は私に最大限の思いやりを見せてくれた。でも、本当にそれに甘えて、わがままになるつもりはなかった。軽く食べた後、メイクさんを呼んで、すぐに化粧を始めた。すべての準備が整った後、拓真が私を迎えに来て、一緒に教会へ行くと思っていた。まさか、やって来たのはウェイターの格好をしていた律だった。
私の結婚式はお別れの手紙 第14話
二分後、すでに真っ暗だったスマホの画面が光った。拓真は一枚の写真を送ってきた。まだ読み込み中だが。さらに数枚の写真を送ってきた。不安な気持ちで、一枚ずつ確認してみた。すべての写真には、浜辺にしゃがんで泣いていた女性の後ろ姿が写っていた。私は写真を拡大してじっくりと見つめた。写真に写っているのが自分だと、ようやく気づいた。まさか……その中の一枚は、二年前のものだと覚えていた。その時、私は律の書斎で彼が長い間大切に保管していた写真集を見つけた。彼と私の間に、亡くなった人の影が横たわっていることに耐えられなかった。ヒステリックになって、彼に写真を捨てるよう迫った。でも、律はそれを惜しんで捨てたくなかった。それで、彼と大喧嘩をした。一人で車を走らせ、海辺まで行き、そこで一晩中座っていた。翌日、私はみっともなく、彼のもとへ戻って仲直りを求めた。私：【当時、そこにいた？】拓真：【ああ、もともと友達と会うために出かけたんだけど】私：【それで？】拓真：【一晩中君の愚痴を聞いてた】私：【（気まずい顔の絵文字）】拓真：【その時、君を泣かせた人は本当に針千本を飲むべきだと思ったよ。楓】私：【はい】拓真：【実は、前に間違ったことを言っちゃったんだ。君に、私の奥さんになってほしい。でも、何よりも、君には君らしくいてほしい。清水楓らしくいてほしい】この言葉は、あまりにも重かった。目の前がぼやけていた。屈辱に耐え、律の機嫌を取ろうとしていた頃の自分を思い出した。何かがおかしいと気づいた瞬間に、きっぱりと離れようとは思っていなかった。そうだ。私は長い間、自分を捨てていた。三年間かけて、自分を取り戻した。幸いなことに、まだ遅くなかった。
私の結婚式はお別れの手紙 第13話
心が乱れていたとき、スマホに拓真からLINEのメッセージが届いた。【外を見て】私は困惑しながら問い返した。【？】向こうの返事はなかった。私は立ち上がって大きな窓まで歩いた。次の瞬間、真っ暗なビーチの上で、一人が列に並べられた花火に次々と火をつけ、それは夜空へ舞い上がった。花火が静かな夜を照らして、私の張り詰めた心も癒してくれた。花火は3分後にようやく終了した。ビーチにいるのはやはり拓真。彼は、孤独な彫刻のように、じっと私の方を向いて立っていた。拓真：【君は花火より美しいよ】彼がこんなに直接褒めてくれたのは初めてだった。でも、嫌ではなかった。入力ボックスに、心の中にずっとあった質問をした。【どうしてこんな政略結婚に同意したの？私たちは以前に知り合いだったの？】送信をタップした後、私は、画面上部の入力中の表示が、何度も消えたり現れたりするのを見ていた。すごく緊張していた。私は拓真について全く知らないわけではなかった。彼の家族が名門であること、そして、彼自身が好きな相手がいることを公に認めていることも、私は知っていた。 このため、多くのファンが嘆き、惜しんだ。でも、拓真のそばに女性がいるのを見た人は、これまで一度もいなかった。この2年間、拓真は女性が好きではないと、皆が推測していた。その時、天海家が政略結婚を提案した。 これも親が躊躇する原因だった。
私の結婚式はお別れの手紙 第12話
私の言葉を聞いて、律は驚いたようで、呆然としていた。「楓、誤解している」彼はショックを受けたようだった。そして信じられない顔をしていた。「憎んでないよ、実は……」律は苦い表情を浮かべた。 「実は、当時噂を広めたのはあなたではないと知っている。すべては晴香の仕組んだことだった。彼女は前から僕と別れたかった。ただ言い訳がなかっただけだ。たまたまその時、あなたが僕を助けてくれたので、彼女は人に頼んで噂を広めてもらった。実は、交通事故に遭った日、彼女は金持ちの家の息子と駆け落ちするつもりだった。彼女に騙された」私は冷たい目でこの虚ろな男を見ていた。心が少しも動かなかった。「知っていたなら、この3年間、どうしてそんなふうに私に接してきたんだ？」「僕……」律はすっかりしょんぼりしていた。彼は顔を覆って激しく泣き始めた。「ごめん、僕のせいだ……もしあなたが当時、そんなことをしてくれなかったら、もっと晴香と一緒にいられたかもしれない。彼女はあんなに急いで行かなかったかもしれないし、もしかしたらあの交通事故にも遭わなかったかもしれない」「京極律、もともと彼女を引き留めることなんてできないよ」「わかってる……」彼は突然口調が優しくなり、私を引っ張ろうとしていた。私に強く振り払われた。今では、彼が悪いことをしてから和解を求める姿など、もはや私の心を揺さぶることはできなかった。以前彼を愛していたとき、私はいつも自分を欺いていた。彼が適当なことを言うだけで、全部許してしまっていた。飴と鞭の使い分けは、私にいつでも効いた。しかし、このすべての前提は、私が彼を愛しているということだった。今は、私たちはもう終わった。「京極律、あなたの心の中にあの二人の姉妹がいるかどうかに関係なく、私とあなたの間にはもう何の可能性もない。明日は私の結婚式だ。私の人生に干渉しないでください」そう言い残して、私は向きを変えて、部屋に戻った。律は諦めようとせず、私を引っ張ろうとしていたが、近くで待機していた警備員はすぐに彼を外に引きずり出した。律のせいで、私は1時間ベッドに横になっていたが、眠れていなかった。
私の結婚式はお別れの手紙 第11話
深夜、ホテルのフロントから電話があった。「清水様、京極という方がロビーで騒いでいて、どうしても会いたいとおっしゃっています」私はもう彼に会いたくなかった。話したいことすらもなかった。「警備員を呼んで、彼を追い出してください」フロント係は話すのをためらった。「清水様、もう何度か追い出したんですが、諦めなくて、また来てしまって……良ければ、彼と会いませんか？彼を諦めさせたら、きっと明日の結婚式もうまく進められると思います」フロント係に迷惑をかけたくなかった。そして、明日の素晴らしい日も律に邪魔されたくなかった。結局、フロント係の言葉に従い、部屋を出て下へ降りた。私たちが最後に会ってから、まだ数日しか経っていなかったが、律はいつものような自信も勢いもすっかり失っていた。私を見ると、彼は駆け寄ってきて、私の手首を掴んだ。「清水楓！」律は抑えきれない声で、フルネームで呼んだ。「どうして何も言わずに僕のもとから離れたの？どれだけ心配したかと思ってる？」私は無表情のまま、彼の手を振り払った。「京極律、私たちもう別れたの、これ以上関わらないで」「別れたって？そんな話、聞いてない！清水楓、最初に一緒にいたいって言ったのはあなただ。今になって、黙って姿を消して、勝手に別れを決めたのもあなただ。何でもあなたの思い通りになると思ってるのか？僕はそんなの、認めない！」律は目が真っ赤になり、怒りと信じられない思いで歪んでいた。「勘違いするなよ。あなたと相談しているんじゃない、あなたの承認も必要ない。京極律、ずっと私を憎んでるだろ？今、私から別れるって言ったんだ。喜ぶべきじゃないの？」
