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第13話

Author: ショウガ飴
泉家はすでに資金が尽きかけていた。玉城グループも風前の灯火だ。赤字は深刻で、泉家の資産を切り売りすることで、なんとか運営を維持している状態だ。

金も、玉城グループも、もはや蓮が心を砕く価値はない。

蓮は気品に満ちた優雅な姿勢で腰掛け、ソファの肘掛けに置かれた右手には一本の葉巻が挟まれていた。

煙がゆらゆらと漂う中、彼は一階ホールで繰り広げられているショーを楽しげに眺めていた。どうやら彼女への返答をするつもりはないようだ。

だが、彼女にはもう時間が残されていなかった。彼の怒りを買う危険を冒しながらも、小さく声を落として促した。

「蓮、あなたの望むものは何?私にできることであれば、精一杯……」

言い終える前に、蓮は冷酷な口調で彼女の言葉を遮った。

「もし俺が、お前に娼婦になれ、股を開いて売れと言ったら、お前はやるのか?」

またしても、こういう屈辱を与えるのか。

凍りついた彼女の心は、それでも僅かに痛んだ。彼女は彼の端正な横顔を見つめながら、真剣に答えた。

「それはできないわ」

これは、個人の問題ではなく、泉家を背負っているのだから。たとえ泉家が傾こうとも、泉家は面子を重んじる家だった。

「わかってる。私の次兄が、以前から何度もあなたに無礼なことを言ったから、あなたは彼を懲らしめたいのでしょう。でも、あなたのその要求は、ちょっと……」

言葉を濁したそのとき、一階のホールから突然騒ぎ声が上がった。

彼女が振り返ると、なんと沢が牛の背から振り落とされていた。

あの狂った牛は激しく暴れており、何度も前脚を高く上げては、沢をむやみに踏みつけようとしていた。

幸い、沢は二、三年ほどテコンドーを習っていたおかげで、何度か俊敏に身をかわした。

だが、その回避が続いた後、牛は後ろに数歩下がり、角を低く構えて彼に向かって突進してきた。

ドンッ――!

ホールに、激しい衝突音が響き渡った。

沢は間一髪で体をかわしたが、牛の角は柵に直撃し、鋼鉄製の柵ですら深い凹みを作っていた。

その様子を傍らで見ていた浩司は興奮気味に手を叩いた。

「泉家の次男、なかなか持ちこたえてるな。今夜はてっきり、牛に踏み殺されるかと思ったのに」

「試合を中止すれば、クラブに三倍の保証金を支払わなきゃならないんだ」

蓮の視線は、ずっと下のホールにいる沢に注がれていた。

「俺たちはもう離婚した。何の関係もない。なぜ俺が六百万円も払わなきゃならない?」

そうだ。すでに関係は終わった。それなのに、どうして彼はまだ彼女を手放そうとしないのか。

彼女は怒りを堪え、頭を下げて懇願した。

「蓮、私ができる条件を言って。あなたもわかってるはず、あなたが言った『売る』なんて、私には到底できない……」

こんな性の嫌悪感を抱えた精神疾患のある彼女に、売春などできるはずもなかった。

「じゃあ、お前の家をよこせ」

蓮がようやく顔を向け、冷たい黒い瞳で彼女を見据えた。

「私の名義で残っている不動産は、あなたと一緒に住んでいたあの別荘だけ。でもあの河湾の別荘は、すでに抵当に入ってるの」

与えられないのではなく、すでに権利が銀行に移っていた。

「俺が言ってるのは、今お前が住んでる旧市街のあの家だ。最後に残った不動産の所有権を渡せ」

彼の唇は冷たく動き、吐き出された言葉は容赦なかった。

「あなた……」彼女は困惑と怒りをにじませながら言った。

「あなたも知ってるでしょ、あの家は共同所有の物件で、売却もできない。それに、あなたにはもう十分すぎるほどの家があるのに、なぜそれでも……?」

一ヶ月前の離婚時、財産分与の段になって初めて彼女は知った。彼には婚姻期間中の収入が一切なく、五年間給与ゼロの戦略契約書にサインしていたのだ。つまり、結婚してからの五年間は無給で働き、五年後に会社の配当金を一括で受け取るという仕組みだ。

つまり、最初から彼はこの結婚を計算ずくで進めていたのだ。

彼女は見事に嵌められ、無一文で家を出る羽目になった。泉家の会社は危機に瀕し、他の不動産はすべて借金返済に充てられた。

そして今、彼女の手元に残っているのは、旧市街にあるこの住まいだけ。母と多くの思い出を共有した、かけがえのない場所でもある。

それなのに、今や彼はそれすらも奪おうとしているのか?

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