Beranda / 恋愛 / 秘密の花 / 渡辺春陽1

Share

渡辺春陽1

Penulis: いのか
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-26 17:09:38

12月にはいっても小春日和が続いたある日の夕暮れ時、渡辺家に初の子供が産まれた。

  「こんな良い日にこんな太陽みたいな子が産まれてくるなんて」

  すやすやと眠る娘のぷくりと膨らんだ頬を触りながら父が言った。

  「名前、少し考えたのだけど…」

  ベッドに腰かけていた母はこの父も、両家の祖父母も沢山の候補を考えているコトを知っていたので控えめに言った。

  「はるひ…春の陽光の陽で「春陽」なんてどう?」

  ベビーベッドですやすやと眠る愛娘に両親は優しい目をむける。父もいくつかは候補を考えていたのだが、この心の暖かさを与えてくれた娘に「春陽」という名はピッタリだと思った。これから娘の日々にも春の様な暖かさが降り注ぎ続けばいいと思った。

  「春陽ちゃんか、いい名前だ…」

  優しく、愛おしく父が言った。

  その後病室に駆けつけた両家の祖父母も春陽という名をとても気にいり快諾してくれた。

  渡辺家は春陽を中心に病室で幸せなひとときを過ごした。

  それなのに。

  その幸せが数時間後には全て崩れてしまった。

  母、香織が家族を見送って暫く経った頃、窓の外からかすかに緊急車両のサイレン音が複数きこえてきた。そちらに視線をむけると再び緊急車両が病院前を通過していった。

  事故でも近くであったのかしら?香織はそう思いながら春陽の眠るベビーベッドを覗き込み愛らしい愛娘を見つめながら微笑んだ。どれだけ長い時間見つめていても飽きるコトはなかった。

  「春陽ちゃん、早くお家に帰ってパパと3人で暮らしたいね。 貴女の為にベビーベッドもベビーカーも色々用意してあるの。ベビーベッドの枕元にはパパが貴女のはじめての友達になるウサギさんのぬいぐるみがいるのよ、とても楽しみでしょう?パパはきっとまた明日もすぐに会いにきてくれるよ」

  今現在の幸せを噛みしめながら、更に未来の幸せを思って愛娘に語る声をドアのノック音が制止させた。

  「渡辺さん…」

  看護師がドアを開け入ってくる。その顔には何時もの笑顔は無く、次の言葉も出してよいのか悩んでいる様だった。

  「どうかしましたか?」

  「……」

  「何か、ありましたか?」

  看護師の態度に香織に緊張が走る。

  先程きいた緊急車両のサイレン音が頭の中で響く。

  これは聞いてはいけない話しだと自身の中から警告音がする。

  ドクン、ドクン、ドクン…。鼓動がはやくなる。

  「あの…、先程病院の直ぐ近くの交差点で事故があったんです」

  緊急車両サイレンの音が更に大きくなって香織の頭の中で響きわたる。

  「ウチの病院に運ばれた方が…」

  ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……。

  「渡辺さんの旦那様で……」

  ワタナベサンノダンナサマデ……

  ダ、ン、ナ、サ、マ、デ……!?

  その言葉を聞いた瞬間、香織の意識は闇に消えた。

  高齢運転手が急に反対車線へでてきたことが事故原因だったらしい。ハンドルをきり避ける暇もなく正面衝突した車には旦那である敦と後部座席に敦の両親が乗車していた。助けだされた時には既に敦は意識が無く、両親も微かな反応をみせるだけだったらしい。

  病院での蘇生治療のかいもなく死亡診断がされた。

  渡辺の義父には兄弟がいなかった。義母には妹が2人いたのだがお互い遠い県外に嫁いでいた。そして敦には兄弟がいなかった。遺体の状態の為にも早めに葬儀をあげる事になった。喪主となる香織は退院前の産後の身で春陽を病院に預けたまま敦と義両親の葬儀を行ったのだ。香織の両親が心配をして色々と手を貸したがそれでも身内である香織にしかできない手続きも多くまともに休む時間をとれないまま春陽と共に退院して自宅であるアパートへ帰ったのだ。

  それからは3人の役所手続きをし、義母の妹達の了解を得た上で2人の遺品を片付け住んでいた賃貸マンションを解約した。

  敦の遺品にはまだ手がつけられなかった。

  そうしてあっという間に49日の法要も終わった。

  無事に納骨を終えると香織は本当に大事な遺品だけを残し敦の衣類や日常品の整理も終えた。

  両親は香織にアパートをひきはらい自宅へ戻る事をすすめた。

  「産まれたばかりの春陽ちゃんをあなた1人が面倒みるなんてむりよ、古いけど家もあるしお父さんもまだ定年まで少しあるから収入があるわ。遠慮なんてしなくていいのよ」

  母のあたたかい言葉に香織は涙を流しながら首を縦に振った。

  実家に戻った香織は春陽を母に預けながら昼はスーパー、夜はファミレスで働きはじめた。

  父が現役で働けるのもあと数年。子育てにどんどんお金はかかっていくのだからと少しずつの貯金もはじめた。

  子育てと仕事の忙しさもあり香織は悲しみに陥る事も少なくはなった。

  ただたまに敦が用意したベビーベッドで敦が選んだウサギのぬいぐるみを抱きしめる春陽の姿を見ると強い喪失感を感じてしまうのは仕方がなかった。

  そうして日々は過ぎ。

  春陽の初めての誕生日がやってきた。

  春陽の誕生日は敦とその両親3人の命日でもあった。

  しかし3人は沢山春陽を愛していたからその日は何よりも春陽を大事にして欲しいと願っているはずだ。

  だから12月6日は春陽の誕生日が最優先された。

  真面目な仕事人だった香織の父もこの日は有給をとったため午前中のうちに4人でお寺へ行き僧侶に一周忌法要をしてもらい墓参りをすませた。その後帰り際にある寿司屋で昼食を済ませ帰宅した。

  「さて、プレゼントでも買いに行くか」

  休む間もなく父が母に言った。

  春陽の誕生日プレゼントを買いに行くと出て行った両親は孫への買物だと楽しそうに家を出て行った。

  それなのに。

  両親が出てから2時間少しが経ちそろそろ帰宅する頃だろうと思い香織はキッチンでお湯を沸かしはじめた。

  その時、スマホの着信音が聞こえてきた。慌ててリビングに戻るとスマホを持った。

  「もしもし、お母さん?」

  発信者の名前は母になっていた。

  「どうしたの?」

  返事は無く、代わりに微かな嗚咽する音が聞こえてくる。

  「お母さん?何があったの⁉︎どうしたの⁈」

  不安がよぎる。それは1年前に味わったそれと同じものだった。

  「今、……総合病院にいるの」

  母は泣きながら声を出した。

  香織はすぐにタクシーを呼び財布とスマホ、春陽の小さな靴とブランケットをバッグに投げ入れると春陽を抱きかかえて外に出た。数分待つとタクシーが到着しすぐに乗り込むと「花塚総合病院に行ってください!」叫んだ。

  2人は商店街でプレゼントを買い終え帰宅する為に駅前のバス停へむかっていた。夜にはケーキも食べるけど帰宅したら飲むお茶の供にお団子でも欲しい、ちょうど駅前にはお気に入りの和菓子屋がある。「駅前でお団子買っていきましょう」と言いまだ青だった横断歩道を渡りはじめた。その時2人に気づかなかった左折車が2人を襲った。

  母は軽症ですんだものの車に直接ぶつかった父は重症で運ばれたのだ。

  昏睡状態が続いた父は2週間後、息をひきっとった。

  たった1年で大事な家族4人を見送ることになり香織はたまらずに大泣きしてしまった。

  「香織、あなたには春陽ちゃんがいるのよ。泣くのは今日だけにしなさい……」

  葬儀の日、父を亡くし今は自分よりも辛いだろう母は香織の頭を撫でてそう言った。

  「お母さん……」

  優しい母の手に香織は今まで以上に強くならないといけない、そう思って愛娘をみつめた。

  春陽は香織の横にちょこんと座り抱っこして欲しいと手を伸ばしてくる。

  春陽をギュッと抱きしめると春陽はニコリと笑った。

  春陽がいる、お母さんもいる。大丈夫、頑張れる。

  1年前に行なった数々の手続きを早い段階で終える。慣れなくてもいい、慣れたくなんて無い事に香織は少しばかり慣れてしまっていた。

  そして春陽の保育所をなんとかみつけ香織はスーパーのパート時間を延ばしてもらった。母も知人が経営する食堂で昼のパートをはじめた。

  大変ではあったが平穏な3人の生活がはじまったのだ。

  春陽が小学3年生になった頃、香織はある変化に気づいた。

  春陽が小学生になり文章を書けるようになると香織の帰りが遅くなってしまう事もあり2人は交換日記を始めた。春陽はそれまで沢山友達の名前を書き誰と何をしたのかを書いていた。

  それがいつの頃からか友達の名前が書かれなくなっていた。

  --いつ頃からだっただろうか?そんなには前でなかったはず。

  香織は交換日記のページを1日、1日と毎戻りながらながめた。はっきりとはしなかったがどうやら8歳の誕生日あたりからだとはわかった。

  --この頃に何があった?

  香織は記憶をさぐるけれど特に思いつく事は無かった。

  春陽8歳の誕生日少し前。

  「春陽ちゃんの誕生日、12月でしょ?10月誕生日だった愛美ちゃんには誕生日会よんでもらったし私達も5月によんであげたでしょ?だから春陽ちゃんも愛美ちゃんや私達をよんでくれるよね?」

  休み時間。

  春陽の机に数人の女の子が寄ってきて言った。

  確かに10月、友達である間宮愛美(まみやまなみ)の誕生日会が日曜日に行われて招待された春陽は出席した。

  5月にも2人の誕生日会へ呼ばれ出席した。

  特に愛美の家は父親が立派だとかでそれはそれは立派なバースデーケーキ、豪華な料理、色々な飲み物がだされ春陽はワクワクした。可愛らしい人形や新しいゲームで遊びとても楽しい日だった。

  しかし、春陽は自分の家の事情も幼いながら理解していた。

  祖母は持病のリウマチが少し悪化し食堂のパートを暫く前に辞めた。その為、母は仕事を入れていなかった土曜日の夜と日曜日も働きはじめた。

  誕生日会したいなどとワガママを言いだす事はためらわれた。

  「お母さんにきいてみるね」

  顔はニコリと笑顔をつくりながらこたえる。

  「私達楽しみにしてるからね!」

  女の子達はそう言うと愛美の机へとむかった。

  休みの日に皆で遊べるのは嬉しい、だから母にお願いしてみよう。そう考える春陽を見ながら愛美の机に集まった女の子達はクスクスと笑った。

  「本当にやるのかな?」

  春陽に最初に声をかけた浅田麻里(あさだまり)が言った。

  「無理に決まってる!」

  隣に立つ石川由宇(いしかわゆう)が確信したように言った。

  麻里と由宇は愛美の横に何時もついていた。

  「だってあんなに貧乏なんだもの!」

  麻里と由宇は息が合ったように言う。

  「麻里ちゃん、由宇ちゃん……そんな言い方悪いよ」

  言葉はかばう様だけど口の端をわずかに上げて高橋小春(たかはしこはる)が言った。

  「本当に春陽ちゃんに悪いよ」

  愛美は3人に言う。

  しかしその顔は微笑んでいた。

  「だって、本当に貧乏じゃない?」

  「ねー」

  「着てる服だってボロの古着だし!」

  「愛美ちゃんへのプレゼントなんて確か鉛筆と消しゴムだけだったよね!私達にもそうだったけど!」

  「イラスト入りでもあれはないよね!」

  「愛美ちゃんだってそう思うでしょ!」

  ウサギのイラストが付いた鉛筆と同じイラストの消しゴム、可愛らしかったけれど愛美はそれを一度も使ってはいなかった。

  「可愛かったよ?」

  ニッコリと笑う。

  「従妹のスミレちゃんが気に入っていたわ」

  愛美は自分で封を開けることもなく5歳下の従妹にあげてしまっていた。

  香織が家にいる時、春陽は誕生日会の話をした。

  期待せずに聞いた誕生日会を母は誕生日なのだからと快諾してくれた。

  誕生日会に呼ぶ人数を香織と祖母に伝えておいた会の当日、2人はできうる限りで準備をしてくれていた。

  呼ばれた4人はニコニコと春陽にプレゼントを渡し出されたケーキや料理を食べ、春陽の部屋で遊び帰っていった。

  片付けをはじめたその時、愛美のスマホが忘れられているのに気づき春陽は家を出た。玄関から少し走ると話をしている4人の後ろ姿がみえた。

  「まなみちゃ……」

  呼びかけようとした春陽は言葉をとめた。

  「思った以上だったね」

  「まぁ、料理は不味くなかったけどさぁ」

  「ケーキ位は安くても普通ショートケーキが出ると思ったのに」

  「ホットケーキって……」

  アハハハ!

  「どれだけ貧乏なの?って!」

  「ホント」

  3人の会話に春陽はその場にかたまってしまう。

  気配を感じたのか愛美がゆっくりと振り返る。

  春陽の姿をみつけるとニコリと笑顔をつくった。

  「春陽ちゃん、私のスマホ持ってきてくれたの?ありがとう。忘れてママに連絡できないと思ってたところなの」

  愛美の言葉に3人も春陽に気づき気不味そうな顔をする。

  「……」

  沈黙が暫く続いたが、愛美の声でその場の緊張がとかれる。

  「春陽ちゃん、さっきの会話聞いちゃったの?でも仕方ないよね。全部本当の事だから。だからって私達は春陽ちゃんを無視とかイジメとかしていないでしょ?」

  笑顔で言い切る為、正論だと思わされる。

  実際に正論だった。春陽は彼女らにイジメられた記憶など無かった。言っていた事もただの感想だと言われればそうなのだ。

  3人も直ぐに笑顔になって春陽に言った。

  「春陽ちゃんが貧乏でも私達は友達だもんね!」

  「ホットケーキも美味しかったよ!」

  「誕生日会は楽しかったよね!」

  「……」

  春陽は何もこたえられなかった。自分ならば友達のそんな話はしないだろうから。

  だから。

  「忘れていたよ」

  それだけを口にし春陽は愛美にスマホを渡すとクルリと向きをかえて走り出した。その目は真っ赤になりポロポロと涙が溢れ出していた。

  その誕生日会の翌日から春陽は4人と話す事がなくなった。

  可愛くて頭の良い愛美はクラスの人気者で、今までその愛美のグループに属していた春陽を避ける子はいなかった。が、春陽が距離をとり愛美達も声をかけなくなると他の子達の態度も変化していった。

  シングルマザーの家庭でギリギリの生活をする春陽はイジメの対象者としては最適だった。

  「臭いお前の履き物だから」と、履き物をトイレの便器に捨てられていた事もあった。「ブスが近づくなよ」と、クラスで2人組やグループを作る時にどこにも入れてもらえない事もあった。「泥棒」と、何かが無くなると真っ先に疑われる事もあった。

  春陽は学校という世界で完全に孤立してしまったのだ。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 秘密の花   告白 ④

    ウィルモットで働くミユキこと黒田深雪(クロダミユキ)21歳はパシオンエンターテイメントに所属するモデルだ。175センチの長身がコンプレックスだった高校時代。修学旅行ではじめて行った原宿で事務所の人に声をかけられた。両親は賛成をしてくれたわけではないが反対もしなかった。自分で決めればいい、とだけ言われた。進学予定だった専門学校をやめて卒業と同時に事務所と契約、寮に住みながら事務所の育成カリキュラムを受けた。1年経ってモデルとしていくつか仕事がくるようになって寮も出ようかと思った時に事務所の野村から声をかけられた。「寮を出るなら少し離れるけど事務所所有の花塚のマンションにいかない?時間がわりと自由なバイト先も付けるよ。都内来るまで乗り換えなしで70分しかかからないし、いい話だと思うんだけど」花塚からなら上野へも新宿へも電車一本で70分しかかからない。都心より物価もだいぶ安いと聞く。事務所所有のマンション家賃は相場の7割程度で寮より自由が効く。更に時間がわりと自由なバイト先まで紹介してくれるなど、深雪が断る理由はなかった。そして紹介されたバイト先がオープンして間近のウィルモットだった。2つ年上の正木廉さん。野村がマネージャーをしていたアイドルグループエアネストのメンバーのひとりだった人。中学時代に好きだという友達がいて名前は知っている程度のアイドルグループ。1番人気のグループの顔的存在KEI、身長も高くてかっこいいTANI、ヤンチャで明るいYUZU、ツンデレ王子のHIROの4人に比べてイマイチパッとしなかったメンバーがMAKIだったと記憶していた。花塚駅前に建つ事務所所有のマンションへ引っ越しを終えると一応の面接の為に開店前の店へ足を運んだ。「すみません、面接に来た黒田です」店のドアを開けて声をかけると奥から男性が1人近寄ってきた。「黒田深雪さん、ですね。その手間のテーブルにかけて下さい。飲み物はコーヒー、紅茶どちらがよいですか?」自分より少しばかり背が高いだろうか。見上げるほどではないから180弱程度か。短めにカットされた硬質の黒髪は軽く流す様にワックスで固められている。あらわになた額から鼻筋の美しさが際立つ。整えられた髪と同じく硬質の眉と切れ長気味の目。--実物、めちゃくちゃカッコいいじゃん!深雪は心の中で叫び声をあげた。「

  • 秘密の花   告白 ③

    舞がコーディネートした服を持って試着室で着替える。「フェミニンスタイルは本当はショートよりもセミロング位がいいんだけど…。春陽、切っちゃうし!」そこは舞にはかなり気に入らない部分だったらしい。天然パーマの春陽には短い方が楽ではあるのだが。これから湿度が上がってくる時期になれば尚更に。でも、さすがファッション学部 ファッションデザイン専攻で学んでいるだけはあって舞のセンスの良さは間違いない。舞が選んだ服を着た鏡の中の姿は別人に見える。カーキの薄手ニットセーターに若草色のシアーブラウス。下は8部丈のダークグレーのシフォンパンツ。「着れた?」試着室の外側から舞が声をかける。「着れた」試着室のドアを少し開き春陽が顔だけ出した。「着れたなら見せてよ、改善もできないでしょ」「そうなんだけど……」普段、お洒落をすると言っても持っている服の中でする程度だった。1番まともなお洒落でも先日着たワンピース程度なのだ。大人可愛いフェミニンスタイルなどハードルが高かった。「ほら!」舞が力まかせにドアを開ける。「……」「……」「やっぱり可愛いじゃない!」「に、似合わないよね!やっぱり!」「……」「……」「え?」結果、舞のコーディネートした服を購入、さらにそれに合わせたライトブラウンのショートブーツを購入した。「せっかくなら全部買ったモノに着替えてしまえばよかったのに」ランチ時の混雑回避の為13時を回ってからウィルモットへと向かった車内で舞が残念そうに言った。「きっとあの男も驚くと思うけど」「男って……正木さんのこと?」「だって、春陽に絶対気があるでしょ?あの男」ズバっと言った舞は自分の言葉に不機嫌になる。しかし、春陽が付き合う事を決めるならばあの男よりは正木廉の方が百倍位応援できると考える。春陽は苦笑いしながら気のせいだよ、と話を流す。「それに、やっぱり私は男の人はいい」「……」「嬉しい事に子供はもう桜がいるし。おばあちゃんも舞ちゃんもいるから今更誰かと付き合うとか考えなくてもいいの」ハンドルを握る手に僅かに力が入るのを舞が気づく。「何かあった?」「特に無いよ」笑って答える春陽だが、それが嘘だと言うことは舞にはすぐにわかることだった。「ほとんどの男を馬鹿だと思っている私ならまだしも、可愛くて性格もよくて、子連れだ

  • 秘密の花   告白 ②

    舞との久々の電話から数日。『やっと時間空いた!明日のランチ一緒に食べよ!』舞から早々に連絡があった。「あら、久々に出かけてくるの?」「うん、明日のランチにウィルモットに行ってくるけど。おばあちゃんも一緒に行く?」「あら、誘ってくれるの?」ゆり子はでも今回はいいわ、と断ってさらに桜も置いていっていいわよ、と付け足した。金曜日なので朝はバイトに行ってしまう為早朝から昼過ぎまで桜を頼む事になる。「おばあちゃんが休めなくなっちゃうよ」春陽は心配で言ったが。「桜の面倒みている位がいいのよ。TVみてボーっとしていたら私がぼけちゃうわ。久々だからゆっくり話もしたいでしょ?」確かに、舞と話ができるのは久々なのでゆっくりとしたかった。「でも、次は私も連れて行ってね。彼の店なんでしょう?」「近いうちに絶対連れていく!」「なら、明日はゆっくりしてきなさい」何時も何時も、ゆり子の優しさに春陽は感謝する。10時少し過ぎた時間で退勤をおしてコンビニから舞のマンションへ向かう。来客用の駐車スペースに駐車してエレベーターで上がる。ピンポンを押すとすぐに玄関ドアが開けられる。「おつかれさま」一働きしてきた春陽に舞が労いの一言を言う。「言ってもらえるほどは働いてないよ」春陽は苦笑いを浮かべる。「働く気持ちが大事よ。それに朝のコンビニは大変でしょう?」朝のコンビニは確かに1番大変なのかもしれない。店舗によって時間が変わるがお弁当配達が1日3回ある内で1番大量の品が搬入される。その他パンの搬入も早朝だ。レジ横に並ぶチキンなども早朝が最初の準備となる。他10時迄に発注作業と精算作業がある中で接客があり、出勤時のピークはレジから中々離れる事はできない。「まあ、大変だけど短い時間だから」「少し休んでから出る?」気づかって聞いた舞に首を振る。「ランチの前に久々に舞ちゃんと買い物もしたいし」「そうだよね、春陽ってば会わない間にまた髪切っちゃうし……。お洒落から離れちゃっているから私が服をみてあげないと!」「髪はこの方が楽なんだけど」激安カット店で注文が「ただ短く」の髪型は舞には不評のようだった。「楽を優先しすぎて20歳の女盛りを捨てちゃダメ!春陽の可愛さがもったいない!」美人の舞にならわかるけれど、背が低めでパッとしない自分がそこまでお洒落にこだわ

  • 秘密の花   告白 ①

    「あれ?廉さん、これは?」夕方のバイトにきてくれたスズカとニイナがレジに置かれていたブラウンのウサギのぬいぐるみに気づき可愛いと話しはじめる。「あ〜、昼前に甥っ子連れて動物園行った時にUFOキャッチャーやらされた」「え〜かわいい」「景品はこれだけなんですか?」「もう1つのウサギは知人にあげたし他は全部甥っ子がもって帰ったから」「えー、誰にあげちゃったんですか。欲しかったなぁ」「あ、でもウサギのぬいぐるみって事はその知人て女性ですか?」「……あぁ」「え〜、なんかありそうな返事ですよぉ」「もしかしたら彼女ができちゃったんですか?!」「マユやミユキさんとか絶対にショックだね!」「だよね、本気で廉さん狙っていたし」「でも廉さんまったくそんな気配なかったのに……」「ちょっと2人とも、俺に彼女なんていないから」「えー」「じゃあ知人って男の人?子供じゃ知人なんて言わないし」「……」「いや、女の子だけど……」「「ほら!」」「でも彼女じゃないから!」「まさか、廉さんが、片思い?!」「どんなヒトかな?」「廉さんのタイプなら美人かな?」「……」「ねぇ、廉さん!どんなヒトですか?」興味津々の2人の瞳が期待いっぱいで廉を見つめる。「……あ〜」2人の勢いにおされて少しばかり身を退く。視界の端にブラウンのウサギが入る。廉の脳裏にウサギのぬいぐるみを手にした春陽の笑顔が浮かんだ。「「……!」」一瞬、廉の口元が僅かに綻んでその瞳ははじめてみた優しさと色気がまざり合い、目にしたスズカとニイナは顔を赤く染めた。ドキドキ、ドキドキ。2人の鼓動がはやまる。「何、何、何!?今の廉さん!」「廉さんがマジで恋?!」「「っていうか!私が廉さんに恋する!」」2人は同時に心の中で叫んだ。「そろそろ店開けるからもうこの話は終わりだ。ちゃんと仕事してくれよ」廉が時計を確認するとすでに17時まであと5分をきっていた。2人に注意する。「はーい」2人は素直に返事をした。17時、この日もウィルモットは普段と変わらない夜の営業をはじめた。お風呂からあがり髪を乾かすと桜を抱っこして自室に戻る。と、ちょうどスマホが鳴る。発信者をチラッと確認するとスマホの画面に「舞ちゃん」と発信者の名が出ていた。桜をベビーベッドへ寝かせて通話ボタンを押した。

  • 秘密の花   ぬいぐるみの贈り物

    光瑠に連れられてペンギンやカピバラ、猛禽類もみてまわる。たどたどしくも一生懸命に説明してくれる光瑠が可愛くて春陽とゆり子はその話をきちんと聞いていた。「水族館も行こう」と言うので春陽は頭に魚が泳ぐ水槽を思い描いた。「中は暗そうだから桜とここで待っているわね」と言いベンチに腰をおろしたゆり子を残して3人で水族館の中へ入った。「……!」春陽はすぐさま心の中で悲鳴をあげた。「キオビヤドクガエルって言うんだよ」光瑠が指差した先には鮮やかな黄色と黒の蛙がいた。「光瑠くんは蛙も好きなの?」気力で笑顔を作ってみせる。「5歳の誕生日に図鑑を買ってあげたら何故か爬虫類両生類図鑑が気に入って凄い速さで覚えちゃったんだよね。この水族館も何度か来たみたいだからここにいるモノは覚えたみたいでさ」「ここにはねワニもいるよ」「……ワニ」「みに行こう」引っ張る光瑠に抵抗もできず、なされるがままに春陽は足を進め続ける。「大丈夫?」「大丈夫ですよぉ」数種類のトカゲ達に囲まれながらも必死にカチカチの笑顔を保っている。「こんなに丁寧に説明してくれているからちゃんと聞いてあげないと」「お姉ちゃんも嫌いなの?」春陽の様子に光瑠が気づく。「ママもあーちゃんも、女の子はみんな蛙や蛇が嫌いでキャーキャー叫ぶんだ」「き、嫌いではないよ。苦手ではあるけど……」「お姉ちゃんは嫌いじゃないの?」光瑠は不安そうに聞いた。「渡辺さん、無理しなくていいよ」廉は心配して言った。「大丈夫、触れって言われたら流石に悲鳴あげるかもしれないけど。見てれば可愛いコもいるし……」 実際、色にはビックリしたけれど蛙は中々可愛い顔をしている。光瑠は無理に引っ張る事をやめ「あっちの水槽にはカクレクマノミがいるよ」と春陽の様子をうかがう様に手を握って言った。「カクレクマノミって映画になった魚ね。オレンジ色の」「僕も映画観たよ」「本物がいるの?」「いるよ、あっちに」春陽も繋いだ手に力を入れる。「正木さん、カクレクマノミ観に行きましょう」「あぁ」今度は3人並び歩いてカクレクマノミのいる水槽へ向かった。広さはないが満足度の高い水族館を堪能して外に出る。ベンチではゆり子が桜に飲み物を与えていた。「やっと戻ってきたのね、楽しかった?」「だいぶ待たせてしまってすみません」廉が慌

  • 秘密の花   いい感じじゃない

    「何、このサル」駆け寄り、蓮の足にしがみ付いた男の子は桜を見て言い放った。「こら、そんな言い方しちゃダメだろ」廉が男の子の頭を軽くポンと叩きながら注意する。「……だって、サルみたいじゃん」それでもボソッと言った言葉に廉はため息をついた。「ごめんね、最近反抗ばかりなんだコイツ」「コイツじゃない!正木光瑠(まさきひかる)だよ!」男の子が名乗る。「光瑠は兄の子なんだ。今日の午後までこの子の面倒をみるために店は休みにしてあるんだ」「そうだったんですか。……それにしても、こんな場所で会うなんて凄い偶然ですね」花塚の何処かでならば買い物中など偶然会う事もあるだろうけど、まさか遠くないとは言え県外の動物園で会うとは思わなかった。「兄の家がこの近くなんだ。家に戻る前に動物園へ行きたいって言うから連れて来たんだけど、渡辺さんは?」「私は車がきたので祖母を誘ってドライブに来たんです。祖母がこの動物園をリクエストしたので」「渡辺さんが運転してきたの?」「はい、初めてのドライブでドキドキでしたけど」「無事に免許はとれたんだね」春陽が舞と共にウィルモットへ行ったのはまだ教習所へ通っている時だった。「はい、やっと自分でも自由に動けそうでワクワクしてます。今日はその1日目ですね」「確かに、車がないと不便だからな」駅周辺に住んでいるとはいえ、花塚では電車で何処かへ行けるとかバス路線が沢山ありバスが頻繁に走っているわけではない。したがって花塚辺りに住む人は高校卒業と共に免許を取り車を買うという車社会だった。「そうですね、桜がいて不便だと実感しました」ハハっと笑いながら話をしていると。「ねー、早くライオンの所に行こうよ!」飽きてきた光瑠が廉のズボンを引っ張り催促した。光瑠の邪魔をしないように「それじゃあ」と春陽はゆり子と桜の元へ足を向けたが。「あ」廉の手が春陽の手首を掴んだ。「よかったら、少し一緒に回らない?」「……」まさかの申し出に春陽は困惑してゆり子の方を向いた。「私は別に構わないわよ、賑やかになるのは歓迎よ。光瑠くんさえよければ」大人達を見上げている光瑠にゆり子は「一緒にいてもいい?」と聞いた。「おばちゃん達と観るの?」「光瑠くんがよかったらね」光瑠はゆり子と春陽を交互に見上げベビーカーの桜を覗き込むと少しばかり考え。「

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status