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第15話

Author: 春うらら
「構わないよ。好きに投稿すればいい」

玲奈は心の中の狂喜を抑え、目を伏せて「わ……わかった」と答えた。

涼介の唇には笑みが浮かんでいたが、その目の奥には冷たい光が宿っていた。

結衣がどうしてもちょっかいを出したいというのなら、別に構わない。

「別れ」という言葉が、涼介にとっては何の脅威にもならないということを、結衣にしっかりと思い知らせてやるまでだ。

……

結衣はとても長く、深く眠った。目が覚めたのは、もう夜の八時過ぎだった。

結衣は起き上がって身支度をし、服を着替えて散歩に出かけることにした。ついでに何か食べものも見つけようと思った。

モルディブの夜景は息をのむほど美しかった。無数の星が、まるで砕いたダイヤモンドのように漆黒の夜空に散りばめられ、海面に映るきらめきと照り映えている。

足元の砂浜はとても柔らかく、一歩踏み出すたびに、まるでビロードの絨毯を踏んでいるかのように心地よかった。

波が静かに打ち寄せ、砂浜を覆い、またゆっくりと引いていく。まるでレースの縁飾りのような水の跡を残して。

爽やかな潮風が顔を撫で、結衣の口元には無意識のうちに笑みが浮かんだ。重苦しい気分はすっかり消え去って、足取りもずいぶん軽やかになった。

レストランへ向かう途中、砂浜でプロポーズに成功したカップルに出くわした。男は感激して女を抱きしめながら、くるくると回っている。

周りで見ているのは彼らの友人たちらしく、皆が歓声を上げていた。

結衣は足を止め、人だかりの中で抱きしめ合う二人を見つめた。羨ましいと思うと同時に、胸の奥が不意にきゅっと締め付けられるような切なさを感じた。

涼介が事業で成功した後、結衣は彼が自分にプロポーズしてくれる場面を何度も想像した。しかし、最終的に待ち受けていたのは、彼の浮気だった。

結衣は深呼吸し、それ以上考えるのをやめて、目を伏せて足早にその場を去った。

しかし、気持ちはやはり影響されて、その後はもう夜景を楽しむ気分にはなれなかった。

十数分後、結衣はあるレストランに入った。

適当にいくつかの料理を注文し、結衣はメニューの最後のページをめくった。そこにはアルコール類が並んでいた。

結衣の視線が一瞬止まり、少し迷った末、赤ワインを一本注文した。

自分がお酒に弱いことを知っていたので、結衣はあまり多くは飲まず、グラスに二杯ほ
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Mga Comments (3)
goodnovel comment avatar
長野美智代
クズカップルはほおっておきましょう。 頑張ってきたご褒美に暫くはユックリしよう。 夜に一人でさんぽ?狙って下さいと言っているようなもの。傷心なのはわかるけど自分の身を守らないと。
goodnovel comment avatar
gulfstream1220
面白い!!続き楽しみすぎる!
goodnovel comment avatar
鈴木千裕
ドキドキする!続きが楽しみ
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