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第9話

Author: 朝焼けのブタさん
昭彦の顔から血の気が引いた。

彼は手を伸ばし、私のスカートの裾を掴もうとした。

私は汚いものを見るような目で、半歩後ろへ下がった。

「あなたが今日ここへ来て土下座して許しを請うのは、私のことを愛しているからでもなければ、ましてや娘を愛しているからでもないわ。

あなたはただ、自分の『支配者』としての立場が崩れた事実を受け入れられないだけよ。

自分が道具のように扱ってきた『付属品』に、逆に捨てられたという屈辱に耐えられないだけよ」

私は彼を冷たく見下ろした。

「父親の愛だなんて、吐き気のするような言葉を盾にしないで。

結局のところ、あんたが愛しているのは自分自身だけよ」

ちょうどその時だった。

悠真がビルから出てきた。

この光景を見ても、彼は少しも怒らなかった。

極めて自然な足取りで近づき、温かいコーヒーを私の手の中へそっと持たせてくれた。

そして、穏やかな声で昭彦に告げた。

「高瀬さん。手遅れになった愛なんて、路傍の石より価値がないんですよ。

志穂さんは今、とても幸せです。

ですから、あなたのそんな遅すぎた愛などもう必要ありませんよ」

私はそのまま自然に
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    昭彦の顔から血の気が引いた。彼は手を伸ばし、私のスカートの裾を掴もうとした。私は汚いものを見るような目で、半歩後ろへ下がった。「あなたが今日ここへ来て土下座して許しを請うのは、私のことを愛しているからでもなければ、ましてや娘を愛しているからでもないわ。あなたはただ、自分の『支配者』としての立場が崩れた事実を受け入れられないだけよ。自分が道具のように扱ってきた『付属品』に、逆に捨てられたという屈辱に耐えられないだけよ」私は彼を冷たく見下ろした。「父親の愛だなんて、吐き気のするような言葉を盾にしないで。結局のところ、あんたが愛しているのは自分自身だけよ」ちょうどその時だった。悠真がビルから出てきた。この光景を見ても、彼は少しも怒らなかった。極めて自然な足取りで近づき、温かいコーヒーを私の手の中へそっと持たせてくれた。そして、穏やかな声で昭彦に告げた。「高瀬さん。手遅れになった愛なんて、路傍の石より価値がないんですよ。志穂さんは今、とても幸せです。ですから、あなたのそんな遅すぎた愛などもう必要ありませんよ」私はそのまま自然に悠真の手を握って、指を絡め合わせた。この1年で一番晴れやかな笑顔を向けてみせた。 「悠真が言った通りよ。あの時、あんたが私を捨ててくれたことに感謝してるわ。おかげで私は、本当に信頼できる人に出会えたの」しっかりと繋がれた手と、私の瞳の奥に宿る光を見て昭彦はようやく悟った。 自分がどれほど痛切に後悔してみせたところで、今の私たちの幸せの前では、塵ほどの価値すらないのだと。彼がすがっていたちっぽけなプライドは、私の拒絶によって跡形もなく砕け散った。昭彦はよろめきながら地面から立ち上がった。全身の力が完全に抜け落ちてしまったようだった。彼は空を見上げ、狂ったように高笑いを続けた。だが突如として、その口から真っ赤な血が吐き出された。冷たい風の中、彼はそのまま真っ直ぐに倒れ込んだ。半月後。病院のベッドで目を覚ました昭彦は、ついに諦めた。彼は欠席判決が下される最終期限の直前に、ようやく離婚届と財産放棄に関する合意書にサインをした。 彼には分かっていた。これ以上執着すれば、奈々の中にある彼との思い出のすべてが、激しい嫌悪へと変わり果

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