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第550話

Auteur: 藤原 白乃介
晴臣はここまで来て、ようやく母の意図を理解した。

彼女は狂ったふりをしていたのだ。目的は、晴臣のそばに戻ること。

晴臣は大きな手でそっと母の頭を撫でながら、優しく問いかけた。

「母さん……何か思い出したの?」

奈津子はすでに涙で言葉にならず、必死で感情を抑えていた。

そして、震える声でこう言った。

「晴臣……智哉と麗美は私の子なの。あなたの実の兄と姉よ……」

その言葉を聞いた瞬間、晴臣の目に涙が浮かんだ。

やはり佳奈の推測通り、母こそが本物の玲子だったのだ。

彼は奈津子の涙を拭いながら、落ち着いた声で言った。

「母さん、今は状況が緊迫してる。あの家政婦はいつ目を覚ますかわからない。長く話してる時間はない。当時、何が起こったのか教えて」

奈津子は何度か鼻をすすった後、静かに語り始めた。

「あなたの父さん、征爾と浩之と私は大学の同級生だったの。学生の頃から浩之は私のことが好きだったけど、私はもう征爾と付き合っていたから、彼の想いを断ったの。それが原因で、彼はずっと私を恨んでた。自分が障害者だから私に拒まれたと思い込んでね。

その後、私は征爾と結婚して、麗美と智哉が生まれて……そしてあなたをお腹に宿したの。家族みんなで、あなたの誕生を楽しみにしていた。

でも……ある日、美容院で施術を受けてる最中に、突然意識を失ってしまって……目が覚めたら、そこにいたのは浩之だった。

彼は無理やり私を自分のものにしようとした。私が拒否したら、熱湯を顔にかけてきたのよ……。

それだけじゃない。彼は私に偽の玲子が高橋家で暮らしている映像を見せてきた。自分の家も、家族も、すべてが奪われてるのを見て……私はもう、壊れそうだった。

顔は焼けただれて、声帯も傷ついて……たとえ逃げ出して征爾に会えたとしても、私が本物の玲子だなんて、誰も信じてくれない。

それから私は監禁されて、食事も与えられなかった。でも、お腹の中のあなたのために、私は生きなきゃって……必死で耐えた。

ある日、見張りが寝ている隙に、私はこっそり逃げ出したの。でも、戻ってきたら捕まって、倉庫に連れて行かれた。焼き殺されそうになったのよ……。

それを仕組んだのは、高橋家の執事・忠義だった。私が彼の横領を知ってしまったから。偽の玲子もその秘密を握っていて、彼を手駒にしてたの。

私はその時、通りすがりの
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