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第14話

Author: シチリア
凛々に会いに行く途中、辰一は再会の場面を思い描かずにはいられなかった。

凛々が彼を見たら、喜ぶだろうか?

彼は凛々にずっと会っていなかった。本当に彼女に会いたかった。

目的地に着く直前、辰一は二人の結婚指輪を取り出し、手の中で大事に撫でていた。

あの時、海外でデザイナーに指輪を注文した時、彼は本当に凛々と結婚できることを願っていた。

もし彩羽が突然戻ってこなければ、きっと彼らは幸せだっただろう。

そのことを思い出しながら、辰一は涙を指輪にこぼし、さらに強く握り締めた。

今、カスタムメイドの指輪はこの一つだけだ。彼はこれをもう失うわけにはいかなかった。

やっと目的地に着いたが、辰一は途方に暮れてしまった。

凛々の航空券の行程は分かっても、彼女がどこにいるのか全くわからなかった。

街は大きすぎて、どうやって凛々を見つければいいのか分からなかった。

突然、空港の外にある出迎えの横断幕を見て、彼はひらめいた。

凛々は家で文献を読んでいる時、突然悠里から電話がかかってきた。

「凛々、空港で誰かが君に告白してるよ。君が行かないとその人も離れないって言ってる」

電話が終わると、凛々は動画を受け取った。

動画の中で、辰一は着ぐるみを着て、前には一面の花畑が広がっていた。

「凛々、お前がどこにいても、必ず見つけ出す。過去の傷を一生かけて償うから!

彩羽はもう解雇した。これからは二人の間の障害にはならない。

ずっとここで待ってる。お前が会いに来るまで」

この出来事は数時間で大騒ぎとなった。ネット上では議論が巻き起こった。

多くの人は辰一に告白されたヒロインを羨ましがっている。

ただ、凛々だけは今の状況に頭を抱えている。

辰一は一日中待ち続け、足は痺れてしまった。

多くの変な視線を浴びたが、彼はそれでも諦めなかった。

彼の凛々は一番心が優しい人だから、きっと彼のもとに来てくれるはずだ。

そう考えた時、彼の視線に見覚えのある姿が現れた。

凛々だ!

辰一はぎこちなく走り寄り、言葉を発する前に涙が溢れ出した。

「凛々、本当に会いたかった」

彼が長い間思い続けていたその人を見て、辰一は無意識に凛々を抱きしめようとしたが、彼女は避けた。

辰一は戸惑いながら凛々を見つめた。

「車に乗って。ここで皆の笑い者になるのは嫌よ」

凛々はそう言っ
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