Partager

第1065話

Auteur: 純
結果として、奴のその場しのぎの作戦は無残に失敗に終わった。

「また、奴の秘書もすでに警察に拘束されました。共犯として、数年の実刑判決は免れないでしょう」

雅也の表情には一切の動揺もなく、冷え切っていた。

「分かった。水瀬律には、二度とシャバの空気を吸わせるな。最も重い罪を被せて、一生刑務所の底で腐らせろ」

「かしこまりました、社長」

恭平が車を発進させようとしたまさにその時、社長室から緊急の連絡が入った。

展望技術の応接室に、泰造が、怒り心頭の様子で乗り込んできているというのだ。

雅也が本社に戻り応接室に入ると、ソファに座る泰造は彼を睨みつけ、冷笑を放った。

「桜井社長。ご無沙汰しております」

雅也は片眉を上げ、余裕の笑みを浮かべて向かいのソファに腰を下ろした。

「これは藤堂会長。わざわざご足労いただき光栄だが、本日はどのようなご用件で?」

泰造は鼻を鳴らした。

「我が家のあの愚かな孫娘が、自社の株式の真の価値も理解できず、あろうことか手持ちの10%もの株をたった十億円という破格の安値であなたに売り渡したそうですね。今日は、その件の始末をつけに参りました」

「
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1217話

    ジョージが到着すると、沙弓はすぐに命じた。「ジョージ。ブライアンが南部へ行く。あなたも同行しなさい」それを聞き、ジョージの目に驚きが過った。「マダム。ブライアン様が南部へ行かれて、何をされるおつもりでしょうか?」「以前、南部で購入したあの土地が駄目になった。だから、早急に代わりの土地を見つけなければならない。この子は南部の勢力図に疎いから、一緒に行ってちょうだい。どの勢力も怒らせないよう気をつけて。もし半月経っても目ぼしい土地が見つからなければ、すぐに二人で戻るのよ」ジョージは頷いた。「かしこまりました。それでは、すぐに出発の準備に取り掛かります」「ええ。明朝のフライトを手配しておくわ」「承知いたしました」ジョージが退出した後、ブライアンも自室へ戻り、荷造りを始めた。昼食後、ブライアンはジョージと共に空港へ向かった。その日の午後、楓がカージェイへ出社するなり、ジェニーが歩み寄ってきた。「社長。デザイナーからオフィス改装のパース図が上がってきました。お気に召すデザインがあるかご確認いただけますか?もしなければ、再度デザインをやり直させます」楓はパース図の束を受け取った。「ええ、後で目を通しておくわ」社長室に入った楓は、数枚のパース図を見比べ、一番気に入ったデザインを抜き出してジェニーを呼んだ。「私はこれが気に入ったわ。このデザインで進めてちょうだい」ジェニーはデザインを確認し、頷いた。「かしこまりました。ただ、改装工事には半月ほどかかりますので、その間は隣の会議室を仮オフィスとしてお使いいただくことになります」「ええ、構わないわ。今日からそっちへ移動した方がいいかしら?」「はい。午後から業者が採寸等に入りますので、今すぐお移りいただいた方がよろしいかと存じます」「分かったわ。荷物も少ないし、すぐ移動するわ」「かしこまりました、社長」ジェニーの案内で隣の小会議室へ移動した。会議室とはいえ、ちょっとしたオフィスと遜色ない設備が整っていた。ジェニーは処理すべき書類の山をデスクに置き、楓に告げた。「社長、半月ほどこちらでご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします」「ええ。今日はこの書類に目を通す以外に、何か予定は入っている?」ジェニーは少し考えてから答えた。

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1216話

    琉生にこれ以上助ける気がないと悟り、ブライアンは鼻で笑った。もう彼にすがるのは無駄だと見切りをつけたのだ。「分かったよ。今日のその言葉、絶対に忘れないからな。お前が俺たちを見捨てるって言うなら、これからお前は俺の敵だ!」言い捨てるなり、ブライアンは立ち上がって荒々しく立ち去った。彼が去っていく背中を見送りながら、琉生は首を横に振って深くため息をつき、寝室へと向かった。沙弓たちがこれからどうなろうと、自分には一切関係ない。もう二度とあの連中の泥沼には関わらない。琉生の家を怒り心頭で飛び出したブライアンは、そのまま邸宅へ戻った。琉生が手引きしてくれない以上、南部の土地の問題を解決する妙案など、今の彼には思いつきようもなかった。……本当に、俺が直接ブマード一族に頭を下げに行くしかないのか?しかし、その考えはすぐに打ち消された。今更ブマードの連中があの土地を返してくれるわけがない。仮に返すとすれば、間違いなく足元を見て、法外な天文学的数字を吹っ掛けてくるに決まっている。そう考えると、ブライアンの目つきは暗くなった。その夜、邸宅で楓以外の者たちは皆、よく眠れなかった。翌朝、朝食を終えたブライアンは、沙弓の後に続いて書斎へ入った。「お母様。俺、自分で南部へ行って、前と同じくらいの広さの土地が見つかるか確かめたいんだ」沙弓は眉をひそめ、一刀両断に切り捨てた。「駄目よ。南部の勢力図には詳しくないでしょう。手を出してはいけない土地もあるの。万が一、向こうの誰かを怒らせたら、金では解決できないわ」ニックファミリーとブマード一族は長年争い、互いを押さえつけようとしてきたが、それでも度を越した真似はしてこなかった。だが、南部の勢力はニックファミリーとは大した利害の結びつきがない。むしろ、ニックファミリーが南下してくれば、彼らの利益が脅かされる。だからこそ、南部の土地を一つ確保するだけでも、一年以上もの歳月を要したのだ。そんな状況下でブライアンが乗り込めば、不用意に地元のどこかの勢力を怒らせるおそれがある。彼らはブマードのように、捕らえた相手を材料に交渉などしてくれない。もし捕まれば、命に危険が及ぶかもしれなかった。「でも、お母様は今ここに残ってニックファミリーの混乱を鎮めなきゃならない。南部へ動けるのは俺しかいない

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1215話

    ……忌々しいブマードの連中め!考えれば考えるほど、ブライアンには怒りが込み上げてきた。絶対に、この屈辱の代償を支払わせてやる!だが、復讐を果たすためには、まず今の最悪の状況を打開しなければならない。悩みに悩んだ末、彼は琉生に助けを求める電話をかけた。「……琉生兄さん。頼む、助けてくれ」電話の向こうから、琉生の氷のように冷淡な声が響いた。「悪いが、俺はお前を助けられない。俺自身が今、窮地に立たされているんだ」沙弓が一族もろとも縁を切ると宣告して以来、琉生の父は彼に対し、今後は親子の縁を切る、お前など息子ではないと絶縁を言い渡したのだ。今の琉生は、誰からも忌み嫌われるドブネズミのように、孤立無援の状態だった。「琉生兄さん!今回ばかりは本当に絶体絶命なんだ!兄さん以外に、頼れる人間がどこにもいないんだよ!」「俺にはどうすることもできないと言っている」言い捨てるなり、琉生は一方的に通話を切った。ブライアンが何度かけ直しても、すでに電源が落とされており繋がらなかった。彼は怒りに任せて携帯をベッドに叩きつけ、苛立たしげに部屋の中を歩き回ったが、解決策の糸口すら見つからなかった。最終的に、彼は執事を自室に呼びつけ、現在琉生がどこに滞在しているか調査させ、直接彼に会いに行くことに決めた。執事は顔をしかめた。「ブライアン様。もし奥様が、あなたが琉生様に会いに行ったと知れば、間違いなく激怒されますよ」「お母様がどう思おうと関係ない!俺はどうしても琉生兄さんに会わなきゃならないんだ。いいから俺の言う通りに探せ。すべての責任は俺が被る!」少しの躊躇の後、執事はブライアンの指示に従うことにした。彼自身も、沙弓と琉生が和解してくれることを心から望んでいたからだ。琉生の助けがなければ、沙弓は様々なことを進めにくくなり、人に非難される口実も与えかねない。一時間後。ブライアンは琉生の滞在する邸宅の門前に立ち、インターホンを押した。琉生はモニター越しにブライアンの姿を確認すると、顔をしかめて無視を決め込み、寝室へ戻った。しかし、ブライアンは彼が在宅していると確信しているのか、延々とインターホンを鳴らし続けた。その騒音のせいで、琉生は全く眠ることができなかった。三十分以上も騒音に苛まれた末、琉生はついに諦め、

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1214話

    もしかすると、ブライアンがバーでブマードの人間と喧嘩になったこと自体、奴らが最初から仕組んだ罠だったのかもしれない。沙弓は暗い表情で、執事にブライアンを呼びに行かせた。十数分後、ブライアンが怯えきった様子で書斎へ入ってきた。「お、お母様……」沙弓は氷の刃のような目で彼を睨みつけた。「お前があの日、ブマードの連中と衝突した時の状況を、一から十まで正確に話しなさい」ブライアンの顔色が変わった。彼はオドオドと沙弓の顔色を窺った。「お母様、どうして急にそんなことを……何か問題でも起きたのか?」「質問に答えなさい!」沙弓の厳しい眼差しに怯え、ブライアンは慌てて口を開いた。「あの日、お母様と喧嘩になった後、むしゃくしゃして一人でバーへ飲みに行ったんだ。そこで……ある女と知り合って、何本か酒を空けた後、二人でホテルへ行こうと思って席を立とうとした瞬間、ブマードの男が現れて……」「つまり、お前は初対面の女を巡ってブマードの連中と揉め、喧嘩になったというわけね?」ブライアンは「うん」と力なく頷き、沙弓の顔を直視できずにうつむいた。沙弓は腹の底から絞り出すように冷笑を漏らした。「……お前、本当に脳みそが空っぽのアホね!自分が罠に嵌められたことすら気づいていないの!?」その女は明らかにブマードの者とグルだった。ブライアンが罠にかかったところで一族の男が姿を現し、わざと彼を挑発して、かっとなって手を出すよう仕向けたのだ。そして、ブマードの者たちはそのままブライアンを連れ去った。自分が一年以上もの間、苦労を重ねてようやく手に入れた南部の土地が、この底抜けの馬鹿のせいでブマードの手に渡ってしまったのだ。それを思うと、沙弓は怒りで頭に血が上った。彼女はデスクの上の分厚いファイルを掴み、力任せにブライアンの顔面に向かって投げつけた。「今すぐここから消え失せなさい!二度と私の目の前に現れるな!」ファイルの鋭い角がブライアンの額に当たって傷ができ、鮮血が流れ出した。だが、ブライアンは血を拭うことすらできなかった。自分がとんでもない過ちを犯したと悟ったからだ。もしここで沙弓に完全に見捨てられれば、自分がニックファミリーを継承する道は永遠に閉ざされてしまう。彼は慌てて歩み寄り、沙弓の前にひざまずいた。「お母

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1213話

    楓は沙弓を真っ直ぐに見据えた。「あなた、約束を忘れたの?私がいつでも自由に父に会いに行けるようにするって言ったわよね。また前言を翻すつもり?」沙弓は少しの間沈黙し、やがて低い声で言った。「退社後に会いに行くのは構わないけれど、勤務時間中に行くのは駄目よ」「いいわ。じゃあ明日の夜に行く」言い捨てるなり、楓は踵を返して書斎を出た。彼女の後ろ姿を見送る沙弓の瞳の奥で、冷たい光が閃いた。ブーッ、ブーッ。その時、デスクの上の携帯が激しく震えた。画面に「クレッグ」の名が表示されているのを見て、沙弓はすぐに応答した。「クレッグ。こんな時間にどうしたの?」電話の向こうから、絶対零度の冷酷な声が響いた。「沙弓。お前が南部のあの土地を、ブマード一族に売り渡したという噂を耳にしたんだが……まさか、事実ではないだろうな?」沙弓は携帯を握る指先に力を込め、声を潜めた。「……それをどこで聞いたの?」「どこで聞いたかなど些末な問題だ。沙弓、お前は今すぐあの土地を買い戻さなければならない。もしそれができないなら……私は金輪際、お前を支持しない!」クレッグがこれまで沙弓をニックファミリーのトップとして支持してきたのは、彼女がニックファミリーの本拠地を南部へ完全移転させると確約したからだ。ファミリーの南下は、内部の多くの実力者たちが長年抱き続けてきた念願だった。現在彼らが拠点を置くのはM国の北部で、経済の発達した南部とは比べ物にならなかった。ニックファミリーがさらに勢力を伸ばすには、南部へ移転するしかなかった。彼らが一年以上かけて、ようやく手に入れた南部の土地。これから新本拠地の計画を立てるはずだったというのに。それを、この女が自分の底抜けの馬鹿息子の尻拭いのために、宿敵のブマード一族に売り飛ばしただと!?その事実を知った瞬間、クレッグははらわたが煮えくり返るほどの憤怒に駆られた。沙弓の目つきが険しくなった。「クレッグ。一度手放したあの土地を今から買い戻そうとすれば、ブマードの奴らは間違いなく法外な天文学的数字を吹っ掛けてくるわ」「そんなことは知ったことか!私はあの土地が手元に戻ればそれでいいのだ。もしあの土地を取り戻せないなら、私だけではない、これまでお前を支持してきた連中全員が、ただちにお前を見限るだろうな

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第1212話

    「デイジーお嬢様」背後から執事の声が聞こえ、デイジーは怒りを押し殺して振り返った。「どうして私の食事を残しておいてくれなかったの!?」デイジーの理不尽な癇癪にとうの昔に慣れ切っていた執事は、淡々と答えた。「お嬢様。奥様は、お嬢様がお食事をとられないと知ると、残った料理をすべて処分するよう命じられました。お腹が空きましたら、クッキーなどを召し上がってください。明日の朝には朝食がございます」「明日の朝食ですって!?」デイジーが信じられないというように目を見開くと、執事は無表情で頷いた。「はい。明日の朝です」デイジーは鼻で笑った。「……そう、分かったわ」あの女がこの家に来てからというもの、私には一日たりとも心安まる日がない!何としてもあの女を追い出す方法を考えなければ。一方その頃。楓は雅也と会話を交わしている最中に、不意にくしゃみをした。「どうした?風邪がぶり返したんじゃないのか?今日は薄着すぎる」楓は彼を横目で軽く睨んだ。「私がこの服で現れた時、目を釘付けにしていたのはどこの誰だったかしら?」「確かに、そのドレス姿の君は息を呑むほど美しい。だが、こんな薄着では体を壊す。明日はもっと暖かい格好をしてくれ」楓は素直に頷いた。「ええ、分かったわ……そうだ、今は沙弓に言われてカージェイで働いているの。中核となるチップの研究開発には一切関わらせてもらえないけど、それ以外の業務にはほとんど干渉してこないわ」雅也は目を伏せ、少し思考を巡らせてから口を開いた。「今のところ、君から積極的に動く必要はない。彼女の指示通りに動いていればいい。楓、心配するな。必ず俺が君を本国へ連れて帰る」「ええ。もし私に手伝えることがあるなら、何でも言ってちょうだい。できることなら何でもやるから」「ああ、分かっている」二人はさらにしばらくの逢瀬を楽しんだ。約束の時間が迫り、雅也は名残惜しそうに楓を送り出した。彼女の細い背中を見送る雅也の拳が、無意識に強く握り締められた。これ以上長く、彼女を沙弓のそばに置いておくつもりはない。邸宅に戻った時、時計はすでに夜の八時を回っていた。エントランスに入るなり、執事が近づいてきて、沙弓が書斎で待っていると告げた。楓は眉をひそめ、不承不承書斎へと向かった。「沙弓

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第5話

    雅也は屋敷を出る準備をしながら、ふと車窓の外へ目をやった。雨の向こう、門のそばの石壁に身を寄せている楓が見える。ドレスはすっかり濡れて体に張りつき、無防備に体のラインを浮かび上がらせていた。長い髪は水を含んで頬に垂れ、ひどく心細そうに見える。――なるほど。雅也はすぐ状況を察した。麗子や雪乃の性格はよく知っている。気に入っていない義理の姪に、わざわざ送迎など手配するはずがない。助手席の秘書の恭平(きょうへい)へ目を向ける。「降りろ。傘を差してやれ」恭平は即座に足元の黒い傘を掴み、雨の中へ出ていった。雅也は窓を下ろす。「乗れ」低い、命令口調。「家まで送る」楓

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第4話

    雅也のどこ吹く風という態度に、麗子はこめかみを押さえた。頭痛が増したようだ。小さく首を振り、それから視線を大輔と楓へ向ける。「結婚して、もう三年になるのよ」穏やかな口調を装ってはいる。けれど言葉の刃は隠せていない。「子どもはいつ?ひ孫の顔を見るのを楽しみにしているのだけれど」その話題が出た瞬間、リビングの空気がぴんと張りつめた。楓は無意識にティーカップを強く握り、指の関節が白くなる。――いちばん触れられたくない話。口にされるたび、胸の奥をえぐられる。そこへ、大輔の叔母・雪乃(ゆきの)が身を乗り出した。「楓。大輔と結婚して三年よ?」薄く笑いながらも、声の端には

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第3話

    吐き気が一気に込み上げ、楓は息を詰めた。首元に手を伸ばしてネックレスを外し、そのまま迷いなく寝室のゴミ箱に投げ捨てる。ダイヤが金属に当たった音がした。楓はその足で客用バスルームに飛び込み、シャワーを全開にした。熱い湯が肌を刺す。でも、そんな痛みはどうでもいい。ボディソープを掴み、首元から身体まで必死に洗い続ける。大輔の痕跡を、触れられた記憶を、全部流し去りたかった。肌が赤くなってヒリつくのに、まだ汚れている気がした。あのネックレスが、別の女の首にかかっていた――それだけで胃がひっくり返りそうになる。想像してしまう。昨夜、大輔のそばで笑っていた女。そして、さっきまで自分に向け

  • 縁が逆転~元カレの叔父が夫~   第2話

    楓は家に戻ると、そのままリビングのソファに沈み込んだ。スマホの画面には、さっきかけた番号がまだ残っている。怒りと悲しみが少し引いたぶん、現実がじわじわ押し寄せてきた。離婚するなら、まずは自立しなきゃいけない。――でも、父の治療費。今、毎月の医療費は全部大輔が出している。月に600万円。とてもひとりで背負える額じゃない。楓は指先を震わせながら連絡先をスクロールした。そして、ある名前で手が止まる。安藤教授。大学院時代の指導教官だった人。迷う時間はなかった。楓は通話ボタンを押した。「もしもし……安藤(あんどう)教授ですか?私です。木村楓(きむら かえで)です」落ち着い

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status