Compartir

第571話

Autor: 青葉凛
宏は、颯馬の顔を真っ直ぐに見て念を押した。

「最近、おばあちゃんはお前を随分と買っているそうじゃないか。お前自身が口添えすれば、おばあちゃんだって母さんを邪険には扱えないはずだ。きっちり役に立てよ」

それは息子の意思を尊重するような頼み事などでは断じてなく、絶対に逆らうことを許さない一方的な「命令」だった。

「僕だって、おばあちゃんに母さんを受け入れてほしいとは思っています。でも、お父さん、少し現実を見てください」

颯馬は眉をひそめ、冷静に反論した。

「戸籍上の奥さんはこの件でずっと腹を立てている。仮に今、おばあちゃんが母さんの存在を認めたところで、結局はお父さんが彼女と離婚しない限り、何の意味もないじゃないですか。

それに、向こうは今海外に逃げて、離婚の話し合いから目を背けている。おばあちゃんに直談判したところで状況が変わるとは思えません」

さらに颯馬は、咎めるような視線を父に向けた。

「おばあちゃんは体調を崩して、最近やっと少し具合が上向いてきたところなんですよ?そんなタイミングでおばあちゃんに心労をかけるべきじゃない。そもそも、なぜ僕に何の相談もなく、急に母さんを
Continúa leyendo este libro gratis
Escanea el código para descargar la App
Capítulo bloqueado

Último capítulo

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第574話

    紫音に本音を打ち明けたものの、颯馬の顔から陰りは消えなかった。祖母がおそらく母を簡単には受け入れないだろうという懸念は、紫音の言葉によって、自分の中でより確信に近いものとなってしまったからだ。父と母の態度はあまりにも強硬だった。どうしても志保を拝島家の「名実ともの嫁」として認めさせたいのだ。母がなぜそこまでその肩書きにこだわるのか、颯馬には理解できない部分もあったが、あの決意の固さを前にしては止めようがなかった。「颯馬くん、そこまで難しく考え込まなくていいわよ」落ち込む颯馬に、紫音は優しく労るような声をかけた。「志津様はすごく分別のある人だし、どんなことでも自分なりのしっかりとした考えを持っていらっしゃるわ。だから、私たちがここでいくら悩んでも仕方ないの。……みんなが落ち着いて誠実に話し合いをすれば、志津様もむやみに感情を爆発させたりはしないと思う」紫音は語りかけるように続けた。「それにね、何十年も前に起きた事実は、もう誰にも変えられない。ご両親がずっと一緒にいたことなんて、志津様だってとっくに受け入れているはずよ」「もし颯馬くんみたいに、お母様が拝島の家にとって迎え入れるべき人だと判断したなら、志津様は必ず認めてくれる。酸いも甘いも噛み分けてきた、あの志津様だもの。ただ、お体が本調子じゃないから、私たちがそこだけ配慮してあげればいい。……だからね、あまり怖がらずに、お父様たちについて行ってあげて」紫音の励ましの言葉に、颯馬の顔に少しだけ安堵の色が浮かんだ。紫音自身、彼がこうして事前に相談しに来てくれたこと自体、律や自分に対する最大限の配慮と敬意だと感じていた。それだけでも、彼が本質的に思慮深い人間だということが伝わってきた。もっとも、自分と律は、正人や宏たちの権力闘争に泥を突っ込む気など毛頭ない。拝島家の内部事情は泥沼のように複雑だ。志津も、本当なら受け入れたくない理不尽な事態をいくつも飲み込んできただろう。しかし、すべては過ぎ去った過去の出来事になりつつある。晩年を迎えた志津が今、最も望んでいるのは、ただ「家族が揉めずに穏やかに過ごすこと」、そして「みんなが少しでも顔を見せに来てくれること」。それだけなのだ。権力や肩書きなど、志津様にとってはとっくにどうでもいい些末なことでしかないのだと、紫音は

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第573話

    颯馬は一つ深い深呼吸をして、真剣な眼差しで紫音を見つめた。「……実は、父が母を連れて帰国したんです。そして今夜、おばあちゃんのところへ母を連れて行くと息巻いていて。おばあちゃんに、自分の妻として正式に認めさせるために」紫音の目が僅かに見開かれる。だが、颯馬はそのまま切実なトーンで言葉を続けた。「僕が一番心配しているのは、おばあちゃんの体調です。この急な話でおばあちゃんがショックを受け、また体を壊してしまわないか……それが恐ろしいんです。だから、どうすればおばあちゃんに負担をかけずにこの事態を乗り切れるか、ご意見を伺いたくて」颯馬はすがるような目で紫音を見た。「こんな込み入った拝島家の事情を、怪我をして療養中の紫音さんに押し付けるべきじゃないことは分かっています。兄さんに直接話すべきだとも思いました。でも、兄さんは今すごく忙しいし、何より、自分の母親の立場を脅かすあの話を、兄さんがすんなり受け入れられるわけがない……本当に万策尽きて、紫音さんに頼るしかありませんでした。勝手なことをして、本当にすみません」颯馬は包み隠すことなく自分の本音と苦悩を吐露し、深く頭を下げた。颯馬から明かされた衝撃の事実に、紫音は思わず言葉を失った。休養を終えたばかりの志津の体調は、やっと上向いてきて、ここ最近は穏やかな日々を過ごせていたというのに。「……颯馬くんが相談しに来てくれたのは、すべて志津様を想ってのことだよね。それに、こんな深刻な話を事前に私へ打ち明けてくれたこと……私を信頼してくれて、本当にありがとう」紫音は慎重に言葉を選びながら口を開いた。「ただ、正直に言うと、私にもいい解決策は思いつかないわ。志津様が颯馬くんのお母さんをすんなり受け入れるかどうか、私には見当もつかないの」紫音は軽く俯いた。律からある程度の事情は聞いているものの、拝島家の長年にわたる深い因縁や確執を自分が完全に理解しているとは思えなかった。「でも、お父様がわざわざ志津様のところへ行くということは、是が非でも認めてもらうという強い意志があるからでしょうし……それに、あれから何十年も経っているんだもの。志津様も、もうとうに心の整理はついているんじゃないかしら」それは紫音自身、思いがけない急展開に戸惑う中で、何とかひねり出した精一杯のフォローだった。「お父様

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第572話

    痛いところを突かれた宏が言葉を詰まらせる中、横から志保が穏やかな声音で割って入った。「颯馬、あなたの言うことももっともね。でもね、私がご挨拶に伺うのは、おばあちゃんにとっても良いことだと思っているのよ」志保はまるで自分たちの行いが正義であるかのように、すらすらと言葉を紡いだ。「お父さんのこの問題が片付かない限り、おばあちゃんだってずっと心のしこりを抱えたままでしょう?私たちが正式に認められれば、おばあちゃんも安心なさるはずよ。皆が揃って、ようやく本当の意味で幸せな『家族』になれるんだから」彼女は真剣な眼差しでそう語った。その底にある正妻の座への執着を、あくまで「家族のため」というきれいな言葉で包み隠しながら。母にそこまで言われてしまえば、息子として返す言葉はなかった。結局、親の暴走を無条件で受け入れるしかない。とはいえ、この件は事前に兄である律に相談しておくべきではないか、と颯馬は葛藤していた。おばあちゃんの気性を誰よりも理解している律なら、どう立ち回るべきか助言をくれるかもしれない。それに現実問題として、律の母親と自分の父親である宏が、今さら復縁する可能性など微塵もないのだ。関係を長引かせるより、早く精算した方がいい。だが、それを律にどう切り出せばいいのか。自分の母が正式な妻としておばあちゃんに認められるということは、すなわち律の母親を拝島家から完全に追い出すことを意味する。律にとって容易に受け入れられる話ではないだろう。だが、自分が黙っていてもどうせすぐに知れ渡ることになる。なにせ自分の父親の性格はよく分かっている。一度口にした以上、あの男は必ず強行するのだ。板挟みになり思い悩んだ末、颯馬は紫音に相談しようと思い立った。彼女は怪我を負い、今はご両親が滞在しているマンションで療養している。仕事にかまけてまだ一度も見舞いに行けていなかったため、見舞いがてらこの件を彼女に伝えておくのが一番波風が立たないかもしれない。そう考えた颯馬は、さっそく京極家へ足を運んだ。インターホンを鳴らすと、出迎えてくれたのは紫音の母・琴音だった。「突然の訪問で申し訳ありません。紫音さんに少しお話ししたいことがあって伺いました。お怪我の具合はいかがかと思いまして……最近仕事が立て込んでおり、なかなかお見舞いにも来られずすみません

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第571話

    宏は、颯馬の顔を真っ直ぐに見て念を押した。「最近、おばあちゃんはお前を随分と買っているそうじゃないか。お前自身が口添えすれば、おばあちゃんだって母さんを邪険には扱えないはずだ。きっちり役に立てよ」それは息子の意思を尊重するような頼み事などでは断じてなく、絶対に逆らうことを許さない一方的な「命令」だった。「僕だって、おばあちゃんに母さんを受け入れてほしいとは思っています。でも、お父さん、少し現実を見てください」颯馬は眉をひそめ、冷静に反論した。「戸籍上の奥さんはこの件でずっと腹を立てている。仮に今、おばあちゃんが母さんの存在を認めたところで、結局はお父さんが彼女と離婚しない限り、何の意味もないじゃないですか。それに、向こうは今海外に逃げて、離婚の話し合いから目を背けている。おばあちゃんに直談判したところで状況が変わるとは思えません」さらに颯馬は、咎めるような視線を父に向けた。「おばあちゃんは体調を崩して、最近やっと少し具合が上向いてきたところなんですよ?そんなタイミングでおばあちゃんに心労をかけるべきじゃない。そもそも、なぜ僕に何の相談もなく、急に母さんを連れて帰ってきたんですか」両親のあまりにも身勝手な行動は、颯馬にとって完全に寝耳に水だった。何より彼の心を支配していたのは、帰国後に接してきた祖母・志津への確かな情だった。ともに行動する中で、颯馬は彼女から多くのことを学び、確かな絆を感じていた。欲深い親族たちに囲まれ、女手一つで巨大な拝島グループを牽引してきた祖母。もし、決して血が繋がっていなくても、あの圧倒的な実力を持つ律が傍で会社を支えていなければ、志津はとっくに重圧で倒れていただろう。その凄絶な苦労の片鱗に触れているからこそ、私欲のためにこれ以上おばあちゃんを苦しめたくないという思いが、颯馬の胸にはあった。だが、そんな息子の切実な思いなど、宏には伝わるはずもなかった。「この件はおれと母さんでもう決めたことだ。お前はただ、おばあちゃんに口添えすればそれでいい」宏は苛立たしげに一蹴した。「おばあちゃんももういい歳だ、いつ何があるか分からないだろう?万が一のことがあってからでは遅いんだよ。おばあちゃんにとっても心残りがないように、母さんの顔をしっかり見せて、自分たちもきちんとした『家族』だとはっきり

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第570話

    宏の言葉を聞いて、正人は内心で舌打ちをした。今、母にそんな生々しい話を切り出して、肝心の会社乗っ取り計画に水を差すことになってはたまらない。「お前の気持ちは分かる。俺だって応援してやりたいさ」正人は本音を隠し、慎重に言葉を選びながら宥めにかかった。「何年も海外暮らしだったお前を、母さんはずっと気にかけていた。口には出さないが、今回帰国して母さんも内心すごく喜んでいるんだ」「俺は兄貴だからな。家族として当然お前の力になってやりたいし、一緒に何とかしてやるつもりだ。……だがな、少し焦りすぎだ。今はまだ、そのタイミングじゃない」正人にとって、この相談はあまりにも唐突すぎた。これが会社の経営権を奪う計画に悪影響を及ぼすのではないかと警戒せずにはいられない。だからこそ、早まって母の元へ行かせるわけにはいかなかったし、自分から口添えする気も毛頭なかった。万が一、母の逆鱗に触れて騒ぎになれば、全てが水泡に帰す。あらゆる利害を天秤にかけ、確実な勝算が立つまでは、絶対に動くべきではなかったのだ。「兄貴、こうして戻ってきた以上、これ以上は待てないんだ」だが、宏は引かなかった。「この問題はもう十分すぎるほど先延ばしにしてきた。実は前回帰国した時にも、母さんに全てを打ち明けて志保をこの家に連れてくるつもりだったんだ。あの時はまず、母さんの顔色を窺おうと我慢したが……」「だからといって、焦ってどうにかなるもんじゃないだろう」正人は語気を強めて遮った。「もしお袋が受け入れなかったら、それこそ逆効果だ。だから今はやめておけと言っているんだ」それでも宏の決意は揺るがなかった。一刻も早くこの問題に決着をつける必要があった。というのも、当の志保自身が痺れを切らし、自ら志津に直談判しかねないほど急かしてきているのだ。志津が孫である颯馬を受け入れたのだから、その母親である自分もすんなり受け入れてもらえるはずだ――そんな都合のいい確信を抱いている志保を止めるためにも、一刻の猶予もなかった。「なら、しっかり作戦を練ったほうがいい。そこまで言うなら、まずはお前自身で母さんの機嫌を窺ってこい」正人は言葉の端々で、明らかにこの件から手を引こうとしていた。宏たちがどうなろうと知ったことではない。むしろ宏が勝手な振る舞いで母の逆鱗に触れ、親族の中で

  • 義妹に溺れる彼を捨て、私は宿敵の妻となる   第569話

    父親の顔が怒りで強張っているのを見て、颯馬は小さく息を吐いた。これ以上正論をぶつけても、父親の怒りを買い、事態が無駄にこじれるだけだろう。颯馬は何も言わず、ただやりきれない表情で深く頭を下げると、そのまま足早に部屋を後にした。建物を出ても、颯馬の心には鉛のような重苦しさがまとわりついていた。どうして父も伯父も、あんな風になってしまったのだろうか。本当に、彼らの目には「金」と「権力」しか映っていないのだろうか。颯馬にとって、今の父親の姿はひどく見知らぬ他人のように思えた。海外で暮らしていた何年間も、宏は本家の話などほとんど口にしたことがなかった。あの異国の地において、自分たち家族は確かに小さな幸せを分かち合い、平穏に過ごしていたはずだ。それなのに、帰国してからの父親はまるで別人のようだ。正人に完全に洗脳されてしまったかのように、目くじらを立てて「会社を取り戻せ、実権を奪え」と呪文のように繰り返すばかりだ。だが、冷静に考えてみれば自明の理だ。仮に望み通り彼らが会社を手に入れたとして、まともに経営を回せるはずがない。グループの業績を伸ばし、発展させるだけの器など持ち合わせていないのだ。おばあちゃんが何よりも望んでいるのは、彼女が一生を懸けて築き上げたこの拝島グループが、これからも正しく成長し続けることだ。こっちへ戻り、おばあちゃんとの時間を重ねるにつれ、颯馬は彼女の深い愛と孤独を少しずつ理解できるようになっていた。鋭く厳しい目を持つ一方で、根底にあるのは誰よりも一族を想う温かい心だった。ただ、不器用で言葉足らずなだけなのだ。父親に対する冷ややかな態度も、決して母親としての愛情が消えたからではない。長年家を飛び出し、自分のもとへ顔を見せようともしなかった息子への「腹立たしさ」と「寂しさ」の裏返しに過ぎない。本当は、誰よりも息子の帰りを待っていたはずなのだ。それなのに、大人たちは誰もその本心に寄り添おうとしない。「兄貴、さっきの颯馬の言葉は気にしないでくれ。ずっと会社に缶詰めで、少し頭が混乱してるだけなんだ。心配いらない、俺が必ず何とかする。あいつにはちゃんと納得させてトップの座を引き継がせるから。これまで話していた通りに進めるよ」「この計画は二人でずっと前から練ってきたんだ。あいつの青臭い一言でひっくり返るようなこ

Más capítulos
Explora y lee buenas novelas gratis
Acceso gratuito a una gran cantidad de buenas novelas en la app GoodNovel. Descarga los libros que te gusten y léelos donde y cuando quieras.
Lee libros gratis en la app
ESCANEA EL CÓDIGO PARA LEER EN LA APP
DMCA.com Protection Status