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第59話

Auteur: 青葉凛
あまりに都合の良すぎる故障だ。紫音は食い下がったが、責任者の男はうろたえながらも頑なに首を横に振るばかりだった。

「困ります、お客様。関係者以外をモニター室にお通しすることは規則で禁じられております」

男の態度は硬化する一方で、システム障害の一点張りを崩さない。

これ以上ここで騒ぎ立てたところで、警備員を呼ばれて終わりだろう。向こうがその気なら、これ以上はどうすることもできない。

紫音はやりきれない思いで首を振り、踵を返した。

店を出て一人、街を歩きながら、紫音は憤りで唇を噛んだ。なぜ、あのような卑劣な真似をした男がのうのうと振る舞い、被害者である自分がこんな屈辱を味わわなければならないのか。向こうは権力に物を言わせ、事実をねじ曲げようとしている。その理不尽さが許せなかった。

一方、湊都のとあるオフィスビルにて。

「拝島社長、京極さんの件ですが……昨夜、トラブルがあったようです」秘書の片桐は、執務室に入るなり律に報告を入れた。

事の顛末を聞き終えた律の表情から、一瞬にして温度が消え失せた。

黒い瞳の奥で、激情という名の氷の炎が揺らめく。それはまさに、全てをなぎ倒す暴風
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