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信じるという光

last update 最終更新日: 2025-10-16 16:26:40

 翌朝。

 鏡の前で髪を整えながら、昨夜の言葉が何度も頭に蘇っていた。

(殿下に選ばれるのは、貴女です。わたしが保証します)

 その声が耳の奥でまだ響いているようで、指先に触れる髪さえ柔らかく輝いて見えた。

 胸の奥に染みついたその一言は、不思議なほどの安心をくれた。

 どれだけ不安でも、グルナ様がそう断言してくださったのなら、間違いない。

 頬が自然に紅潮して、鏡に映る自分の笑顔さえ眩しく感じる。

(これが”ヒロイン”の顔……ちゃんと出来ているわよね)

 自分を確認するように笑ってみせる。

 ほんの数日前までは、同じ鏡の前でため息ばかりついていたのにーー今は違う。

 授業中。

 試験を控えて、周囲の生徒達はみんな緊張した面持ちで教科書に目を走らせている。

 ページをめくる音、ペン先のかすかな擦過音、それらが教室の空気を張り詰めさせているのに、私の胸の内だけは穏やかだった。

(大丈夫……私は選ばれた存在で、ヒロインだから)

 ペンを握る手に自然と力がこもる。

 胸の奥で、昨夜グルナ様が握ってくださった手の温もりがまだ残っているようで、心の奥に小さな光が灯っているのを感じる。

 ほんの数日前までは不安でいっぱいだったのに、今は胸の中に揺るぎない支柱が立っているみたいだった。

「あっ、アプリル……」

「……サフィー、大丈夫? 試験、心配じゃない?」

 授業終わりの廊下で、アプリルが控えめに声をかけてきた。

 その赤い瞳は真剣で、かつて私が頼りにしていた日の温もりを宿している。

 胸の奥に小さな痛みが走るけれど、私は微笑んで、軽く首を振った。

「平気よ。だって、私にはグルナ様がいてくださるから」

 自分でも驚くほど、声がすっと出た。

 その瞬間、アプリルの瞳がわずかに揺れ、何かを言いかけた。

 けれどその声は最後まで聞こえなかった。

 私はもう前を向いていたから。

 背後に残った沈黙が、かすかに背中へまとわりつく。

 試験前夜。

 ベッドに横たわり、月明かりがカーテンの隙間から差し込む中で目を閉じる。

 指先でシーツを握りしめ、ゆっくりと息を吸う。

(大丈夫。殿下に選ばれるのは私。グルナ様がそう言ってくださったんだもの)

 その言葉を唱えるたびに、胸の奥に光が差し込むようで、鼓動が落ち着いていく。

 不思議と眠りは浅くない。

 夢の中でさえ、私の隣に立っているのはグルナ
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