LOGIN「代官さんはお名前は?」「ニクソン=クーラーだぁ」 帳簿に記載されている名前と違いますねぇ。「マーク=ケラーマンと帳簿には記載されていますが?」「そんなのは嘘に決まってるだろう?」 帳簿の捏造。「そうだそうだ!」 質が悪いなぁ。「ベラ、最後に言う事は?」「二度と会う事がないでしょうね」 私ももう関わりたくないわよ。こんな浪費集団。 しばらくすると隣の領から衛兵がやってきて、お父様、お義母様、ベラ、代官(自称ニクソン=クーラー)、あとこの領の衛兵たちがぞろぞろと捕縛されていった。「はぁ、この領の新しい代官はどうするのかとか新しい衛兵たちの調達とかやる事が増えた……」「お嬢様、ファイトです!」 新しい衛兵たちはグリーン公爵家の騎士団試験に不合格だった者のうちやる気がある者を選抜してこの領へと派遣してくれた。有難い。 新しい代官なぁ。ユリーズに息子いなかったっけ?頭の中でユリーズが若返って分裂でもしないかなぁとか思ったんだけど……。 とりあえず、私達は王都の屋敷に戻った。 ユリーズに何があったの?なんか逞しくなってない?「お嬢様、この数日仕事をボイコットする不届き者がいたりしてですなぁ。そいつらの性根を叩き直してるうちにこうなったのです。あ、執事服をもう少し大きいものを支給していただきたく思います」「……。じゃなくてそうよ!ユリーズに息子とかいない?領地に新しい代官が必要なのよ!前の代官なんて横領し放題!領地の屋敷に行ったら追放したハズのお父様とお義母様とベラと代官の4人で宴会よ?頭のねじがどっかにいってるんじゃないかしら?領地の衛兵も代官が買収していたらしくて、捕縛できなくて仕方ないから隣の領から衛兵を派遣していただいたのよ。新しい衛兵についてはグリーン公爵家の騎士団試験に落ちた中から選抜してうちの領の衛兵になってもらうから安心なんだけど、新しい代官がいなくて困ってたのよ」「田舎に双子の息子がおります。カラーとシラー。久しく会っていないが、大丈夫だろうか?所作とか……。ああ、考えると胃が痛い!」「大丈夫よ!普段はずっと領にいるんだもの。誰も所作とか見ないわよ。逆に親しみを持ってもらえていいんじゃないかなぁ?」「お嬢様にそう言ってもらえると助かります。では、速達で手紙を送っておきますね」「お願いね」 お父様達は問題し
「あの母娘に不当に解雇された使用人を探し当てた」「お嬢様、よくご無事で」「私は無事よ。この屋敷から、害虫を駆除しているところ。執事をしてた貴方なら一目でわかるんじゃない?」「そうですな。お嬢様にそのように信頼を寄せられてはこの老骨頑張りますぞ!ああいけないお嬢様ではなく侯爵様ですな。こりゃ、イカン」「お嬢様でいいわよ、ユリーズ」「騎士団長殿もありがとうございます」「いやいや、俺の場合、部下が頑張った成果だな」「ユリーズ、この私とオーウェンズ侯爵家に忠誠を誓うもの以外は解雇する方向で頼むわ」「承知しました」「シルヴィア嬢がスッカリ侯爵様だなぁ」「そのようにしなくては、今までのようにしていてはいけません。チラッと帳簿を見たのですが、改竄したんでしょうか?という感じでした。お義母様やベラが浪費に浪費していたというのに右肩上がりの収入。これはどういう事なんでしょう?オーウェンズ侯爵家の領地がそんなに豊かなんでしょうか?」「そのような話は聞いた事がない」「実際に視察すべきですね」「お嬢様ぁ!」「サラ?」「サラですぅ!お会いしたかった。あの義妹はワガママばかりで、少し諫めたら即解雇ですよ?意味わかりません」 うん。もういないよ。「私も会いたかったわ。早速なんだけど、近いうちに領地の様子を視察しようと思うのよ」「その支度ですね?承知しました!」「サラまで探していただき誠に嬉しく思います」「ユリーズ、近いうちに私は領地の視察に出かけるからその間の屋敷の管理を頼むわ」「承知しました」 私とサラと護衛(ケヴィン様からお借りしている)と御者の少人数でオーウェンズ侯爵家領地へと向かった。領地にも屋敷があるので、寝床には困らない。 領地へ向かう途中で見た畑には旧式の農機具が。これで右肩上がりの収入?? 領地について驚いた。 領地にある屋敷で、お父様、お義母様、ベラと代官の4人で宴の大騒ぎとなっていた。「えー、お父様?貴方はオーウェンズ侯爵家とは何の関係もない方です。ここで何をしているのですか?」「え、宴会だ。悪いかよぉ!」 悪いです。「やっていることは、不法侵入・器物損壊・窃盗などですので直ちに衛兵に捕らえていただきます」「出来るものならしてみろー」 衛兵を呼んだはずですが、ちっとも来やしません。「ここの代官と共に衛兵達も抱き
「手を貸してやろうか?」 騎士団長殿からの申し出です。グリーン公爵家からの申し出ですので断ることはできません。それに、解雇してしまった使用人を探し出すと言っても時間と労力が物凄くかかりそう。「お願いいたします」「対価はまた傷ついた時にあなたに癒していただきたい。あなたは他の方とは違う感じがする」 私の力でいいのならいくらでも。魔力が続く限り。 とりあえずのお付き侍女を選抜して一晩過ごす。 部屋が荒れている……。何故直しておかないの?「私の部屋がぐちゃぐちゃよ?なんで直しておいていないの?お付き侍女は誰?担当は?」 誰一人挙手しなかった。「あー、その程度の忠誠なのね。あなた達全員解雇よ」 その日は仕方ないので私が自分で部屋を直して生活をした。 翌日、髪を梳いてくれるのはいいけど、「痛い」って言ってるのにひっぱったまま。謝りもしない。「どういうつもりなの?」と、問いただしても、「侯爵様の髪がもつれてるのが悪いんですよ」と私のせいにした。解雇。「お湯が沸きました」と言うのでお風呂に入ろうとすると、本当にお湯が沸いている。沸騰しているお風呂のお湯…。「あなたはこのお風呂に入れる?」と聞いても、「お風呂に入るから、お湯を沸かしてちょうだい」と言ったのは、侯爵様です」と言う。解雇。 私はこの一連の侍女の行動がどうしてもおかしいと思い、騎士団長殿に相談をしてみた。「確かにあなたとオーウェンズ侯爵家に忠誠を誓っているわりには行動がお粗末だよね。俺の方でも調査してみるよ」「お手数をおかけします」「なんか本当に忠誠を誓ってるの?って聞きたくなるよね」「全くその通りです」「シッ」 ケヴィン様に静かにするように促されました。 耳をそばだてると、聞こえてきます。「あの女、早くも音を上げるんじゃない?女の分際で侯爵様とか言われて調子に乗ってるのよ」「そうよねー」「あんな女に忠誠誓うわけないじゃない?信じ込むなんて馬鹿らしい(笑)」「だそうだ。どうする?」「もう一度使用人を集めて聞きましょうか?その時の仕草やなんかでわかりますよね」「そうだな。通常ピシッとしているもんだしな。それもできないようじゃ使用人失格だな。少なくとも侯爵家の使用人には相応しくない」 後日、使用人をエントランスに集合させた。「コレで全員かしら?」「全員でーす」
いきなりクリスティーン様が登場して「私が日々指導をしていますの。オホホ」とか言いだした。見るからに嘘だと分かったようで(流石に騎士団長殿は誤魔化せない)。「君の名前は?」「私ですか?えーっと、シルヴィア=オーウェンズです」「オーウェンズ侯爵家か……。最近あまりいい噂は聞かないな」「そうですか……。あとチョットしたら私が爵位を得ますので、そうしたらあの家の者は粛清しますわ」「君の手腕を楽しみにしている」 騎士団長殿と握手を交わし、その場は離れた。 後方支援部隊も復活し、戦には大勝利。何よりも騎士団長殿の復活が大きかった。騎士団長殿が指揮官だから。「シルヴィア=オーウェンズか。オーウェンズ侯爵家の粛清が楽しみだな」 この騎士団長、ケヴィン=グリーン公爵家嫡男。シルヴィアのことが気に入ったようだ。 このわずか数か月後、シルヴィアは正式にオーウェンズ侯爵家の爵位を継承。聖女学校を後にし、久し振りにオーウェンズ侯爵家へと戻って行った。「なんなの?この荒廃具合は⁇」 オーウェンズ侯爵家の庭が荒れている。家の中はどうなっているのだろう?「お久しぶりです。お父様、お義母様、ベラ。侯爵の爵位は正式に私に継承されました。あなた方はオーウェンズ侯爵家にいるのに相応しい人間とは言えません。オーウェンズ侯爵家の人間だと外部で公言されると迷惑です」「実の父に向って何て言い草だ!」 お父様は顔を真っ赤にしてそう言い放った。「実の父?実の娘を家から追い出した方が言うセリフですか?お父様はオーウェンズ侯爵家に婿入りをしていますので、爵位は何も持っていません。悪しからず。お義母様は元は男爵令嬢だと言っていたそうですね?早々にその家に戻った方が良いかと思いますよ?ベラと共に。私は情に流されたりはしません。この家の窮状を見れば一目瞭然!あ、この家を出て行く時に手荷物チェックを致します。金品などの持ち出しはしないで下さいね」 お父様は膝から崩れ落ちています。お義母様は「侯爵夫人になれる」って言ったじゃない!とか喚いています。ベラはどうやって金品を持ちだすか思案中でしょうか?コルセットの中に仕込むとかでしょうか? そのコルセットもこの家の財産ですので持ち出されると困るんですよね。 ここに来た時の服で家を出て下さい。成長?知りません。 さて、使用人ですが…私と面識の
「私のところには貴族のみが並んでちょうだい!」 恐るべき選民思想。この学校の『貴賤を問わずに治療をする』というルールをマル無視です。 このような方が王太子妃でいいのでしょうか?おっと不敬罪になるのかな? 私は特に平民でも気にしなかったので、どんどん治療していきました。名前を聞かれて「シルヴィアですが?」と応えると、「きっと女神の変化に違いない」とか言われました。ただの人です。 そんな私の方を見て、クリスティーン様が歯嚙みをしているのも目に入ります。いや、これは当然の帰結だと思いますが? セルフィのところには不思議と何も言っていないのに貴族のみが列をなしていました。それでも、セルフィは「もう魔力不足だよ~」と言い。私にその列に並んだ方を押し付けるようにいなくなってしまいました。どこにいったんだろう? 昼休み、私とセルフィは一緒に昼食を食べていました。「セルフィはもっと魔力量を増やす努力をした方がいいわよ、さあもっとお食べ」「食べれば魔力が増えるの?」「それはわからないけど、とりあえず元気になるかな?」「アラヤダ、浅ましいお二人。特にシルヴィアさんなんか女神とか言われて調子に乗っているんじゃない?」 調子に乗る暇もないくらい忙しかったわよ!「私もたくさん食べて午後からに備えないと!」「無視するんじゃないわよ!」「忙しいんです。失礼します。行こ?セルフィ」 私とセルフィはサッサとその場を立ち去った。「私としては早起きも掃除もしなかったクリスティーン様はどうかと思うのよ。尚且つ、治療のやり方にケチをつけられてもね。判断するのは平民の方でしょ?」「それはそうなんだけど、クリスティーン様としては気に入らなかったんじゃ?」「もし、クリスティーン様が平民の方に女神とか言われても、クリスティーン様ですもの「平民に言われてもなんとも思いませんわ」とかって済ましそうなのに、なんで私に絡んでくるかなぁ?」「治療の速度とか?」「ああ、そっかぁ。あの魔力計を信じてるんだ。素直な方なんだね。私は権力者の娘さんの魔力が軒並み強く計測されているように見えたよ?」「…そういえばそうかも」「さっ、午後からの治療よ!」 恐るべき人たちがなだれ込んできた。「戦の後方援護の者達だ。彼らなくしては戦に勝利はあり得ない!」 全員貴族令息だと思うけれど泥まみれ
私はシルヴィア=オーウェンズと申します。オーウェンズ侯爵家の長女でもうすぐ聖女学校に通う事となっています。 というのも、お父様が後妻と義妹のベラを連れてきたために私の居場所がオーウェンズ侯爵家に無くなったために、お父様がお義母様と話して私を聖女学校へと追いやることにしたようです。長女なんですけどね。「お姉様、安心してね。このオーウェンズ侯爵家は私が守っていくから」 何を勘違いしているのでしょう? 私が17才になれば侯爵の爵位は私のものになるのです。今は婿入りしたお父様が侯爵代理をしているにすぎません。あと1年と数か月ですよ? まぁ、うちの事情はともかくとして私は聖女学校とやらに入学することとなったのです。私が光魔法を使うことが出来たからでしょうね。 しかし……世の中にはこんなにも多くの貴族令嬢が光魔法を習得しているのですね。 最初にした事は魔力量の測定です。「流石はクリスティーン様だわ!王太子妃の筆頭候補だもの!」 なんかものすごい魔力量をはじき出したようです。その後も有力貴族の令嬢は悉く魔力量が多く測定されました。 あの魔力計……なんか権力に弱い? 私の魔力量はそんなに多くもなく少なくもなくといったところです。可でも不可でもないってやつですね。 まだ光魔法を習得しているだけマシでしょうか?習得していない方は随分と肩身が狭いようです。 私は寮生活になります。むしろこの事を家族は望んでいたのでしょう。 部屋には二段ベッドがあります。2人部屋なんでしょうか?「あー、さっきの可でも不可でもない人だ!」 どういう覚え方でしょう?「初めまして。シルヴィア=オーウェンズです。よろしくお願いします」「かたっ苦しいなぁ。私はセルフィ。よろしくね!あなたの事はシルヴィって呼ぶわね!」 セルフィの第一印象は元気な子だなぁって感じでした。「知ってた?朝6時起床で点呼の後、校舎の掃除。掃除なんかしたことないよ~」 私はお義母と義妹がしろと言うので、至る所掃除経験がありますが、多くの貴族子女に掃除経験などないでしょう。 この学校…貴族子女に掃除をさせてどうするのでしょう?掃除婦の給与削減? そんな事を考えながら掃除をした後は、7時から自分たちで炊事。これも貴族子女は初体験でしょう。厨房にも入ったことないんじゃないかな? 8時からは実技。







