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第7話

Auteur: ちょうどいい
「わかった」電話の向こうから、金子輝夫(かねこ てるお)の低く、渋く沈んだ声が響いた。

すぐに彼は続けた。「空港でのすべては既に手配済んでいる。君が希望した……医療チームも含めて」

元子は静かに「うん」とだけ返し、その声には微塵も感情の揺らぎがなかった。

「ありがとう。空港で会いましょう」

通話を切ると、彼女は最後にもう一度だけ病院を振り返った。

だが、林立する高層ビル群に遮られ、何ひとつ見えなかった。

まるで私と修一の五年間の結婚生活は、鏡の中の花、水に映る月のように、すべてが虚しく、結局は自分自身を騙していた笑い話だった。

彼女は自嘲気味に笑うと、振り返らずにタクシーを止め、一路空港へ向かった。

車窓の外では、街の景色が勢いよく後ろへ流れていく。

元子は再びスマホを取り出し、修一とのチャット画面を開いた。最後のメッセージは、彼女が出張先に到着したと知らせたまま止まっていた。だが、修一からの返信はなかった。

スクロールを遡ってみると、この五年間の記録はほとんど同じだった。

いつだって彼女が一方的に話し、気を配り、必死に彼の世界に入り込もうとしていたのだ。

そして彼は、いつだって沈黙し、曖昧に流し、拒み続けていた。

元子は深く息を吸い込み、オランダ語で修一に音声メッセージを送った。

【修一、あなたが毎年青い花火を上げる理由、もう知っている。あなたと千秋がキッチンで交わした会話も聞いた。もしあなたが早く、心に千秋が住みついていると教えてくれていたら……この五年間を、無駄にすることはなかったのに。

離婚判決書は郵送するよ。これで私たちは終わり。二度と会うことはないわ】

送信してから、彼女は修一のすべての連絡先を削除し、スマホに残っていた彼に関する写真も一枚残らず消した。

最後に、彼女はスマホからSIMカードを取り出し、両手で強く握った。カチリと小さな音を立てて、五年間の屈辱的な思いが込められた小さなプラスチック片は、簡単に折れてしまった。

迷いのない、潔い動作だった。まるで、五年間体に巣くっていた病を、一刀のもとに断ち切ったようだ。

同じ頃、病室の中。

修一のスマホの画面が一瞬だけ光り、「元子」からの音声メッセージの通知が表示された。

しかしその時、彼は温かい薬膳スープを慎重に冷ましながら、顔色の悪い千秋に一口ずつ優しく食べさせていた。

「修一……何かメッセージが来てるみたい」と千秋が柔らかく声をかける。

修一はちらりと画面を見やり、元子の名を認めると、ほんのわずかに眉をひそめ、すぐに通知を指で消した。

「取るに足らない人間のことなど、気にする必要はない」彼は淡々とした口調で言い、手元の作業に再び集中した。

「今の君の任務は、しっかり休んで体を整えることだ。医者も言っていた、手術前の状態が何より大事だと」

修一は、あの音声を聞く気などさらさらなかった。

また元子がすねて、引っ込み作戦を装って彼の気を引こうとしているだけだと、彼は分かっていた。

手術が終わったら、また何かで埋め合わせをしてやるつもりだ。新谷家の件にせよ、子供のことにせよ、とにかく彼女を納得させる方法はあるだろうと。

三日後、千秋と元子の腎臓移植手術の日がやって来た。

手術室の外で、修一は苛立ちを隠せず、何度も足を往復させていた。

彼は繰り返し元子の電話番号を押したが、返ってくるのはいつも冷たい機械音――「おかけになった電話は電源が入っていません」だけだ。

言いようのない不安が、じわじわと彼の心臓を締めつけていった。

「元子はどこにいるの!?腎臓を提供すると約束したでしょう?どうしてこんな肝心な時に姿を消すのよ!」智美は焦りを隠せず、そう責め立てた。

修一の顔は暗く沈み、ボディーガードに元子を「連れて来い」と命じようとしたその瞬間、特別補佐が血の気の引いた顔で慌ただしく駆け寄ってきた。手には一通の封筒を握っている。

「社長!エディンバラから法的書類が届きました……!」

「何の書類だ?」修一の胸が一瞬強く跳ね、鋭い声が出た。

特別補佐は唾を飲み込み、震える手でエディンバラ裁判所の消印が押された封筒を差し出す。

なぜだろう、修一の胸の奥に得体の知れぬ不安が広がっていく。

眉をひそめて封を切ると、そこに記されていたタイトルは――「絶対離婚判決令」だった。

最初の一行に記されていた英語はこうだった――【エディンバラの法律および権威に基づき、原告・新谷元子と被告・栗原修一との婚姻を解消し、双方を婚姻上の義務から解放することを命じ、これを裁定する……】

修一の胸の奥が、ずしりと沈んだ。彼はすぐさま元子とのチャット画面を開いたが、いくつかの音声メッセージはまだ未読のままだった。

考えるより先に、彼は元子にメッセージを送った。

【どこにいる?】

そのメッセージは送信したが、ずっと未読のままだった。

その時、特別補佐が声を震わせて再び報告した。「社長……三日前、奥様が国際空港の救急医療センターで、ご自身の片方の腎臓を……金子輝夫氏にご提供なさったことが確認されました!」

「金子輝夫……?」修一は雷に打たれたように全身を強張らせ、思わず一歩後ずさりして冷たい壁に背をぶつけた。

あの、長年にわたって彼と覇権を争い、何かにつけて対立してきた栗原グループ最大の宿敵――金子輝夫なのか?

もう耐えきれず、修一は震える指先で元子の最後の音声メッセージを再生した。息をのむような静寂に包まれた廊下に、元子の声が淡々と、そして冷ややかに流れ出た。

【修一、あなたは五年も私を騙し続けてきた。だから今度は私が一度だけあなたを騙した。これでおあいこ。もう二度と会うことはないわ】
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