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番外編②〈第2話〉

last update Last Updated: 2025-05-03 16:45:34

『ここ』と言って、藍がぽんぽんと叩いたのは、自分の足の間。︎︎︎︎︎︎

「そっ、そんな!恥ずかしいよ!」

「なんで?今日は母さんもいないから、家には俺と萌果の二人だけだよ?」

「そうだけど……」

「久しぶりの、ふたりきりだから。俺、萌果とくっつきたいなぁ」

くっつきたいって、そんなにハッキリと言われたら……断れない。

ふたりきりの空間で、藍と見つめ合うこと数秒。

「おっ、お邪魔します」

私が何とか勇気を出して自分から藍の足の間に座ると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「お邪魔って、全然邪魔なんかじゃないよ」

耳元で囁かれて、どきっと心臓が跳ねる。

ピタリと密着する体。背後から、藍の熱が伝わってきて……やばい。

藍との距離がいつも以上に近く感じて、ドキドキする。

あまりの近さに、私は耐えられず……。

「あっ。あの俳優さん!私、最近好きなんだよねぇ」

「は?」

私が咄嗟に指さしたのは、今たまたまテレビに映った、最近女子高生の間で人気の若手俳優。

塩顔イケメンの彼はテレビのバラエティー番組で、爽やかな笑顔を振りまいている。

「……萌果ちゃん、あの俳優が好きなの?」

「う、うん。柚子ちゃんもかっこいいって言ってたし。最近活躍してる人のなかでは、私も好きだよ」

「へー」

藍が、鋭い目つきでテレビを睨みつける。

「俺とこの俳優、どっちがかっこいい?」

「えっ」

「ねぇ、どっち?」

「……ひゃっ」

藍に後ろから抱きつかれながら、耳たぶに吸いつくようなキスをされて、思わずビクッと体が跳ねた。︎︎︎︎︎︎

「萌果ちゃん、早く答えてよ」

「……あっ」

耳たぶを藍の舌が繰り返し這い、くすぐったさに震える。

「ら……待って」

体をよじりながら抵抗するも、後ろから抱きしめられているため身動きがとれない。

「萌果がちゃんと答えるまで、やめないから」

熱を帯びた唇が首筋をゆっくりと下っていき、パジャマの下に彼の手が滑り込む。

「ねえ、どっちが好きなの?」

「……っ、ら……んっ」

「なに?聞こえないよ」

藍ってば、ほんとイジワル!

「藍……だよ。私は、藍が一番好き」

「はい。よくできました」

ようやく藍の唇が離れ、ニコッと満足げに微笑まれる。

「これからは、他の男に好きって言うの禁止。萌果が好きって言っていいのは
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