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第28話

last update 最終更新日: 2025-04-04 15:52:46

そして小学5年生の3月。

『あのね、実は僕……萌果ちゃんのことが、ずっと好きだったんだ』

震える声で何とか萌果に告白するも、彼女の答えはNO。俺は、見事に振られてしまった。

『藍は家族っていうか、弟みたいに思ってたから。藍のことを、そんなふうに見たことがなかったの。だから、ごめんね』と。

ショックだった。萌果とは同い年なのに、弟にしか見られていなかったなんて。

萌果は『藍のことを、そんなふうに見たことがなかった』と言っていたから。

萌果に弟としてではなく、一人の男として見てもらえるようになったら、もしかしたら俺にもまだチャンスがあるのでは?

そう思った俺は、それ以来勉強も運動も人一倍頑張った。

少しでも強くなろうと、母さんに頼んで家の近所の空手教室にも通わせてもらった。

筋トレだって毎日やって、身だしなみも整えようとオシャレの研究もした。

もし次に萌果と再会できたときは、弟ではなくちゃんと異性として見てもらえるように。

そして、俺のことを好きになってもらって、告白のリベンジをするために。

その日をひたすら夢見て、自分にできることは何だってやった。

それから数年が経ち、中学2年生の頃に街中で俺は今の芸能事務所の人にスカウトされた。

元々芸能界なんて全く興味がなかったけど、もし売れて知名度が上がれば、九州にいる萌果の目に入ることがあるかもしれない。

そう思った俺は、ファッション誌のモデルとしてデビューしたのだった。

そして高校2年生になった今。萌果がようやく福岡から東京に戻ってきて、ウチで同居している。

ずっと離れて暮らしていた萌果が、毎日俺の家にいるなんて夢みたいだ。

高校生になった萌果は、小学生の頃よりも大人っぽくなっていて。何よりすごく綺麗になっていて、びっくりした。

萌果に少しでもドキドキして欲しくて、距離を縮めるとすぐに顔が真っ赤になる。男慣れしていない、そんなところも可愛い。

あまりガツガツし過ぎると良くないってのは、分かってるんだけど。5年間会えなかった反動なのだろうか。

萌果を前にすると、好きって気持ちが溢れてしまって。すぐに触れたくなって、ときどき歯止めがきかなくなる。

この同居生活で、萌果が少しでも俺のことを意識してくれると良いんだけど。

実際は、どうなんだろう……?

**

夜。仕事を終えてホテルの部屋に戻ってきた俺は、ベッドに思いきりダイブす
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