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第16話(2)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-02-10 11:00:33

 参拝を済ませて、来た道を引き返そうとした和彦は、授与所のほうを見る。せっかくなので破魔矢を買いたいと思ったのだが、この状況では無理だろう。

 人並みに参拝できただけで、満足しておくべきかもしれない。そんなことを考えながら、神社同様、混み合う駐車場に戻ると、周囲の視線を気にかけつつ賢吾と同じ車に乗り込む。

「――先生、欲しいものはないのか?」

 突然の賢吾の言葉に、マフラーを外していた和彦は手を止める。

「えっ……」

「組の人間とぞろぞろ連れ立って歩いていたら、悠長に露店を覗くこともできなかっただろ。欲しいものがあれば、若い者に買いに行かせるぞ」

「……別に、ない」

「本当に?」

 和彦の心を見透かすように、賢吾が顔を覗き込んでくる。意地を張るような状況でもないので、正直に告げた。

「せっかく初詣に来たから、破魔矢が欲しい……」

「すぐに買ってこさせよう。本宅や事務所に飾る分もな」

 賢吾の言葉を受けて、すぐに助手席の組員がウィンドーを下ろし、外に立っている組員に小声で何
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    「今、広間のほうで、みんな集まって宴会してるんだ。さすがに先生にも顔を出せなんて言わないから、ここに晩メシを運ばせようか? 俺、つき合うから」「何言ってるんだ。長嶺組の跡目を独占するわけにはいかないだろ。ぼくは、一人でゆっくり過ごさせてもらうから、お前は行ってこい」 一緒にいてほしいという言葉でも期待していたのか、不服そうに唇を尖らせた千尋だが、和彦のほうから唇を吸ってやると、ちらりと笑みをこぼす。「先生、機嫌よくなったみたい」「今なら、お前の多少のわがままでも、笑って受け流せそうだ」「受け止めるんじゃなくて、受け流すんだ……」 離れがたい様子の千尋だったが、和彦が促すと、渋々といった顔で立ち上がる。「オヤジたちには伝えておくから、ゆっくり晩メシ食ったら、風呂に入るといいよ。大浴場からだと、もっとよく海が見えるらしいし」 そう言い置いて千尋が部屋を出て行く。再び一人となった和彦は立ち上がると、窓を開け、海と夕日という贅沢な組み合わせに見入る。そうしていると、千尋が伝えてくれたらしく、食事が運ばれてきた。 一人での食事というのは久しぶりだった。本部だろうがクリニックだろうが、食事のときには、常に誰かが側にいる状態だ。そのことを疎ましいと感じることはなかったが、たまには完全に一人というのも気楽でいいと、刺身の美味しさに感心しつつ和彦は思う。 食事を終え、膳を下げてもらってから、テレビのニュース番組を漫然とチェックしていたが、大事なことを思い出し、慌てて浴衣に着替えて大浴場に向かう。部屋に露天風呂は付いているが、こういうときでもなければ広い風呂に入る機会はない。 予想した通り、和彦以外に人の姿はなく、おかげでゆっくりと、湯と、大浴場の窓からの景色を堪能することができた。堪能しすぎて、危うく湯あたりを起こしそうになったぐらいだ。 急いで部屋に戻る必要もないため、和彦は大浴場を出たその足で、今度はラウンジに向かう。 オレンジジュースを飲みながら、体の火照りを冷ます頃には、外はすっかり暗くなっていた。空には星が輝いているが、海には漆黒の闇が広がり、その闇に見入ってしまう。「――部

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    「……それは、ぼくの実家のことを指しているのですか?」「わしは、難しい話に興味はないよ」 機嫌よさそうに話す守光の表情から、狡猾さは感じられない。しかし、本当に狡猾で、頭が切れる人間は、完璧に自分の本性を隠せるものだ。和彦の父親が、まさにそうだ。 急に警戒心を露にした和彦に向けて、守光はさらに言葉を続ける。「あるのは、長嶺の〈悪ガキ〉二人を骨抜きにしている先生への興味だ」「悪ガキ……」「わしにしてみれば、でかくなったつもりの賢吾はまだ悪ガキのままで、千尋はさらに

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