Beranda / BL / 血と束縛と / 第24話(15)

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第24話(15)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-04-09 20:00:33

 和彦が事情を説明している間、千尋は威圧的な態度は一切取らなかった。畳の上にあぐらをかいて座り込み、真剣な顔で黙って話を聞き続けていた。一方の和彦は、正座だ。

 普段、喜怒哀楽をはっきりと表に出すタイプの千尋だが、いざとなればいくらでも感情の抑制が利くのだ。里見の存在を知り、胸の内でどんなことを思ったのかすら、和彦は読めなかったぐらいだ。

「――……刺青を入れられそうになった」

 この話題を切り出すとようやく、千尋は顔をしかめる。

「オヤジが先生に刺青を入れさせてたら、俺は絶対、オヤジに殴りかかってたな」

 その賢吾は、和彦が朝目を覚ましたときには、すでに出かけていた。

「操を立てろと言われたんだ。刺青を入れることで組長が納得するなら、ぼくは受け入れるつもりだった。でも結局……」

「勢いだけでタトゥー入れた俺が言えた義理じゃないけどさ、理由を他人に求めると、絶対後悔する。俺は、オヤジが嫌がる顔を見たかったんだ。先生は、オ
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  • 血と束縛と   第44話(4)

    「……四階はいつも通り静かでしたから、わかりませんでした。そんなこと」「会長は、今夜は外泊となります。そこに、〈彼〉も同行しています。いつも以上に静かですよ、きっと」 はっきりと名を出されなくても、存在を匂わされるだけでドキリとする。和彦は反射的に、吾川に鋭い視線を向けていた。「部屋に、戻ります……」 和彦がエレベーターホールに向かうと、当然のように吾川もついてくる。上がる階が一緒なので仕方ない。「会長が不在ですから、夕食は先生の部屋にお運びします。クリスマスイブですから、特別なものを。おそらく、ケーキもあるはずですよ」 吾川の不思議な言い回しに内心首を傾げつつも、和彦は頷いておく。一刻も早く、クリスマスイブなど関係ない、自分だけの空間で一人になりたかった。どうしようもない寂しさを抱えた姿を、誰にも見られたくない。 寂しさは、人恋しいとも言い換えられる。誰でもいいわけではない。ただ、一人の男の顔が見たくて、せめて声が聞きたくて――。 四階に着くと、エレベーターの前で吾川と別れて足早に部屋に戻る。和彦はエアコンを入れると、部屋が温まるのを待つ時間が惜しくて、着替えを抱えてバスルームに向かう。 気を抜いた途端、ベッドに転がって動けなくなるのが目に見えていた。本当は食欲もない。今夜は早々にベッドに潜り込んでしまおうと考えながら、熱めの湯を頭から被った。 シャワーを浴びて出たところで和彦は、ドアをノックする音に気づく。もう食事が運ばれてきたのかと、急いで体を拭き、スウェットの上下を着込む。 バスタオルを肩からかけてドアを開けると、目の前に立っていたのは吾川――ではなかった。 驚きのあまり、声すら出なかった。ただ目を見開いて立ち尽くしていると、大きな袋を両手に提げた賢吾が薄い笑みを向けてくる。「髪も拭かずに出てきたのか。びしょびしょじゃねーか」 官能的なバリトンが耳の奥に届いた途端、体中の細胞が一気に沸き立ったようだった。「ど、して……」「お前とクリスマスイブを一緒に過ごすために」 冗談

  • 血と束縛と   第44話(3)

     優也の叔父である城東会組長の宮森は、和彦だけではなく、優也にも何か言ったのか、まるで日記のようなメールが送られてきたのだ。それがきっかけとなり、時間があるときは和彦も他愛ない内容の返信をしており、二、三日に一度程度のやり取りが続いている。「どなたか、イイ人からですか?」 揶揄するように中嶋に問われ、和彦は大仰に顔をしかめて見せる。「元患者だ。今は……、友人になりかけ、だな」「おやおや、そんなことを言うと、嫉妬する人がいるんじゃないですか。俺も最初は、先生の友人のつもりでしたから。つまり――」「……君の今の物言い、秦にそっくりだ」 率直な感想を述べたのだが、意外に中嶋には響いたのか、分が悪いと言いたげに正面を向く。和彦は笑いを噛み殺しながら、何げなくコンビニに目を向ける。この時期らしい派手な飾り付けにいまさら気づき、そういえば、と呟いた。「ぼくのことなんて気にかけている場合じゃないだろ、明日は」「そうです。クリスマスイブですよ。悲しいかな、俺は仕事がありまして。だから、先生のお供ってことにして、抜けられないかなと企んでいたんです。よければ、クリスマスケーキも買っておきますよ」「ぼくは……、今年はそんな心境じゃないな。おとなしくして過ごすよ。君には悪いけど」 去年のクリスマス時期は、クリニックの開業準備が大詰めであったり、英俊と思いがけない形で遭遇したりと、気持ちの浮沈が激しかった。それでも、充実したクリスマスだったと思い返せるのは、和彦を大事に扱ってくれる男たちが、絶えず傍らにいたからだ。 それが今は――。 傍らに置いた携帯電話に視線を落とし、和彦はため息をつく。すぐに、今は自分一人ではないことを思い出して、誤魔化すようにホットミルクを飲んだ。**** 性質の悪い冗談なのだろうかと、総和会本部のエントランスホールに立ち尽くした和彦は、無表情のまま目の前のものを眺める。 普段の和彦は、エントランスホールではなく、裏口から出入りしている。だから、〈こ

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    「――秦さんの行方がわからなくなりました」 驚きのあまり、声が出なかった。顔を強張らせる和彦に、信号待ちの車の列に加わった中嶋は、肩越しに笑いかけてくる。「安心してください。今はわかってますから。……俺が部屋に行ったとき留守になっていたんですけど、どうにも不自然で。それで、階下で営業している人に話を聞いたら、いかつい男たちに囲まれて車に乗せられていったと言われたんです。秦さん、前に襲われたことがあるでしょう? 携帯に連絡しても電源は入っていないし、店にも顔を出していない。どうしたって最悪な状況が頭を過って、これは長嶺組に連絡をすべきかと思ったんですよ」「それで、今はわかっているというのは……?」「秦さん、長嶺の本宅にいたんです。長嶺組長の命令で」「……どうして、そんなこと……」「さあ、そこまでは。かなりきつく口止めされたらしくて、秦さんは教えてくれませんでした。ただ、暴行を受けたというわけではなかったので、そこは安心してください。――長嶺組長からは、俺もしっかり釘を刺されたんです。面倒に巻き込まれたくなければ、当分、うちの組には近づくなと。そう言われたら、ね?」 和彦は、賢吾と連絡が取れないというのに、一方で、賢吾の指示を受けて動いている者たちがいる。 自分がつま弾きにされていると感じ、和彦はきつく唇を噛み締めていた。賢吾から釘を刺されたという中嶋に、これから本宅に向かってくれとも言えず、胸苦しさだけが増していく。 和彦の様子に気づいているのかいないのか、中嶋が話を続ける。「長嶺組では何か起こっている……というより、起こそうとしているのかもしれませんね。御堂さんも、そんなことをちらりとこぼしていましたが」 危うく聞き流しそうになったが、ハッと我に返る。「御堂さんと話したのかっ?」「ええ。忘年会が流れた代わりにと誘われて、会ってきました」 そうか、と和彦はひどく納得する。護衛がついている自分とは違い、御堂と中嶋なら、所属する隊が違うといえど、やり方次第で会うの

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  • 血と束縛と   第43話(46)

    「……ぼくは、そこまで思い切れません。長嶺の男たちに庇護されて、賢吾さんの作った檻の中で、いろんな男たちと情を交わしていただけで……。御堂さんに軽蔑されるかもしれませんが、ぼくには大層な覚悟なんてなかった。ただ、力のある男たちに身を委ねて、自分が必要とされる感覚に満足できていたんです」「軽蔑なんてしない。まっとうな人生を奪われても、君はしたたかに生きている。流されているだけだと言うかもしれないが、まったく無縁だった物騒な世界に放り込まれても、自分を保っているんだ。誇れとは言わないが、少なくとも卑下はしないでくれ」 御堂が腰を浮かせ、空になったグラスをナイトテーブルに置く。このとき、灰色がかった髪がさらりと揺れ、視線が吸い寄せられる。触れてみたいなと、ふと和彦は思い、そんな自分に戸惑った。 座り直した御堂がこちらを見て、首を傾げる。その姿は、総和会という巨大な組織の中にいて、屈強な男たちの一団を率いているようには見えない。痩せてはいるが決してひ弱そうではないし、触れるのをためらわせる冷たさをときおり覗かせる。こんな御堂を守りたいと思う男は、きっと一人や二人ではないだろう。 驕っているわけではないが、和彦にも、自分を守ろうとしてくれる男たちがいる。和彦が打ちのめされるのは、そんな男たちの足手まといになりかねない己という存在に対してだ。 なんとかしたいのに、足掻くことすらできない――。 御堂が驚いたように目を丸くする。「頼むから、泣かないでくれ。あとで、賢吾がこのことを知ったら、わたしが責められる」「いえ……、泣いてないです。悔しいのか悲しいのか、よくわからなくなっただけで……。本当に、いろいろ、あって――」 感情の高ぶりで熱くなった自分の頬を軽く叩くと、御堂にその手を取られる。間近に顔を寄せられ、和彦は目が逸らせなくなった。「あの……?」「前にわたしは、君は自分に執着していないと言ったが、少し変わったかもしれないね。男たちが大事にしてくれる自分自身を惜しむ気持ちが出てきたというか…&

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    「お前の手を煩わせる必要はない。俺が連れて行く」 南郷がこちらに向けて手を差し伸べてきたが、皮肉交じりの冷たい声で御堂が応じる。「オンナの扱いを一番わかっているのは、わたしだ。お前に、今の彼を傷つけずに側にいることができるのか?」「……今日はもう、敷地から出ないでくれ、先生。明日からは、うちの車でクリニックに送迎する。本当は休んでもらうのが一番いいんだがな」 和彦は俯いたまま返事をしないでいると、御堂に促されて建物に向かう。 南郷がどんな顔をしているか、振り返って確認する気にはなれなかった。** ベッドに腰掛けた和彦は、ふうっと息を吐き出す。守光がオンナである自分のために用意した部屋ではあるが、それでもなんとかひと心地はつける。 一緒に部屋に入った御堂は、軽く室内を見回したあと、冷蔵庫を指さした。「何か飲むかい?」「えっ、ああ、すみませんっ……。御堂さんはそこのソファに座ってください。お茶ぐらい入れますから――」「いいよ。押し掛けてきたのはこちらだから」 二神とは二階で別れて、御堂だけで和彦を部屋に連れてきてくれたのだ。正直、この部屋を他人に見られるのは抵抗があったため、この配慮はありがたかった。御堂も他人ではあるが、和彦と感覚を共有できる唯一の人物でもあるのだ。 勝手に使わせてもらうよと言いながら、御堂は冷蔵庫からオレンジジュースの瓶を取り出し、グラスに注ぐ。さらにエアコンをつけてくれた。 グラスを手渡された和彦は、一気にオレンジジュースを飲み干す。やけに甘みが強く感じられ、こんな味だったかなとぼんやりしていると、手からグラスが滑り落ちそうになる。すかさず御堂が受け止めた。「心底疲れ切ってるね」 御堂の言葉に曖昧に微笑み返す。隣に腰掛けた御堂が、改めて室内を見回し、苦々しい口調で洩らした。「業者が入っていたのは把握していたけど、四階の一角がこんなふうになっていたとはね。まさに破格の扱いだ。本格的に君を囲い込む気なんだな。長嶺会長は」「……ぼ

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