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4-4

مؤلف: 酔夫人
last update تاريخ النشر: 2026-05-13 11:00:53

「先生たちが忙しそうだったから、私が代わりに持ってきました」

溌剌とした声だが。

「……分かりました」

理事長がため息とともに許可を出したところをみると、この行動は困ったことということだろう。そう思いながら入口を見ていると、トレーを持った女の子が部屋の中に入ってきた―――やはり、三沢加奈だ。

俺が知っているのは大人の彼女だが、顔立ちには面影がある。そして何よりも、この目だ。

「どうぞ」

俺の前にコーヒーが置かれる。

その瞬間にも向けられた目には、あのときと同じ、媚を売るようなものがある。前の生でもそうだったが、こういう態度には慣れている。俺だけではなく、柳瀬さんも慣れているから。

「私の分も、そちらに置いていただいて結構ですよ」

柳瀬さんは人好きする笑顔を浮かべているが、この言葉を訳せば『さっさと置いて、さっさと出ていけ』となる。さすが、祖父さんの右腕。子ども相手でも、不快な相手は容赦をしない。

三沢加奈は渋々とい

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  • 見つからないパズルピース   4-5

    「……え?」三沢加奈の顔が強張る。「いえ、でも……」明らかな拒否感。なるほど、唯と比べられたくないということは、唯を引き取ったのはそれなりの社会的地位のある家。だから、三沢加奈は俺に目をつけた。柳瀬さんや理事長が『草薙家』の名前を出したとは思えないし、仮に名前を聞いてもこの年の子どもがすぐに草薙グループと結びつけるとは思えない。しかし、三沢加奈は俺たちの身なりや、もしかしたら乗ってきた車を見て『金持ち』と判断した。正確には『唯に勝てるレベルの金持ち』。それなら―――。「うちならば、唯さんに会えるかな」予想通り、三沢加奈の顔が喜色に満ちる。「会えると思います。唯ちゃんのお父さん担った人は偉い人だって聞きました」偉い人と言うと……政治家とかどこかの社長だろうか。子ども基準の偉い人だと、それくらいの選択肢になってしまうが……賭けてみるか。「それなら、俺はいつか唯さんに会えるということか」「……は?」唖然とする三沢加奈に、俺は笑って首を傾げてみせる。「君が言ったじゃないか。うちなら唯さんに会えるって……ぜひ会いたいと思っていたから、とても嬉しいよ」会いたいのは本当。そして本物の愛しさは、三沢加奈にも伝わったのだろう。「え……でも……」三沢加奈が考えているのが分かる。考えている。どうすれば唯を貶められるのか。「唯ちゃんは大人しくって……あまり人前に出るのとか、嫌がるんで……」三沢加奈の中の俺のイメージは、パーティー三昧のようだ。そして、そのパーティーに対して憧れがある……つまり。「なるほど……でも、大丈夫だよ。パーティーが全部賑やかしいわけではないからね。静かめなパーティーなら、唯さんに会えるかな」「それは……」「大人しいタイプなら、あまり華美ではないワンピースが好まれるかな。贈り物を外すのは格好悪いし、母に相談してみるよ」三沢加奈が悔しそうな顔をする。パーティーに出る唯を想像したのだろう。「唯ちゃんに、パー

  • 見つからないパズルピース   4-4

    「先生たちが忙しそうだったから、私が代わりに持ってきました」溌剌とした声だが。「……分かりました」理事長がため息とともに許可を出したところをみると、この行動は困ったことということだろう。そう思いながら入口を見ていると、トレーを持った女の子が部屋の中に入ってきた―――やはり、三沢加奈だ。俺が知っているのは大人の彼女だが、顔立ちには面影がある。そして何よりも、この目だ。「どうぞ」俺の前にコーヒーが置かれる。その瞬間にも向けられた目には、あのときと同じ、媚を売るようなものがある。前の生でもそうだったが、こういう態度には慣れている。俺だけではなく、柳瀬さんも慣れているから。「私の分も、そちらに置いていただいて結構ですよ」柳瀬さんは人好きする笑顔を浮かべているが、この言葉を訳せば『さっさと置いて、さっさと出ていけ』となる。さすが、祖父さんの右腕。子ども相手でも、不快な相手は容赦をしない。三沢加奈は渋々といった様子で立ち上がりかけたが、机の上を見て動きを止めた。「……唯ちゃん?」“唯ちゃん”。彼女の名を紡いだ三沢加奈の声に、ドクリと心臓が鳴った。―――アハハハ、唯ちゃん。かわいそ〜。―――唯ちゃん、気持ちいい? アハハハ、もっとやっちゃって!映像の中の三沢加奈の笑い声が頭に響く。憎悪が膨れ上がる―――だめだ。この女の子は、あの三沢加奈ではない。何もしていない。だから、唯には何も起きていない。そう繰り返し、気持ちを落ち着かせつつも、三沢加奈がいるこの場に耐えられず立ち上がる。「すみません、トイレはどこですか?」恐らく顔色も悪かったのだろう。理事長は慌てて俺をトイレまで案内してくれた。朝食に食べたものが重く、胃の中でゴロゴロまわっている気がする。この世界で唯は生きているという思いと、食べ盛りで常に空腹の俺の体は、以前の食事が嘘のように大量の朝食を平らげた。それをいま深

  • 見つからないパズルピース   4-3

    「とりあえず、働きたいというのなら働かせてあげるわ。女の子にかまける時間が減れば、私の苦労も減るしね」母さんが何かに迷うそぶりを見せた。「田沢家から、綾子さんと洋輔の婚約を打診されていたの。あなたの下半身のクズっぷりに、綾子さんに番人をしてもらうのもいいかなって思ったけれど……」「綾子とは結婚したくない」母さんが首を傾げる。「悪い話ではないと思うのだけど?」「絶対にやめてくれ。もし彼女との婚約話を進めるなら、俺は草薙家とは縁を切る」俺の言葉に、母さんは吃驚した。それは、そうだろう。先ほどまで草薙グループで働かせてほしいと言っておきながら、手のひら返すような発言だ。「わか、ったわ……でも、あなた。本当にどうしちゃたの?」どうしたの、か。―― あなたが大人の男になったと感じたのは、あの子に恋をしたからだったのね。そう言えば、前の母さんはこんなことを言っていたっけ。「好きな人ができたんだ」母さんの顔が、もっと吃驚したものになる。好きな人ができたと言って、ここまで驚かれる俺って……いや……俺と母さんの関係では、こんなことを話すこと自体が変か?「……花江、さん」母さんが、傍にいた花江さんを呼んだ。どうやら、母さんはパニックを起こすと花江さんに頼るくせがあるらしい。「あらあら、まあまあ、今夜はもう作ってしまったので、明日お赤飯にしましょうね」「そうね。あまりお赤飯は好きではないけれど、祝い事ですものね」……え、なにそれ。「いや、別に、好きでないなら赤飯なんかじゃなくても。寿司とかでもいいんじゃない? そうすれば花江さんの手間もかからないだろう? 寿司、特上で、花江さんも入れて三人前頼もうよ」あらあらと、花江さんの目じりが下がる。花江さんが寿司好きなことは知っている。「それでしたら大旦那様にもお知らせしませんと」……祖父さん?「ああ、そうか。祖父さん、まだ生きているんだっけ」「まあ、洋輔さんたら酷い言い草。大旦那様は検査入院しているだけではありませんか」検査入院……そうだった。この頃、最近疲れやすいと言っていた祖父さんは周りに検査を進められて、そこで癌が見つかったんだっけ。祖父さんが生きている。時間が戻ったって、初めて実感した気がする。だから唯も……。 *「いない?」俺が復唱した言葉に、児童養護施設「ひかりの丘」の理事

  • 見つからないパズルピース   4-2

    時間が、本当に戻っていた。いまの俺は、この四月から大学生になる。以前の俺はこのあと無難に大学生活を送り、草薙グループに就職して実務経験を積んだあと、三十歳手前で、母に言われてオックスフォードに留学してMBAを取得した。グループの経営に加わるためにオックスフォードへの留学をすすめられたわけだが、結婚を迫る綾子から距離を取るのにも丁度良かった。こうして思い返せば、前の俺の人生は全て受け身だ。いまの俺はまだ十八歳。五歳年下の唯は、まだ十三歳の中学生。今度は時間を無駄にしないため、考える―――まずは、綾子と婚約話を白紙化することだ。 *「母さん、お帰り」仕事から帰ってきた母さんを出迎えると、母さんは驚いた顔をした。俺の顔を見て、自分の腕時計を見て、もう一度俺の顔を見て……。「なぜ家にいるの?」「……ここ、俺の家だろう?」「そうだけど……覚えていたのね」そんなことを言いながら靴を脱ぐ母さんを見ていたら、母さんがパッと顔をあげた。「洋輔、何かやらかしたの?」「……なんで、何かをやらかした前提なんだ?」「どこの誰を妊娠させたの?」「聞いてよ。なんで妊娠させた前提で話し進めているんだよ」前の俺って、こうだったのか?……いや、確かに間違っていない気はする。家に帰りたくなくて、誘ってきた年上の女性の家を転々として、そこでワンコ扱いされて……思い返せば紐みたいなクソな生活。「違うって。俺も四月から大学に行くから、ちゃんとしようと思って」「……花江さん」母さんが俺の言葉に応えず、俺の後ろにいる花江さんを見た。振り返ってみると、花江さんは肩を竦めていた。信じていない、二人とも。前の俺がどれだけ馬鹿だったのか思い知らされる。.「大学と並行して、うちで働きたいですって?」「そう。どんな子会社でも都内ならどこでもいいから、実績を積みたいんだ」「実績って……どうしてそんなに急ぐの? 大学では勉強に集中したらいいでしょう?」「でも、草薙グループを継ぐためにはMBAは取得しておいたほうが良いだろう?」前の俺の口からは出なかったであろうMBAという単語に、母さんが驚く。驚いている顔を隠せないくらい、驚いている。「それは、そうだけど……あなた、まさか……」母さんが、ハッとした顔をする。母さんもMBAを取得しているから、俺のやろうとしていることに想像が

  • 見つからないパズルピース   【第四章】

     リン……リン……·鈴の音?どこから?なぜだ?·辺り一面が、暗い。ここは、どこだ?俺は、何をしていた· リン……リン……·ああ、そうだ。小林陽翔との話に疲れて、家に帰った。でも、人と話す気にならず、一人になりたくて、温室にきたのだった。父が使っていた、今では誰も使わないベッドに俺は寝転んだ。そう。カジュマルの木に、見下ろされている感じがしたんだ。 ペトリ「……っ!」湿ったなにかが、俺の頬に触れた―――小さな、手?犬?猫?いや、毛の感触はなかった。それなら、人間?でも、こんな小さな手を知らない……いや、知っている。あの子の手は、小さかった。「洋輔さん」花江さんの声?どこから?あれ……痛い……っ!「洋輔さん。こんなところで寝ていたら、体を悪くしますよ」……寝ていたら?俺、寝ていたのか?体を起こそうとしたら、手のひらに砂の感触……俺、ベッドで寝ていたんじゃ? ペトリ「うわっ」顔に触れた何かの感触に、俺は思わず声をあげた。ぼんやりしていた視界がクリアになる。胸元に一枚……これは、カジュマルの葉?……ああ、そうだ。俺は、温室で……あれ?「お目覚めになりましたか?」「ああ、うん……」……なんだ?「花江さん、化粧を変えた?」「どうしたんですか、突然」「いつもより、若く見える」俺の言葉に、花江さんが照れて俺の背中を叩いた。思いのほか、力が強い。痛い。「娘が誕生日にくれた化粧品の効果でしょうかね」……いや、そういうレベルの話じゃない。違う。変だ。俺の知っている花江さんは、年をとったお婆さんだ。これは、夢か?いや、夢なら、痛みは感じないとよく言う。だから、きっと、夢ではない。「春ですからね、のんびりお昼寝したい気持ちもわかりますよ」「……春」「でも、来週には四月になりますよ。気合い入れてくださいませ。奥様も期待していらっしゃるのですから」「奥様って、綾子が?」花江さんが、首を傾げた。「田沢家の、綾子様ですか? ご婚約が決まったのですか?」田沢、綾子?婚約?戸惑う俺とは対照的に、花江さんは首を縦に振る。何か分かったように、ウンウンと頷いている。「ここだけの話ですが、奥様は洋輔さんの女性関係に疲れておられましたから。ご婚約者をお決めになって、奥様を安心させることは素晴らしい親孝行

  • 見つからないパズルピース   31

    「唯の死を知り、あの者たちに復讐をしようと思いました。でも五人も殺すのは難しい」確かに。日本の警察は優秀だ。「しかも綾子は草薙夫人として普段から守られていますからね。どうしようかと悩みましたよ」「それで祈祷師か」小林陽翔はにこりと笑った。 「最初は、墨田聡に近づきました。あなたの使いの振りをして。森川唯が死んだこと、三沢加奈から墨田聡が森川唯を暴行したと聞いたが本当か、と」当然、墨田聡は否定した。それでも、何度も小林陽翔は「本当か」と墨田聡を問い質した。小林陽翔のしたことは、それだけ。三沢加奈を殺せとも、何も言っていない。しかし、三沢加奈は死んだ。墨田聡の単独か、それとも風間夫婦も協力したのかは分からない。 「次に、風間奈美に近づきました。三沢加奈の遺族から頼まれた弁護士だと言って、墨田聡について彼女に尋ねた。当然知らないと風間奈美は否定したが、三沢加奈から聞いているとだけ言って、墨田聡について聞き続けた」三沢加奈のときと同じ。ただ小林陽翔は聞いただけ。そして墨田聡は死んだ。風間奈美か風間太一の単独犯か、それとも夫婦で協力したのかは分からない。「私は風間奈美と風間太一、別々に接触した。風間奈美にはそのまま三沢加奈関連の弁護士として、不審な金の流れがあるから警察が風間太一を探っていると伝えた。風間太一には警察と名乗って、不審な金の流れがあるから風間奈美について捜査していると伝えた」金については、唯のノートに書いてあった。金のために、自分の人生はめちゃくちゃになったと。風間奈美の前で、風間太一は唯を犯した。二人の間に”愛”はないと、小林陽翔は思ったのだろう。すでに殺人を犯すという禁忌の域にあった二人は、それぞれ相手を殺そうと思った。だから、別の毒。同じタイミングで死んだのはただの偶然。

  • 見つからないパズルピース   5

    「あの子のことを金目当てだと思っていた。そのために、婚約者から男を寝取る女だと思っていた」母さんの表情が歪んだ。「そういう女が、昔から嫌いだった。そういう女が昔から私のもとにたくさん来たから」「それは、父さんの?」「ええ。面白いのよ、みんな、判を押したように同じことを言うの。あの人の子どもを妊娠した、彼が愛しているのは私なのだから早く妻の座を退け。嫌なら、慰謝料を払え。違うのは金額くらいね」「しかし、父さんは……」「分かっているわ。あの人に、そんなことはできない」父さんは本当に体が弱かった。唯一の後継者として肩書きこそ副社長だったが、当時専務だった母さんの実力が認めはじめると仕

  • 見つからないパズルピース   1-3

    「お帰りなさいませ、旦那様」花江さんは、俺が『坊ちゃま』と呼ばれる頃から家に来てくれているお手伝いさん。俺の周りにいる人の中で中で最も母親らしい女性。「ただいま。綾子は?」花江さんが困ったような顔をする。「いつも通りってことか」花江さんは、曖昧に笑って俺の言葉を肯定した。綾子は離れで生活している。閉じ籠って、会社に行っている俺や母さんと違って日中ずっと邸内にいる花江さんですらろくに見かけないらしい。全ての窓と扉の前には盛り塩。さらに週に一回は祈祷師がやってくる。その日は一日中離れから読経が聞こえ、残りの日は祈祷師から購入したらしい香の香りがこちら

  • 見つからないパズルピース   1-2

    【彼女】とは別れたあと一度も会わなかった。【彼女】から連絡をもらったこともなかった。それだけど、胎児は俺の子だとすぐに分かった。なぜ、そう思えたのか。なぜ、疑問の一つも持たなかったのか。この『なぜ』が、俺の長いパズルの始まり。.あの日から俺はずっと、【彼女】の跡を辿ってパズルのピースを探している。警察が調べて分かったことでは、俺には全然足りないから。あの日からずっと、俺は未完成のパズルを眺めている。真実のピースは、びたりとはまる。しかし、ほとんどのピースは俺の推測や希望で歪んでいた。根拠のない想像は寝る間を惜しんで形を整えても歪みは直らず、無理やりはめても隙間だら

  • 見つからないパズルピース   【第一章】追走路

    【彼女】の死は、事故死だったのか。 それとも自殺、だったのか。 ずっと、その答えを探している。 その答えを知っているのは【彼女】だけ。 その【彼女】は死んだ。 【彼女】が死んだのは、俺が妻の綾子と結婚した日だった。 *   『草薙洋輔さんの携帯電話でよろしいでしょうか』 その電話がきたのは、綾子との式を終え、そのまま旅立った新婚旅行先だった。隣では、夜を共にした綾子が眠っていた。そんなベッドで、あの電話をとった俺が悪い。綾子を抱いたベッドにいる俺に、【彼女】の死を報せてきた警察に非はない。.警察は【彼女】死んだことを告げたあと、【彼女】の身元の確認のために署に来てほしい

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