【彼女】とは別れたあと一度も会わなかったし、【彼女】から連絡をもらったこともなかったのに、俺の子だとすぐに分かった。なぜ、そう思えたのか。なぜ、疑問の一つも持たなかったのか。この『なぜ』が、パズルの始まり。あの日から俺はずっと、【彼女】の跡を辿ってパズルのピースを探している。警察が調べて分かったことは、俺には全然足りない。あの日からずっと、俺は未完成のパズルを眺めている。真実のピースは、びたりとはまるだろう。しかし、ほとんどのピースは俺の推測や希望で歪んでいる。根拠のない想像は寝る間を惜しんで形を整えても歪みは直らず、無理やりはめても隙間だらけでパズルは歪になる。彼女しか知らない理由は、ぽかりと穴があいたまま。 *警察は、崖下で火が燃えているという地元住民からの通報で現場に駆けつけたという。現場では燃えていた車の中に、運転席に【彼女】はいた。救出が困難で長く燃え続けた【彼女】。【彼女】だと身元の分かるものはすべて焼けてしまっていたため、【彼女】は検死解剖にまわされた。注射でさえも痛くて嫌いだと泣いていた【彼女】。そんな【彼女】が、死後とはいえ切り刻まれたと思うと、今でもいろいろな感情が渦巻いてしまう。でも、それで【あの子】が見つかった。顔も分からないほど焼け焦げた【彼女】とは対照的に、【あの子】に焼損はほとんどなかった。【彼女】の気道には煤があまりなく、【彼女】はおそらく即死だったという検死の結果には少しだけ救われた気がする。 ·周辺の防犯カメラから、焼けた車両がレンタカーだったと割り出した。レンタカーを借りたのは【彼女】だった。でも、【彼女】が借りたレンタカーで夜中にあんな山道を走っていた理由、山道を下っていたことからどこからかの帰り道だと予測はされているがどこに行っていたのかも、まだ分かっていない。【彼女】は事故があった山の麓の小さな街に、アパートを借りて住んでいた。アパートにあったゴミ箱から【彼女】の髪の毛が採取されたが、警察の聞き込みで近隣住民から【彼女】が健診を受けていた産婦人科を見つけた。警察が俺に連絡をくれたのは、【彼女】が病院に提出した書類の緊急連絡先に俺が書かれていたからだった。【彼女】が緊急連絡先になぜ俺のことを書いたのか。真実は分からない。でも、俺への信
Last Updated : 2026-01-07 Read more