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第4話

Autor: はやかわ
私はその場から動けなかった。

あの会社は、京也と2人でゼロから立ち上げたものだった。

昼も夜もなく働いて、ようやくここまで育ててきた。

それなのに夕愛のためなら、京也は私をこんなにもあっさり切り捨てられるんだ。

「あ、そうだ。私たち、明日結婚式なの。

京也がね、もう清花に変な期待を持たせたくないから、私とのことも早くちゃんとしたいって」

夕愛は、まるで何でもないことのように言った。

その言葉で、心のどこかに残っていた最後の期待まで消えた。

私は少し膨らみ始めたお腹にそっと手を当て、力なく笑った。

この5年、私は何度も京也に結婚式を挙げたいと言ってきた。

でも京也はそのたびに、今は仕事が大事だからと先延ばしにした。

いつか必ず、誰もが羨むような盛大な式を挙げようと、京也は何度も約束してくれた。

私はその言葉を信じて、ずっと待っていた。

けれど、1年、また1年と過ぎても、その約束が叶うことはなかった。

それなのに、夕愛が望んだだけで、京也はあっさり結婚を決めた。

私が5年待っても手に入らなかったものを、夕愛には簡単に与えた。

喉の奥が詰まり、こらえていた涙がまた頬を伝った。

私はかすれた声で、ようやく言った。

「……なんで私にそんな話するの?」

私の様子を見て、夕愛は一瞬だけ言葉に詰まった。

けれど、すぐに何事もなかったように口を開いた。

「来てほしいの。清花は、私にとってたった1人の親友だから。

それに、ブライズメイドも清花にお願いしたいの」

……

翌朝、空が白み始めたばかりの頃、京也の車が時間どおり清花のマンションの前に止まった。

清花を結婚式へ連れていくため、京也自身が迎えに来たのだ。

清花にはもう愛想を尽かしていたが、夕愛にとってはたった1人の親友だった。

それに、自分も長年付き合ってきた情があった。

ところが、いくら待っても清花は現れなかった。

部屋の窓にも明かりはつかず、降りてくる気配もなかった。

しばらく待った末、京也は清花に電話をかけた。

だが、電話に出たのは見知らぬ男だった。

その声を聞いた瞬間、京也の眉間にしわが寄った。

「誰だ、お前?清花は?まさか、俺に隠れて男でもできたのか?」

自分が先に裏切っておきながら、清花の電話に別の男が出た途端、京也の腹の底から怒りがこみ上げた。

少し間を置いて、電話の向こうから落ち着いた声が返ってきた。

「伊藤京也さんですか?夏川さんの手術を担当した医師です」

その言葉に、京也の顔色が変わった。

「手術……?

清花に何かあったんですか?何の手術ですか?」

医師は少し黙ってから、静かな声で告げた。

「夏川さんは先ほど、中絶手術を終えました。

帰る前に、伊藤さんへ伝えてほしいと頼まれまして。

遠くへ行くそうで、お2人の結婚式には出席しないそうです。

それから――『お2人とも、どうぞお幸せに』と」

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