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記憶を失った婚約者は、かつての想い人に恋をした
記憶を失った婚約者は、かつての想い人に恋をした
Penulis: ゆたか

第1章

Penulis: ゆたか
「森川美由希さんでいらっしゃいますか?藤崎遼平さんが交通事故に遭われました。緊急連絡先が森川さんになっているんですが、至急、病院へお越しください」

「はい、すぐ伺います」

私は震える手で電話を切り、気が気でないまま病院へ急いだ。

「ミユ?」

胸に喜びが広がった。私のこと、忘れていなかったんだ!

頭に巻かれた包帯を見ると胸が痛み、声が詰まった。急いでそばに寄り、抱きしめようとしたけれど、傷に触れてしまいそうでためらう。

「遼平、すごく心配したんだよ。痛かったでしょう」

ところが、彼は嫌悪をあらわにして私を避けた。

「失せろ!」

私はその場で固まった。

そのとき、病室のドアが再び開いた。

顔を上げた彼の表情から険しさが消え、隠しきれない喜びが浮かぶ。

「ミユ、来てくれたんだ!今すぐ人を呼んで、どこの誰だか知らないが、目の見えないこの女を追い出すから」

胸に針を刺されたようだった。

振り返ると、入り口に私とよく似た顔の女性が立っていた。私はさらに身をこわばらせた。

「その人、誰?」

薄々察しはついていた。それでも、聞かずにはいられなかった。

遼平は、まるで知らない人を見るような目を私に向けた。そこには、隠しようもない嫌悪があった。

「お前こそ誰だよ。彼女のことを聞く立場がないだろう?!3秒以内に出ていけ!」

そう言うと、私の後ろにいる女性へ優しく両腕を広げた。

「そんなひどい顔で、俺の大事な彼女を怖がらせるな」

彼女はその腕の中へ歩み寄り、遼平はそのまま抱き寄せた。

「相沢美優(あいざわ みゆ)です。あなたは?」

彼の胸に身を寄せたまま、美優は柔らかな声で尋ねた。けれど、その目は挑発的だった。

遼平が愛おしげに彼女の唇の端へキスを落とす。

「相手にするなよ。どうせ下心があって来た目の見えない女だ。ミユは俺だけ見てればいい」

「もう、遼平さんったら」

美優の目に喜びが浮かび、恥ずかしそうに顔をほころばせた。

2人がいちゃつく姿を見るのが、たまらなくつらかった。

何より耐えられないのは、本当の婚約者である私を忘れたのに、なぜ美優とはこんなにも親しいのかということだった。

ほんの数時間前まで、傘を忘れないよう気遣ってくれた人が、今は私によく似た別の女性を愛おしげに見つめている。どうしても受け入れられなかった。

それでも、頭の包帯を見て必死に深呼吸をした。問い詰めたい気持ちも、2人を引き離したい衝動も、どうにか押し込めた。

顔が似ていることも、彼女がここにいる理由も、考えないようにした。

「遼平、私はあなたの婚約者……」

ようやく気持ちを整え、落ち着いて事情を話そうとしたとき、ドアが勢いよく開いて、びくりと肩が跳ねた。

彼はやっと美優から目を離し、私を一瞥した。

「こいつをつまみ出せ!」

私は目を見開いた。

ボディーガードの2人は一瞬ためらったものの、私の手をつかんで外へ引きずり出そうとした。

必死に抵抗した。でも、大柄な2人にはまるでかなわず、ついに叫んだ。

「私はあなたの婚約者なの!」

遼平は眉をひそめ、一瞬ぼんやりした目をした。そして、2人に手を止めるよう合図した。

「お前が、俺の婚約者?」

希望が湧き、私は慌ててうなずいた。

「そう!あと1週間で婚約パーティーを開くでしょう」

美優が彼を抱きしめ、なだめるように声をかけた。

「遼平さん、どうしたの?また頭が痛む?」

彼の目に焦点が戻った。

次の瞬間、私は容赦なく放り出された。床に激しく体を打ちつけ、腕の皮膚が広く擦りむけて、焼けるように痛んだ。

ドアが閉まる直前、彼のせせら笑う声が聞こえた。

「婚約者だって?よく言えたもんだな。自分の顔を鏡で見たことないのか」

そして、声が甘く変わった。

「俺の婚約者はミユだけだよ。そうだろ?」

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