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第4話

Auteur: 愛しき影
彩華の苦しげな声が瞬時に涼介の注意を奪った。

彼は私を振り返り、冷たく言った。「これで満足か!」

そして、家族全員が大慌てで彩華を抱え、病院へと駆け出して行った。

去り際、母は振り返って私に怒鳴った。「この疫病神!」

足の感覚がなくなるまで、私はその場に立ち尽くしていた。そうしてようやく、あの家政婦用の部屋へと足を踏み入れた。

心身の疲労が限界に達し、私は小さなシングルベッドに倒れ込むと、泥のように眠った。

どれくらい時間が経っただろうか。私は乱暴に引きずり起こされて目が覚めた。

涼介が血走った目で私をベッドから引きずり下ろしていた。「里奈!お前はなんて性根が腐ってるんだ!」

寝起きで意識が朦朧としている私に、彼は頭ごなしに怒声を浴びせた。

「彩華が病院に運ばれたのを知っていながら、マンゴーアレルギーの彼女にわざとマンゴーミルクレープを送りつけるなんて!逆恨みして呪い殺すつもりか!」

私は呆然とした。

マンゴーミルクレープ?私がいつそんなものを注文したというの?

あまりの馬鹿馬鹿しさに、怒りを通り越して笑いが込み上げてきた。

「涼介、私を馬鹿だと思ってるの?わざわざ足がつくような真似をして、『どうぞ捕まえてください』なんて待ってるわけないでしょ」

「お前以外に誰がいる!スイーツ店の伝票には、はっきりとお前の携帯番号と名前が書かれていたんだぞ!」

涼介はスマホを私の目の前に叩きつけ、怒鳴った。「里奈、お前には心底失望したよ!」

――失望?失望したのはこっちよ!

彩華に関わることになると、彼は盲目的に彼女を信じ、すべての罪を私になすりつけた。

「好きに思えばいいわ」私はこれ以上弁明する気にもなれなかった。

「私がやったと思うなら、警察に通報すればいい」

そう言い捨てると、私は涼介を突き退け、反吐が出るようなこの家から飛び出した。

理央にこのことを話すと、彼女は電話の向こうで激怒した。

「はあ?それ、どう見てもあの女の自作自演じゃない!加害者のくせに被害者ぶって!涼介の目が節穴なの?そんなこともわからないわけ?」

「わかってるわよ。彼は当然わかってる」

私はかぶりを振った。胸の奥を寒々しい風が吹き抜けていった。

「彼の心の中では、真実よりもあの女のほうが大事なのよ」

間もなくして、母から電話がかかってきた。

「里奈!私はどうしてあなたみたいな性悪な娘が生まれたのかしら!彩華がいったい何をしたっていうの!何の恨みがあって、あの子をこんな目に合わせるのよ!」

私は静かに聞いていた。母が罵り疲れるのを待って、淡々と口を開いた。

「お母さん、知っていますか?私が白川家に戻された最初の年、こっそり親子鑑定をしたんです。

実の母親が長年生き別れていた娘に対してこんなに冷淡だなんて、どうしても信じられなかったからです」

電話の向こうで、母が息を呑む気配がした。

私は続けた。「結果、私たちは本当に親子でした。でも、私はちっとも嬉しくはなかったです。

わかったんです。血の繋がりなんて、何の意味もないんだって。二十年以上にわたる偏愛はもうお母さんの骨の髄まで染み付いているんですよ。お母さんの心の中では、彩華だけが唯一の娘なんでしょうね」

「でたらめを言うんじゃないわよ!」母は鋭く反論したが、その声には微かな動揺が滲んでいた。

「そうですか?」

私はそれ以上問い詰めず、静かに言った。「お母さん、そう呼ぶのはこれが最後です。これからあなたの娘は彩華だけ。私たちはもう赤の他人ですから」

そう言い終わると、私は電話を切った。

悲しみはなかった。ただ、かつてないほどの解放感があった。

重い荷物を背負って長く歩き続けた旅人がようやくすべての荷を下ろしたような気分だった。

理央から電話がかかってきた。彼女の声は興奮に満ちていた。「里奈!全部手配できたわ!

海外事務所の登録は済ませたわ。立ち上げメンバーも私が組んでおいた、業界きっての精鋭揃いよ!資産の移動もバッチリ。準備は万端。あとはあなたが引き金を引くだけよ!」

「ええ」私は答えた。

「でも……」理央の口調が心配そうになった。

「本当に捨てられるの?国内のすべて、それに……陽翔くんのことも」

――捨てられるか?

私は目を閉じた。

脳裏に浮かぶのは交通事故の日、病室で見せた三人の醜悪な顔だった。

彼らが私を騙していた時、躊躇など微塵もなかった。

涼介は昔、私は情に厚い人間だと言った。私自身も未練が残ると思っていた。

私は笑った。けれど瞳の奥は冷え切っていた。

「今の私は、すべてを切り捨てたい気持ちのほうが、未練よりも大きいの。

涼介は私を意のままに操れると思っているみたいだけど、そろそろ彼にも特別なプレゼントを贈らないとね」

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