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第4話

作者: きょうう

瑠花の目から涙がこぼれ、華奢な体がふらりと揺れた。

「雨音を責めないで……悪いのは全部私なの。外に出たら、雨音があの男と楽しそうに話してて……心配になって注意しただけなのに、お節介だなんて言われて」

瑠花は胸を押さえ、痛々しく言った。

「私が傷つくのは構わない。ただ……晃成まで悲しむ姿を見るのがつらいの……」

背筋に冷たいものが走る。口を開こうとした瞬間、秘書が割って入った。

「先ほど、奥様をお迎えに伺いましたが……どうしてもあの男と一緒に行こうとされまして……」

瑠花が息を呑んだ。

「まさか……雨音、どうしてあの男と……もしかして、お腹の子が……」

言いかけて、慌てて口を押さえた。

「ごめんなさい、そういう意味じゃ……」

晃成は思いのほか冷静だった。ただ冷たい目で私を見据えた。

「君の腹の子が俺の子だと信じてる。だが、瑠花に手を出すのは許さん。彼女は君の姉だろう?」

……子ども?

私は自嘲気味に笑った。

「晃成、本当に私たちの子どもが欲しいと思ってるの?」

彼の表情が一瞬で強張り、すぐに矛先を変えた。

「今まで信じてきたのに、俺を疑うのか?」

吐き捨てると、彼は旭に冷たく命じた。

「雨音を家に連れ帰れ。俺の許可なく外へ出すな」

言い残す間もなく、晃成は瑠花を抱き上げ、足早に去っていった。

旭が笑みを消し、私の前に立った。

「本来なら連れ帰るつもりだった。だが、お前は知りすぎた。あの日、扉の前にいたな。お前の落とし物を拾ったんだ。悪い、始末するしかない」

彼は車のトランクから木製バットを取り出し、例の運転手が私の腕を背後でねじ上げた。

抵抗する暇もなく、鈍い音とともに脚の骨が砕け、次いで腕が折れた。

悲鳴も出せず、私は地面に崩れ落ちた。

這うことすらできず、泥にまみれ、荒い息を繰り返すだけだった。

意識が戻ったとき、もう夜だった。

首に鎖を巻かれ、あの日の忌まわしい部屋に監禁されていた。

旭は毎日、晃成と瑠花の様子を生中継してきた。

画面には、買い物に付き添い、靴を履かせ、手料理を振る舞う晃成。私には一度も向けられなかった優しさだった。

彼は瑠花の息子にも優しく、必ず病気を治すと約束していた。

最初は平静を装っていた私も、やがて感情が麻痺し、涙さえ枯れた。

ある日、旭はついに興味を失ったのか、スマホを冷徹に放り投げた。

「終わりにしよう」

場所は公海、かつて私が折に触れて訪れていた場所だった。

言い訳もできている。「刺激を受け、投身自殺を図った」と。

私は抵抗しなかった。這ってスマホに近づき、顔認証でロックを解除し、舌で位置情報を入力した。

彼らは興味すら示さなかった。死に際のあがきなど、むしろ面白いのだろう。

目的地に着くと、二人は私を海へ投げ込んだ。

海水が肺に流れ込み、意識が遠のく。そのとき、体がふと軽くなった。

……その後、誰かが私を甲板に引き上げ、そっと寝かせてくれた。

その手はすぐに、びしょ濡れのまま鳴り続ける私のスマホを取り出し、通話を繋ぐと、それを私の耳元へそっと差し出した。

「雨音、もう一度だけチャンスをやる。瑠花にちゃんと謝れば、戻ってやる」

塩と血の味が喉を焼いた。

私は掠れた声で、一文字ずつ絞り出した。

「晃成。今日から、生きても死んでも……あなたの顔なんて、もう二度と見たくない」
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