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28.夢で逢えたら

last update 최신 업데이트: 2025-09-28 20:03:58
「わぁ、その本、知ってる!続きが今度、発売されるみたいで気になっているんだ!」

夢の中で、中学の制服を着た当時の私が、誰かに向かって話しかけていた。

(あれ、この会話、話した覚えがある―――。たしか中学の時……)

あと少しで思い出せる、そう思った時、視界が急に明るくなり私は目が覚めて、ゆっくりと瞼を開けた。

「なんで、こんな夢を見たんだろう?」

中学の時の思い出なんて他にもいっぱいある。初めて彼氏ができたのも中学一年生の時だし、一緒に帰り道を歩いたり、夏祭りで花火を見たりした。それなのに、なぜこのシーンが夢に出てきたのだろうか。

布団の中でぼんやりと考えていたが、夢の中で見た『その本』が、昨日、律の部屋にあったものだと分かり、途端に気分が悪くなった。

「そうだ、私、あの本二巻までは読んだんだ。三巻も楽しみにしていたのに、発売が遅れることになって、熱が冷めて読まなくなったんだった。あーでも、夢で律を連想させるって、なんか……すごく、嫌な感じ。」

私は急に目が冴えて、豪快に布団をめくってから洗面所に向かい、顔に冷たい水を何度もかけた。蛇口から流れ出る水の音に紛れて、Yシャツ姿の律と、律の胸に顔を寄せて微笑む女性の姿が浮かんでくる。

「あーもう、いやいや!本のことも律のことも忘れるんだから!」

気分転換とストレス発散をしたくなり、この日はジムに行きパーソナルレッスンで汗を流すことにした。完全会員制で他の会員と顔を合わせることもなく、自分のトレーニングに集中できるところが気に入っていた。

「あれ、今日なんだか気合い入っていますね。もうワンセット追加しましょうか」

プルプルと震えながらウエイトをこなす私に、トレーナーは笑顔でさらなる追加を言ってきた。

『もう、鬼……!』

心の中でそう呟きながらも、私は必死で追加のセットもこなした。レッスンが終わると心地よい疲労感に包まれて、朝の気分もすっかり良くなっていた。

シャワーを終えて、スマホを見ると律からメッセージが来ていた。

「来週、海外への事業進出を祝って取引先も含めたレセプションパーティーを行う。準備しておけ」

「分かりました」

特に何も考えずに短く返事をした。

しかし、その取引先は、あの人の会社で、まさか会場で顔を合わせることになるだなんて、その時の私は思いもしなかった。
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