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第322話

Author: ドドポ
今になっても、駆には澪が一体どんな目に遭ったのか見当もつかなかった。

ただ分かっているのは、明日が自分の結婚式であるにもかかわらず、結婚などしたくないし、眠れもしないということだけだ。

彼がベッドで寝返りを打ちながら眠れぬ夜を過ごしていた時、突然見知らぬ番号からのMMSが届き、彼は完全に目を覚ました。

メッセージには写真が一枚添付されているだけだった。

背景は夜の廃墟のような港で、被写体は一台のスマホだった。

他のものはともかく、そのスマホには見覚えがあった。

澪のスマホだ。

駆は最初、一体誰が何の目的でこんな写真を送ってきたのかと疑った。だがその後、自分の部屋を出て澪に連絡を取ろうとしても繋がらず、さらには綾川市の逃亡犯がM国へ逃げ込み、千雪を拉致して洵を脅迫しているという噂まで耳に入ってきた。

それらの情報が重なり、駆はパニックに陥った。

彼は大急ぎで写真を頼りに港を探し回り、そして本当にそこで澪を発見したのだ。

澪は全身ずぶ濡れで、まるで海から這い上がってきたかのようだった。疲労困憊の体を引きずりながら、くっきりと水を引きずった痕跡を残していた。

だが、結局
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中村 由美
ジョーカーの狙いは分からないけど、助かって良かった。
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    今になっても、駆には澪が一体どんな目に遭ったのか見当もつかなかった。ただ分かっているのは、明日が自分の結婚式であるにもかかわらず、結婚などしたくないし、眠れもしないということだけだ。彼がベッドで寝返りを打ちながら眠れぬ夜を過ごしていた時、突然見知らぬ番号からのMMSが届き、彼は完全に目を覚ました。メッセージには写真が一枚添付されているだけだった。背景は夜の廃墟のような港で、被写体は一台のスマホだった。他のものはともかく、そのスマホには見覚えがあった。澪のスマホだ。駆は最初、一体誰が何の目的でこんな写真を送ってきたのかと疑った。だがその後、自分の部屋を出て澪に連絡を取ろうとしても繋がらず、さらには綾川市の逃亡犯がM国へ逃げ込み、千雪を拉致して洵を脅迫しているという噂まで耳に入ってきた。それらの情報が重なり、駆はパニックに陥った。彼は大急ぎで写真を頼りに港を探し回り、そして本当にそこで澪を発見したのだ。澪は全身ずぶ濡れで、まるで海から這い上がってきたかのようだった。疲労困憊の体を引きずりながら、くっきりと水を引きずった痕跡を残していた。だが、結局体力は限界に達し、地面に倒れ伏していた。彼女のスマホは、すぐそばに落ちていた。しかし、スマホは壊れておらず、濡れてもいなかった。駆は不自然だと思った。澪の様子からして、何か重大な事件に巻き込まれたことは間違いない。そして、あの写真を送ってきた人物は、自分に澪を助けさせたかったのだろう。問題は、なぜ自分なのか?一体ということだ?澪は洵の妻であり、結婚式に出席する者なら誰でも知っている事実だ。相手は洵ではなく、自分に連絡してきた……駆は、この裏に何か企みがあるような気がしてならなかった。だが、たとえ相手の動機が不純であったとしても、結果的に自分は大きな助けを得たことになる。駆は思った。これはきっと天の配剤だろう、と。神様が自分と澪の間に縁を繋いでくれたのだから、このチャンスを逃さない。そうして、駆は気を失った澪をアズール・ベイの私邸へと連れてきた。澪の手には、鋭利なもので切られたような傷があり、手首にも何かに擦り剥かれた明らかな痕があった。駆は澪の傷の手当てをし、薬を塗り、そしてずぶ濡れになったドレスを脱がせた。澪が着ていたの

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