LOGIN炎天下に立ち尽くし、確かに額には大粒の汗が浮かんでいる。よく冷えた緑豆の汁粉がもらえると聞いて、誰もが思わず生唾を飲み込んだ。沈薬がさらに続けた。「今日から、夏が終わるまで毎日午後に一杯ずつ緑豆の汁粉を用意しますね。もし、一杯で足りなければ、おかわりしてもいいですから。それと、もし他に欲しいものがあれば、遠慮なく青雀に言ってください。できるだけ、私の方で手配しますので」皆が口々に感謝を述べる。沈薬は心の中で思った。これが義姉の言っていた「飴と鞭」というものかしら?少しの間、日の当たる所に立たせておいて、その後に暑さしのぎの緑豆の汁粉を与える。彼らは王妃として自分を敬い、同時にその恩情を記憶に刻むだろう。これで、これから何かをするにも随分と楽になるはずだ。院の者たち全員の顔を覚えた後、沈薬は帳簿に目を通し始めた。丘山が言っていた通り、彼はこの手のことに全くの素人で、帳簿はめちゃくちゃ、筆で書かれた文字もミミズが這ったような有り様だ。帳簿の読み込みに集中していた沈薬は、思わず時間を忘れてしまっていた。「王妃様。そろそろお休みになってはいかがですか?これ以上ご覧になっては、目を悪くしてしまわれますよ」外から青雀が入ってきて、沈薬に声をかける。沈薬はその墨の線の塊が何と書かれているのか判読しながら、何気なく尋ねた。「今何時?」「亥の刻でございます」沈薬ははっとして顔を上げた。だが、長くうつむき続けていたため、首から肩にかけてすっかり凝り固まっており、少し動かしただけで鈍く痛んだ。沈薬は小さく息を吸い込み、首を揉みながら、墨を流したように真っ暗な外の夜闇を見つめる。まさかこんなに経っていたとは。今日はまだ、周叔母様に会いに行っていないのに。……晩香堂(バンコウドウ)。周氏(シュウシ)は眉間に深いしわを寄せ、机を強く叩いた。「あの沈家の娘、目上の私を蔑ろにするなんて!」彼女の下の娘である薛皎月(セツコウゲツ)は傍らで刺繍をしながら、顔も上げずに言った。「お母様、靖王妃様は何も間違っていませんわ。だって、お母様は靖王妃様の叔母にあたるのでしょう?この世の中のどこに、嫁いできた翌日、叔母に挨拶しなければならないなんてしきたりがあるんですか?」「この家を切り盛りしているのは私なのよ!」
不意を突かれた沈薬は驚き、思わず指が震え、茶色がかった煎じ薬を数滴、謝淵の口元にこぼしてしまった。急いで袖から手巾を取り出そうとした沈薬の指が、焦った拍子に謝淵の頬に触れる。謝淵のまつ毛が、突然二度震えた。しかし沈薬は丘山の方を振り返っていたため、それに気がつかなかった。緊張から心臓が高鳴っている沈薬は、丘山を見つめる。幸い、丘山は沈薬の動揺には気づいておらず、顎を撫でながら考え込んでいた。「着替えと体拭きをするには、どうしても靖王様の体を裏返すことになりますよね。でも、王妃様は女性ですから、靖王様を動かすほどの力はないでしょう。うーん、この仕事はやはり私どもにお任せください」沈薬は安堵の息をついた。気を取り直し、沈薬は手に持っていた手巾を置く。「あ、そうだ。あなたと銀朱以外、ここにいる人たちの顔をまだ覚えていないの。顔を見ておきたいから、全員呼んでくれるかしら?」「分かりました。ですが王妃様、一つ知っておいていただきたいことがございまして……」「何かしら?」「ここ靖王府は、二つの派閥に分かれておりまして、一つはこの院を中心とするもの、そしてもう一つはこの院の外側のものです。人員の配置にしても、支出の管理にしても、すべて別々になっています」沈薬は少し戸惑い、驚きの表情を浮かべる。「どうしてそうなったの?」「周叔母様を靖王府に迎え入れた時に、靖王様がそのように手配なさいました。一体なぜなのか、私はお聞きしたことはありません。ただ現在は、院の外はすべて周叔母様が管理し、院の中は……以前でしたら靖王様ご自身が目を光らせておられましたが、靖王様が昏睡状態になられてからは、私が一時的に引き継いでおります。しかし、私の管理が行き届かず、めちゃくちゃなので、周叔母様が何度か自分がやると言ってこられましたが、私は同意しませんでした……」丘山はそこまで言ってとても恥ずかしそうにし、沈薬を見た。「でも、これからは王妃様がいらっしゃるので安心です」まだそれほど接していないにもかかわらず、丘山はなぜかこの十七歳の娘に対して、絶対的な信頼感のようなものを抱いていたのだ。沈薬は何かを考え込むように黙った。嫁いでくる前は、靖王府がこんな状態になっているとは全く知らなかった。だがこの状況は、かえって安心できる。なぜなら、少
嫌悪したのではなく……王妃様はご自分の手で靖王様に薬を飲ませようということなのか?沈薬は丘山に手を差し出し、真剣な表情で言う。「そこをどいて。薬のお椀を頂戴」丘山は立ち上がり、寝台のそばに座る沈薬を見た。「では、王妃様。私たちはすぐに下がります」しかし、沈薬はかえって不思議そうな顔をした。「どうして?」丘山が真顔で答える。「王妃様が靖王様に薬をお飲ませになるのです。私たちがいては、お恥ずかしいでしょうし、しきたりにも反しますので」沈薬はますます不思議に思った。「薬を飲ませるだけなのに、何か見てはいけないことでもあるの?」丘山が気恥ずかしそうに頭を掻いた。「王妃様はこれから、靖王様に口移しで薬をお飲ませになるのでは?」沈薬は呆気にとられた。口移しで薬を?自分が煎じ薬を口に含み、謝淵の口に直接煎じ薬を流し込む……そういうことなのか?その光景を想像した沈薬の胸は激しく高鳴り、頬が熱くなった。彼女は焦って聞き返す。「意識のない人に口移しで薬を飲ませるなんて、誰がそんなこと言ってたの?」丘山が正直に答えた。「物語本にはみな、そう書いてありました」沈薬は言葉を失った。「物語本だって分かってるでしょ!」寝台の前に立ったままの丘山は、その純粋で真っ直ぐな目を瞬き、真っ直ぐに沈薬を見つめている。沈薬は固まった。丘山が彼と張り合ってどうするというのだろう?沈薬は深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。「物語本は想像上の話で、薬を飲ませることとは全く別なの。だから、口移しなんて必要ない……そうね、竹べらを探してきてくれるかしら?長さは指一本分、幅は指一本半。平らになるように削って、棘が残らないように注意して。それから、きれいに洗ってちょうだい」「わかりました……」丘山は沈薬が何をするのか理解できなかったが、とりあえず言われた通り、素直に従うことにした。すぐに、竹べらを持って戻ってきた丘山。沈薬は二人の下男に指示を出し、謝淵の頭の下にもう一つ枕を重ねさせると、竹べらの片方を謝淵の口に入れ、煎じ薬をすくい、竹べらに沿って流し込む。すると、煎じ薬は竹べらを伝って、絶え間なく謝淵の喉へと流れ込んでいった。丘山はそれを見て、驚きの表情を浮かべた。「薬を飲ませるのがこんなに簡単だったなんて!」沈薬は鼻を鳴らす。「これか
「叔母上」という言葉に、謝景初は眉をひそめた。「いい気になっているかと言えば……」沈薬が続ける。「この結婚は私自身が望んだもので、願いが叶ったのだから、もちろん喜びでいっぱい。皇太子殿下も、もちろん承知の上で聞いてきたのよね?」謝景初は彼女の言葉に腹を立て、激しく咳き込んだ。しかし、沈薬は少しも同情せず、すぐに半歩以上後退し、影響を受けない距離をとって冷ややかに言った。「皇太子殿下はここのところ体調を崩してるって聞いてるよ。だから、早く戻って薬を飲んで、しっかり休んだほうがいいんじゃないかな。私は先に皇帝陛下と皇后様へご挨拶に行かなきゃならないから」謝景初が答えるのも待たずに、沈薬は青雀と銀朱を連れてその場を後にした。沈薬が皇后のところにいると、朝議を終えた皇帝がやって来て、彼女を見つけるなり、喜びを露わにする。実は今日、朝廷の家臣たちがこの婚姻について皇帝を称賛していたのだ。元々盛朝の文官と武官は仲が悪く、三日に一度は小競り合い、五日に一度は大喧嘩をしていた。しかし今日、彼らが初めて意見を一致させたのだった。そのため、皇帝は大層気分をよくしていた。皇后はその機に乗じて沈薬を宮中に引き留め、食事をするように言い、沈薬もそれを断らなかった。沈薬が靖王府に帰ってきた頃には、もう太陽が昇り始めていた。すると、院の中を丘山が二人の下男を連れて部屋の方へ歩いている。沈薬は丘山に声をかけた。「何をしているの?」丘山は正直に答えた。「王妃様、この時間は靖王様に薬を飲ませる時間でございますので」彼の手にある木のお盆に、沈薬の視線が落ちる。そこには紫色の薬瓶が置かれており、昨夜謝淵の隣に寝ていた時に漂ってきた香りと全く同じ匂いがした。「王妃様、しばらく外でお待ちいただけますか?靖王様に薬を飲ませたらすぐに出てまいります」と、丘山が言った。「それと、靖王様の今の状態では、薬を飲ませるのも容易ではありませんので、少し時間がかかるかもしれません」しかし、沈薬はさらっと答える。「私も一緒に行くわ」聞き間違いかと思った丘山は、愕然とした表情を浮かべた。「一緒に……ですか?」沈薬が頷く。「ええ。私は靖王殿下の正室だもの、お世話をするのは当然の務めでしょ?今日は見てるから、やり方を教えてくれる?これから私が一人でできるよう
青雀は眉をひそめ、沈薬のために抗議する。「王妃様は今起きられたばかりなんですよ。なのに、なぜそんなに急かして行かせようとするんですか?」女官は鼻で笑った。「ええ、王妃様は将軍家の御出身で身分も高く、おまけに陛下から直々にお言葉を頂戴してのご婚姻ですからね。周叔母様のような未亡人など、眼中にないというのも無理はありませんわ」青雀ははっとして目を丸くした。「私がいつそんなことを言いましたか?」「ご自身の仰る意味すらご説明できないのなら、最初から何もおっしゃらないことですよ?」女官は二言三言で鮮やかに青雀を黙らせると、沈薬に向き直った。「王妃様、いかがでございますか?」こんな口うるさい女官を寄越すなんて、周叔母は祝言の翌日に沈薬に先制攻撃を仕掛け、威圧する気満々なのだろう。女官の鋭い視線を受け止め、沈薬はただ微笑んだ。「周叔母様にはご挨拶に伺わねばなりませんね」その声は穏やかで落ち着いていたが、「ご挨拶」という言葉が、どこか妙に女官の耳に引っかかった。女官が目を伏せる。「王妃様、誤解なさらないでください。ご挨拶ではなく、ただ少しお会いになっていただきたいんですよ」しかし沈薬はその言葉が聞こえなかったかのように言った。「薛将軍は靖王殿下をお救いするために命を落とされたお方です。そのご遺族が敬われるのは当然のこと。私も周叔母様のことは心から尊敬しておりますし、本日ご挨拶へ伺うのも、至極当然のことですから」この言葉にすっかり気を良くした女官が、得意げな表情になるのを見て、沈薬は口角を上げ、さらに続けた。「ですから、お手数ですが、宮中へ行ってきていただけますか?」女官が怪訝な顔をする。「宮中へ?」沈薬は微笑みながら頷いた。「ええ。宮中へ行って、『周叔母様は将軍の未亡人であり何よりも尊いお方ゆえ、沈薬はまず叔母様にご挨拶をしてからでないと、陛下と皇后様にお目にかかることができない』と伝えていただきたいんです」女官は呆気にとられ、少し動揺した。宮中の門をくぐれるかどうかは別として、皇帝や皇后よりも先に、沈薬を周叔母に会わせるなどと口にした瞬間、自分の首が飛ぶに決まっている。こんな失礼極まりないこと、できるわけがない!先ほどまでの威勢はすっかり影を潜め、女官は愛想笑いを浮かべた。「王妃様、ご冗談を。もちろん陛下と皇后様にご
化粧台は隣の部屋に用意されていた。楠の木で作られた精巧な品で、全体が艶やかな光沢を放っているため、新調されたものだと一目でわかる。台の上には指紋一つない菱花鏡と、彫刻が施された化粧箱が置かれていた。「王妃様の祝言の衣装をお召しになったお姿を、靖王様にご覧いただけなくて、本当に残念です」沈薬の付き人である侍女の青雀(セイジャク)が、沈薬の髪を梳かしながら細い声で言った。沈薬はそっと笑みを浮かべる。「残念なことなんてないわ。世の中には星の数ほど美しい人がいるもの。私なんて大したことないから」沈薬はまだ十七歳だが、謝淵は彼女より十も年上だった。自分より十年も長くこの世を経験している謝淵だ。雲霞の如く大勢の美しい女性を見てきたに違いない。妖艶な者、愛らしい者。自分のこの顔など、きっとありふれて見えることだろう。ましてや、それほどの美女に囲まれていながら、謝淵は長年誰とも結婚していない。噂によれば、彼には心に決めた人がいるという。堂々たる靖王殿下にこれほどまで深く愛される女性が、一体どれほど息を呑むような美貌の持ち主なのか、沈薬には想像もつかなかった。化粧を落とし終えた沈薬は、月光を溶かし込んだような淡青色の寝衣に着替える。丘山が真新しい枕と錦の布団を出し、謝淵の隣に敷いてくれていた。すべてが整い、皆が気を利かせて下がっていく。沈薬はそっと寝台に上がり、謝淵の隣に身を横たえた。初夜のために用意された寝台は十分に広く、二人の間にはまだ距離があった。しかし、沈薬は薬草の香りとともに、謝淵の体から伝わってくる体温を肌で感じた。父や兄と同じように、謝淵も常に体を鍛えていたため、体温が少し高めなのだろう。沈薬は寝返りを打った。夜も更け、月明かりも弱くなっていたが、婚礼の赤い蝋燭が勢いよく燃え、部屋中を明るく照らしている。暖かな蝋燭の光の下で、沈薬は謝淵の横顔をじっと見つめた。顔立ちは彫りが深く鋭さを帯びていて、その端正な輪郭にはどこか近寄りがたい迫力があった。長く濃い睫毛が影を落とし、その寝顔に静かな陰影を添えている。長い間昏睡状態にあるためか、謝淵の唇の色は少し薄く、顎には薄く無精髭が生えていた。沈薬はしばらく見つめた後、静かに口を開いた。「本当にごめんなさい。殿下の意識のない時に、嫁ぎたいなんて言っ