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第598話

Author: タロイモ団子
理玖の言葉を聞いた瞬間、紬は胸の奥をぎゅっと掴まれたような苦しさを覚えた。

――自分には彼を問い詰める立場もなければ、そんな資格もない。

今の二人は、互いの利害が一致しているから一緒にいるに過ぎないのだ。

理玖は素晴らしい男性だ。けれど、完璧な人間などこの世には存在しない。

もし本当にその時が来たなら、自分から静かにこの関係を終わらせよう。

「ええ、分かりましたわ。今の関係を解消したくなったら、いつでもおっしゃってください」

もともとは、彼の母親からの追及をかわすために始まった関係だった。

この役目なら、自分でなくても務まるはずだ。

だが、そんな紬のどこか投げやりな態度を見て、理玖は彼女が本気で機嫌を損ねているのだと察した。

少し表情を引き締めると、含みのある声で問いかける。

「……どうして彼女のことを忘れられないのか、その理由は聞かないのか?」

夢実が先ほど大声で叫んだおかげで、理玖もようやく当時の記憶を思い出していた。

かつて母校の大学で講演を行った際、停電の混乱に紛れて彼のスマホを盗もうとした女子学生がいたのだ。

ロックが解除された瞬間、液晶画面の光がそ
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