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第112話 星空の下のプロポーズ

مؤلف: 霜月イヅミ
last update آخر تحديث: 2025-11-21 20:39:14

 万雷の拍手と歓声は、いつまでも鳴り止むことがなかった。

 ライナスの逞しい腕に抱かれ、その胸に顔を埋めたまま、セレスティナはしばらく動けずにいた。彼の体の温もり、力強い鼓動、そして自分を包む匂いの全てが、長い旅路の末にたどり着いた安息の地そのものだった。涙はいつしか止まっていたが、込み上げる万感の想いが、彼女の体を小さく震わせる。

 ライナスは、彼女が落ち着くのを待って、そっとその体を離した。名残惜しさに震える肩を大きな手で支え、改めて彼女の顔を覗き込む。すみれ色の瞳は涙で潤み、頬は赤く染まっていたが、その輝きは王都へ発つ前よりも一層強く、深く澄んでいるように見えた。彼は満足げに口の端を上げると、民衆に向き直った。

「皆、聞いてくれ!」

 辺境伯の、腹の底から響くような声が轟くと、あれほど鳴り響いていた歓声がぴたりと止む。

「セレスティナは、アルトマイヤー家の名誉を回復し、そして我らの正義を王都に示してくれた。だが、見ての通り、長い旅で疲れている。今宵はゆっくりと休ませてやりたい。祝いの宴は、日を改めて開こう。今夜は皆、家族の元へ帰り、この勝利を静かに噛みしめてくれ」

 その言葉は、有無を言わせぬ覇気と、民を労わる温かさを同時に含んでいた。民衆は「おお!」と力強い同意の声を上げると、名残惜しそうに二人を見つめながらも、素直にその場を解散し始めた。彼らは、自分たちの主君が、何よりもその伴侶を大切に思っていることを理解していた。その事実が、彼らにとってはどんな盛大な宴よりも喜ばしいことだった。

 ライナスは、人々の波が引いていくのを見届けると、セレスティナに向かってそっと手を差し出した。

「帰るぞ、俺たちの城へ」

 その、ごく自然に発せられた「俺たちの」という言葉が、セレスティナの心を甘く痺れさせる。彼女はこくりと頷くと、その傷だらけで無骨な、けれど世界で一番頼もしい手を、自らの両手で包むように握った。

 二人が並んで城門をくぐると、そこには城の主立った者たちが勢揃いして、彼らの帰りを待ち構えていた。

 侍女頭のマルタ、副長のギデオンに代わって城の守りを預かっていた鉄狼団の幹部たち、そして、厨房や厩舎で働く者たちまで。彼らは民衆のように熱狂的な声
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