春の陽光がさんさんと降り注ぐ。 アルトマイヤー公爵家の庭園は、色とりどりの花々が咲き誇り、甘い香りに満ちていた。中でもひときわ目を引くのは、アーチ状の東屋に絡みつくように咲く純白の薔薇だ。その一つ一つの花弁は、まるで磨き上げられた絹のようになめらかな光沢を放っている。 その東屋の白い椅子に、一人の少女が腰掛けていた。 セレスティナ・アルトマイヤー。 この国の四大公爵家の一つ、アルトマイヤー家の令嬢である。陽光を弾いてきらめく銀糸の髪は柔らかく波打ち、背中まで豊かに流れていた。伏せられた睫毛が白い頬に影を落とし、手にした書物から顔を上げた瞬間に現れる瞳は、希少なスミレの花を溶かし込んだような美しい色をしていた。「セレスティナ。また難しい本を読んでいるのかい」 穏やかで深みのある声に顔を上げると、父であるアルトマイヤー公爵が優しい笑みを浮かべて立っていた。威厳のある顔立ちだが、娘に向ける眼差しはどこまでも温かい。「お父様。これは薬草学の古い文献ですの。昔の人は、このリリア草を解熱だけでなく、痛みを和らげるためにも使っていたようですわ」「ほう。君の知識欲にはいつも感心させられるよ。だが、たまには本を置いて、庭の景色を楽しむのもいいものだぞ。ごらん、今年も見事に咲いた」 父が指し示した先には、青々とした葉の間に可憐な花を咲かせた薬草園が広がっていた。セレスティナが幼い頃から父と共に手入れをしてきた、彼女にとって特別な場所だ。貴族の令嬢が土いじりなどと眉をひそめる者もいたが、父は決してそれを止めなかった。むしろ、歴史や紋章学、そして薬草学に至るまで、彼女が興味を持つあらゆる知識を惜しみなく与えてくれた。「ええ、本当に。今年のカモミールは、例年よりずっと香りが強い気がいたします」「君が愛情を込めて育てているからだろうな」 父は娘の隣に腰を下ろし、その銀髪を優しく撫でた。セレスティナは心地よさに目を細め、父の肩にそっと頭を預ける。この穏やかで満ち足りた時間が、彼女の世界のすべてだった。家族に愛され、婚約者にも恵まれ、未来は輝かしい光に満ちている。何の疑いもなく、そう信じていた。「そういえば、もうすぐアランが来る頃ではないか?」「ええ。今日は新しくできたカフェにお連れくださると」 アランとは、セレスティナの婚約者である子爵令息の名前だ。優しく快活な
Terakhir Diperbarui : 2025-08-04 Baca selengkapnya