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第7話

ผู้เขียน: レイ
翌日は結婚式の前日だった。屋敷では朝から使用人たちが慌ただしく新居の飾りつけに追われている。

「江川様のご希望で、この色の風船を飾るようにと」

「庭の百合は全部抜きなさい、薔薇を植えるの。江川様は薔薇がお好きだから」

「桐谷様と西原様の婚約写真は外して処分を。江川様のお気に召さないそうだ……

ほら、急ぎなさい、結婚式の飾りつけ、西原様はすべて江川様に一任するとおっしゃってたんだぞ!」

新居と呼ばれる部屋は、詩織の好み一色に染められていた。

枝里子は静かにスーツケースのジッパーを閉め、窓の外を見つめながら小さく息を吐いた。

もうすぐですべてから解放される。

そんなとき、越也と詩織が連れ立って部屋に入ってきた。

越也は室内を見回し、飾りつけに目を細めると、どこか掴みどころのない微笑みを浮かべた。

そして懐から、細工の煩雑な指輪を取り出し、枝里子の薬指に強引に嵌める。

「どうだ?サイズは合うか?」

指輪は根元まで届いたものの、指があまりにも細いため、すぐに緩んでくるりと回り、落ちかけた。

枝里子は淡々と見下ろし、一瞬で真実を見抜く。

「……これ、あの女の指に合わせたものでしょう」

越也の顔がこわばる。無表情の枝里子を前に、胸を締めつけられるような痛みが走った。

まるで、彼が夢見てきた婚礼など、枝里子にとっては何の意味もないかのように。

「……デザイナーの手違いだろう。もう一つ作らせる。

……枝里子、明日は俺たちの結婚式だ。嬉しくないのか?」

「まぁね」

気のない返事をすると、枝里子は指輪を外し、そのままカバンに放り込んだ。

「まだ用事があるから」そう言い残して背を向ける。

その夜。使用人がごみ箱から指輪を拾い、越也に差し出した。

「西原様……桐谷様が、これを捨てておられるのを見ました」

驚いてカバンを探った枝里子は、指輪がなくなっていることに気づく。

盗まれたのだ。

詩織が息を呑み、頬を紅潮させながらわざとらしく言った。

「結婚指輪なのに……桐谷さん、どうしてそんなことを?もしかして、私の存在が気に入らないのですか?」

彼女は目を伏せ、か細い声で続けた。

「でも……越也さんを放っておけなかったんです。もう十数時間も眠らずに、結婚式の準備をしていたので」

詩織の声は次第に熱を帯び、大胆さを増していった。

「結婚式は二人のことです。こんな態度じゃ、越也さんに不公平じゃありませんか?」

一見控えめで心配げな言葉が、越也の胸を確実に締めつける。

冷ややかな枝里子の態度と、日に日に膨らむ自分の期待が重なり、まるで自分が道化にされたような気分だった。

「……枝里子。いい加減にしろ。結婚を望んだのはお前だ。俺が一方的に押しつけたわけじゃない!

忘れたのか?この婚姻を必要としているのは俺じゃない。天涯孤独のお前のほうだ!」

自分は約束を守ったのに、なぜここまで彼女の顔色を伺わねばならないのか。

直後、枝里子は拳を固く握りしめ、低く吐き捨てた。

「……私は海外で築いた仕事も人生も、全部捨てて帰ってきたのよ。それが、庇護を乞う孤児に見えるのね。

なら、もう何も言うことはないわ。結婚式なんて興味ない。あなたたち二人で勝手に祝えばいい」

振り返ることなく背を向ける枝里子の姿に、越也はかすかな違和感を覚えた。

だが、その袖を詩織がそっと掴む。

「越也さん……手術の傷跡が、まだ痛むんです」

その一言に意識を奪われ、追いすがる言葉は喉の奥に消えた。

枝里子は静かに玄関のドアを閉め、携帯を靴箱に置き、SIMカードを引き抜くと、スーツケースを引いて空港へ向かった。

飛行機は夜明け前に離陸する。もうすぐ自分は生まれ変われる。

そうすれば、あの屋敷にも、あの二人にも、二度と関わらずに済むのだ。

越也、さようなら。

いつの日か、詩織の本性に気づくときが来るだろう。その瞬間のあなたの顔を思うと、今から楽しみでならないのだ。
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