会わない恋人

会わない恋人

last updateLast Updated : 2025-07-26
By:  釜瑪秋摩Completed
Language: Japanese
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容姿コンプレックスをもつ内気な女子高生 神林紀子(かんばやしきこ)は、代わり映えしない毎日を過ごしていた。 両親に購入してもらったスマートフォンを手にしたことで 窮屈で居心地の悪かった毎日が、少しずつ変わっていった。 インターネットの世界で、現実では味わえない人との繋がりを作っていく紀子は、オフ会の話が出るたびに断り続け、やがて作り上げた繋がりを絶ってしまう。 そうしてネットの世界を渡り歩いているとき、一人の男の子と知り合う。 彼との出会いが、紀子の世界を少しずつ変えていった。

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Chapter 1

第1話 醜い私

“안 돼!”

극심한 통증에 소우연은 큰소리로 외치며 눈을 번쩍 떴다.

소우연 앞에 펼쳐진 건 화려하게 꾸며진 방이었으며 향초가 불에 타고 있는 소리가 들렸고 은은한 향도 퍼지고 있었다.

조금 전까지 온몸을 괴롭히던 통증도 전부 사라진 것만 같았다.

소우연은 어안이 벙벙한 표정으로 방을 쓱 훑어보았고 단번에 이 방이 신혼방이라는 것을 알 수 있었으며 고개를 숙여보니 자신은 혼례복을 입고 있었다.

이 혼례복은 소우연이 쌍둥이 여동생 소우희를 위해 3년에 거쳐 직접 만든 혼례복이었는데 결국 소우연이 이 혼례복을 입고 시집가게 될 줄은 생각지도 못했다.

그리고 소우연의 결혼 상대는 악명이 자자한 회남왕 이육진이다.

상운국에서 명망 높은 전쟁의 신이었던 이육진은 3년 전 전쟁에서 부하에게 배신을 당해 위험한 상황에 처했었다. 결국 목숨 걸고 싸워서 위험한 상황을 벗어났지만 그 과정에서 온몸의 신경들이 전부 잘려 폐인이 되고 말았다.

그 뒤로 이육진은 성격이 난폭해지기 시작했으며 곁에서 시중을 들고 있는 노비와 시녀들을 아무렇지도 않게 살해하기도 했다.

황제가 이육진에게 혼인을 몇 차례나 하사했지만 신부들은 혼사를 치른 이튿날 바로 싸늘한 주검이 되어 회남왕 관저 밖에 버려졌다.

그러다가 한 달 전, 이육진의 모친 덕빈은 황제 앞에서 난동을 부리며 다시 한번 혼인을 하사해달라고 했고 그 상대가 바로 진원 장군 가문의 둘째 딸 소우희였다.

어렸을 때부터 소우희를 애지중지 키운 소씨 가문에서는 당연히 사랑하는 딸을 이육진에게 보낼 수 없었기에 결국 소우연이 쌍둥이 여동생 대신 이육진과 혼인을 하게 된 것이다.

사실 소우연은 오래 전부터 연모하는 사내가 있었으며 어렸을 때부터 함께 큰 두 사람은 혼인을 약속한 사이이기도 했다.

때문에 소우연은 이육진에게 시집을 가기 싫었고 더군다나 회남왕에 관한 소문이 너무 흉흉한 탓에 겁이 나기도 했다.

그러다가 혼사가 이뤄진 당일 날, 소우연은 소우희의 꼬드김에 넘어가 결국 도망을 결심하게 되었는데 멀리 도망치기도 전에 다시 잡혀오게 되었다.

크게 노한 덕빈은 소우연의 사지를 부러트린 뒤, 그녀를 소씨 저택 대문 앞에 던져 버렸다.

소우연은 가족들이 자신을 집에 데리고 가서 상처를 치료해줄 거라고 생각했는데 그녀의 바람과 달리 소씨 저택의 대문은 끝까지 굳게 닫혀 있었으며 아무도 나와보지 않았다.

그렇게 살을 에이는 듯한 겨울 바람에 온몸에 상처까지 심각했던 소우연은 결국 대문 밖에서 얼어 죽고 말았지만 소씨 가문에서는 그녀가 죽고 나서 시체를 거둬가지도 않았다.

소우연은 죽는 순간이 되어서야 자신은 그저 소설 속의 하찮은 조연이고 자신의 쌍둥이 여동생은 소설 속 모든 사람들의 사랑을 독차지하는 여자 주인공이라는 사실을 깨닫게 되었다.

때문에 소우연은 아무리 노력하고 발버둥쳐도 소씨 가문 사람들은 절대 그녀에게 신경 쓸 리가 없었으며 그녀는 그저 소우희 대신 희생하기 위해 존재한 사람이었다.

한편, 이런저런 생각을 하던 소우연은 망연자실한 표정으로 침대에 멍하니 앉아 예전의 기억들을 되돌려보고 있었다.

소설 속 내용에 의하면 이육진은 최대 악역이다. 얼굴이 망가지고 몸 전체가 폐인이 된 탓에 이육진은 성격이 변태적이고 포악했으며 소설 속 남녀 주인공들을 괴롭히다가 결국 처참한 죽음을 당하게 되어있다.

소우연은 이육진을 생각하면 조금 안타깝기도 했다. 명성이 자자한 전쟁의 신이 결국 그런 최후를 맞이하다니. 그의 인생도 소우연 못지 않게 불행하고 처참했다.

소우연과 소우희는 모친 뱃속에 있을 때부터 운명이 정해져 있었다. 점쟁이는 소우희가 귀한 운명을 가지고 태어날 아이이고 이와 반대로 소우연은 태어나는 순간 소씨 가문에 불행을 불러올 거라고 했다.

점쟁이가 말한 것처럼 소우연이 태어난 뒤로 소씨 가문에는 사건 사고들이 유난히 많았기에 가문 사람들은 점쟁이 말을 굳게 믿은 채 소우연을 홀시하고 냉대했다.

소우연은 평생 소씨 가문을 위해 희생했지만 결국 대문 앞에서 처참한 죽음을 당했고 심지어 시체 일부가 들개들에게 먹혔다.

하지만 예상 밖으로 결국 소우연의 시체를 거둔 사람은 이육진이었다.

이런저런 생각을 하고 있을 때, 방 문이 열렸고 휠체어에 탄 남자가 덤덤한 표정으로 방 안으로 들어왔다.

혼례복을 입고 있는 이 남자의 얼굴은 절반 이상이 심각한 화상을 입었고 화상을 입지 않은 반대쪽 얼굴에는 어마 무시한 칼자국 흉터가 나 있었다.

그 모습은 더할 나위 없이 공포스러웠다.

살짝 겁을 먹은 소우연은 본능적으로 자신의 옷을 꽉 잡은 채 조심스럽게 이육진의 눈치를 살폈다.

이번 생에는 절대 섣불리 도망치지 않을 것이다. 회남왕 관저에서 도망치는 순간, 소우연은 또다시 처참한 죽음을 당하게 된다.

덕빈은 아들 이육진을 그 누구보다 걱정했기에 아들을 모욕하는 사람은 절대 가만두지 않았다.

소우연은 이제 이육진이 떠도는 소문처럼 성격이 그리 난폭하지 않기를 빌 수밖에 없었다.

“그만 물러가거라.”

낮게 깔린 이육진의 목소리에 뒤에 서있던 호위무사는 소우연을 경계하듯 쳐다보다가 이내 돌아서서 방을 나섰다.

그렇게 방 안에는 이육진과 소우연 두 사람만 남게 되었다.

소우연은 조금 긴장이 되긴 했지만 사실 이육진이 그리 무섭지는 않았다. 전생에 그녀의 시체를 거둔 것으로만 봐도 이육진은 소문처럼 그렇게 악마 같은 사람은 아닐 것이다.

“소인이 시중을 들어도…”

잔뜩 긴장한 소우연은 목소리가 미세하게 떨리고 있었고 그 모습에 이육진은 소우연의 말을 끊으며 담담하게 물었다.

“내가 무서워?”

“아닙니다. 소인은… 소인은 그저 조금 긴장이 돼서…”

말까지 더듬는 소우연을 보며 이육진이 피식 웃음을 보였다.

“당연히 내가 무섭겠지. 이런 모습을 하고 있는데 안 무서운 게 더 이상하지 않겠어?”

소우연은 고개를 살짝 들어 이육진을 힐끗 쳐다보았다.

얼굴이 공포스러울 정도로 심하게 망가졌지만 치료가 안 될 정도는 아니었다.

어렸을 때 소우희가 장난을 치다가 화상을 입게 되었는데 그때 당시 가족들은 세상이 무너진 듯 엉엉 울면서 발만 동동 굴렀고 소우연은 부모님의 걱정을 덜어드리기 위해 밤낮없이 치료제를 연구했었다.

그 결과, 흉터 치료에 효과가 매우 훌륭한 약을 조제해냈고 덕분에 소우희는 몸에 난 화상 흉터가 깔끔하게 없어졌다.

이육진의 흉터가 소우희보다 훨씬 심각하지만 그래도 흉터가 꽤 많이 치료될 수는 있을 것이다.

소우연이 침대에서 내려와 이육진에게 천천히 다가갔다. 하지만 손이 휠체어에 닿기도 전에 이육진이 소우연의 손을 툭 밀쳐냈고 화들짝 놀란 소우연은 얼른 해명했다.

“소인에게 나쁜 의도는 없습니다. 이제 밤도 깊었는데 왕야께서도 이만 쉬셔야 할 것 같아서 도와드리려고 한 것뿐입니다.”

이육진은 말없이 이글거리는 눈빛으로 소우연을 뚫어져라 쳐다보았고 그 눈빛에 소우연은 심장이 터질 것만 같아서 이내 얼굴이 벌겋게 달아올랐다.

“소씨 가문에서 큰 결심을 했네.”

코웃음을 치던 이육진은 직접 휠체어를 끌고 침대 곁으로 가더니 두 손으로 휠체어 손잡이를 툭 쳤다.

다음 순간, 허공 위로 날아오른 이육진은 손바닥을 빠르게 앞으로 뻗었고 그대로 침대 위에 완벽하게 착지했다.

소우연은 그런 이육진을 보며 너무 놀라서 입을 떡 벌렸다.

‘이육진은 완전히 폐인이 된 게 아니었어! 두 다리는 더 이상 쓰지 못하지만 무술 실력은 여전히 대단해! 그럼 지금까지 사람들을 속이고 있었던 거야?’

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第1話 醜い私
 洗面台の鏡に映る顔を見るたび、私は心の底から嫌になる。 どうして私はこんなに醜いのだろう。目は小さくて一重で、鼻は大きくて形が悪い。輪郭だってぼんやりしていて、とても十六歳の女の子の顔だなんて思えない。友だちのお母さんに間違われたこともある。それも一度や二度じゃない。 でも、だからって、なにもしないわけにはいかない。 私は丁寧に髪をブラッシングする。昨夜アイロンをかけておいた制服に袖を通し、スカートのプリーツが乱れていないか確認する。靴下もきちんと伸ばして、靴紐も結び直す。 これが私の、せめてもの抵抗だった。 顔は変えられないけれど、せめて身だしなみくらいはきちんとしていたい。そうしていれば、少しはマシに見えるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、今日も鏡の前で身支度を整える。「紀子、朝ごはんよ」 一階からお母さんの声が聞こえた。私は最後にもう一度鏡を見て、小さくため息をついた。 今日もまた、長い一日が始まる。 *  家を出るとき、私はいつものように人通りの少ない裏道を選んだ。大通りを歩けば同級生に会う可能性が高いし、なにより人の視線が怖い。すれ違う人たちが私を見て、心の中でどんなことを思っているか想像してしまう。「あの子の顔、可哀想に」「まだ高校生なのに、あんな顔で」 そんな声が聞こえてくるような気がして、私は俯いて歩く。 桜の花びらが風に舞っている。薄いピンク色の花びらが青い空に映えて、とても美しい。普通の女子高生なら、友だちと一緒にこの桜を見て「きれい」って言い合って、写真を撮ったりするんだろうな。 でも私には、そんな友だちはいない。 学校の門をくぐるとき、胸がきゅっと締め付けられた。今日もまた、あの教室に入らなければならない。みんなの視線を感じながら、一人で過ごさなければならない。 私は深く息を吸って、覚悟を決めた。 *  教室に入ると、もうクラスメイトの何人かが登校していた。私はいつものように、一番後ろの隅の席に向かう。ここなら目立たないし、みんなの楽しそうな会話を聞きながらも、無理に参加する必要がない。「昨日のドラマ見た?」「見た見た! 最後のシーン、超感動した」「あの俳優さん、めちゃくちゃイケメンだよね」 女子たちの華やかな会話が教室に響く。中でもひときわ美しい声で話しているのは、桧葉彩音さんだった
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 高校生になってもうすぐ一年が過ぎようとしている。最初はおっかなびっくりだったSNSも、今では私の生活に欠かせないものになっていた。 朝起きて最初にすることは、昨夜の間に来ていた通知をチェックすること。学校から帰って真っ先にするのも、やっぱりスマホを開くこと。現実の世界では相変わらず透明人間のような私だけど、ネットの中では「NORI」として、確かに存在している。 今日も放課後、自分の部屋でスマホを開く。いつものアニメ掲示板には、昨夜投稿した作品の感想レビューに、たくさんのレスがついていた。『NORIちゃんのレビュー、いつも的確で参考になります!』『この作品、私も気になってたんです。今度見てみますね』『NORIさんのイラスト、本当に上手ですね。プロ志望ですか?』 画面を見ながら、自然と口元が緩む。こんな風に誰かに認めてもらえるなんて、現実の世界では考えられない。クラスでは誰とも会話らしい会話をしない私が、ネットでは毎日何十人もの人とやり取りをしている。 特に仲良くなったのは、「アキ」「みー」「タケシ」の三人。みんな同じような年代で、アニメや漫画が大好きな人たち。最初は恐る恐るだった会話も、今では本音で語り合えるようになった。 でも。 スマホが震えて、みーからのメッセージが届く。『NORIちゃん、今度みんなでオフ会しない? もうすぐ春休みでしょ? アキちゃんも賛成してくれてるし、せっかく同じ関東なんだから、会って話そうよ!』 画面を見つめたまま、胃がキューッと縮むような感覚になる。 オフ会。 また、その話しになる……。 いつかは話が出ると思っていても、実際にそうなると気持ちが沈む。 スマホを手にしてネットの世界で交流を始めてから、何度、同じような誘いを受けたことだろう。アキからも、タケシからも、そして他の何人もの人から。みんな善意で、私のことを仲間だと思って誘ってくれる。 でも、私は会えない。 絶対に会えない。 みんなに嫌われたくない。 震える指で、返信を打つ。「ごめん、みーちゃん。私、人見知りがひどくて、まだオフ会は無理かも。声をかけてくれて本当にありがとうございます。今回は無理だけど、またの機会にお願いします」 送信ボタンを押した後、ベッドに身を投げ出す。天井を見上げながら、いつものように自己嫌悪の波が押し寄せてくる。 
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第5話 ショウとの出会い
 オフ会を断り続けてようやく春休みが終わった。今日から高校二年生になる。 アキたちからの連絡はまだ来ているけれど、以前より少し距離を感じる。きっと私が会いたがらないことで、困惑しているんだろう。もしかすると、嫌われてしまったのかも知れない。 でも仕方ない。これが私の現実だから。 今日は金曜日。学校から帰ると、いつものようにスマホを開く。最近よく覗いている新しい掲示板に、興味深いスレッドが立っていた。『今期アニメの隠れた名作について語ろう』 タイトルを見ただけで、心が躍る。まさに私が語りたかった話題だった。最近見始めた作品で、まだあまり話題になっていないけれど、すごく面白いものがある。 スレッドを開いてみると、まだ投稿は少ない。立てた人の書き込みを読んでいくと、私と同じような感性を持っている人のように感じられた。 思い切って、レスを書いてみる。「スレ立てありがとうございます。私も最近、あまり注目されていないけれど素晴らしい作品に出会いました。「星降る街の物語」という作品なんですが、ご存知でしょうか?キャラクターの心理描写が繊細で、特に主人公の内面の成長が丁寧に描かれていて……」 長々と感想を書いて投稿する。こういうときだけは、文章を書くのが楽しい。誰も私の顔を見ていないから、思ったことを素直に表現できる。 しばらくすると、返信が来た。『はじめまして。「星降る街の物語」知ってる人がいるとは思いませんでした! 僕も先週から見始めたところです。確かに心理描写が秀逸ですよね。特に第三話の主人公の独白シーンは鳥肌が立ちました。NORIさんのレビュー、すごく的確だと思います』 投稿者の名前を見ると、「ショウ」と書いてある。私の投稿にきちんと目を通してくれて、しかも共感してくれている。なんだか嬉しくなって、すぐに返信を書いた。「ショウさん、ありがとうございます! 第三話の独白シーン、本当に素晴らしかったですよね。あのシーンで主人公への見方が完全に変わりました。まだ見ている人が少ないのが残念ですが、きっと後から評価される作品だと思います」 そこから、二人の間で活発なやり取りが始まった。作品の細かい演出について、キャラクターの心理について、声優の演技について。話せば話すほど、ショウの感性が私と似ていることがわかってきた。 気がつくと、もう夜の十時を過ぎて
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第10話 秘密の時間
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