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第3話

Autor: 灯り
今、彼が大事に守りたい相手は、別の人だ。

彼は心ここにあらずのまま、やけに早く食事をかき込んだ。

一方、私は彼の前で、この十年を一つひとつ数え上げた。

「辰悟、あのとき、あなたがあの不良たちから私を助けてくれたでしょ?あの瞬間、私は一生あなたと一緒にいるって誓ったの。

二十歳のとき、あなたがくれた指輪、覚えてる?」

私は、十年間つけ続けた指輪を彼に見せた。

薄いメッキは剥がれ、まだらな錆がむき出しになっている。

彼はようやくスマホから視線を外し、気のない笑みを浮かべた。「まだこんな安物の指輪つけてるのか?」

胸が少しずつ裂けていくのを感じながら、私は黙って指輪を外した。

十年間大切にしてきたものが、まるで笑い話みたいだ。

あの頃、まっすぐな少年だった彼は私に告白し、意地になって指輪をはめて言った。「菜月、絶対外すなよ」

雷が鳴り、私は彼の皿に料理を取り分けた。

一方、彼は箸を置いた。

そして、立ち上がりながら言った。「晶は雷が一番苦手なんだ」

私は茶碗を持ったまま、俯いてご飯を口に押し込んだ。

涙が縁に落ちるのをこらえ、平静を装った。「せめて食べ終わってから行って」

彼はそのときにはもう、玄関に向かっている。

「早く彼女のところへ行かないと」

バタン!

扉の音と同時に雷鳴が轟き、胸が砕け散ったようだ。

彼は忘れている。私だって雷が怖いのだ。

別れて最初の一年、彼は私のいる街の天気を前もって調べていた。

雷雨の日には必ず電話をかけてくれた。

やがて彼は忙しくなった。

やがて私は怖くなくなった。

一人でクローゼットに隠れて震えていた雷雨の夜、彼は別の女の子のそばにいたのだ。

私は痛む膝をさすり、慣れた手つきで湿布を貼った。

三年前も、こんな雷雨の夜だった。私は家の前で一晩中ひざまずいた。

父親に、辰悟を助けてほしいと懇願した。

すると、父親は二億円で、私と彼の三年を買い取った。

「菜月、よかった!ある投資家が二億円出してくれた。会社は助かる!」

彼が興奮して電話をかけてきたとき、私はすでに異国に降り立っていた。

彼は全財産をはたいて安い国際線のチケットを買い、私を追いかけてきた。

私たちは雨の中で抱き合った。

別れ際、彼は目を赤くして言った。「菜月、待っててくれ。

君の父親に、俺がふさわしい男だって証明する」

晶がタイムラインを更新した。指を絡め合った二人の手の写真だ。

添えられた言葉は、【あなたのためなら、私は悪名を背負ってもいい】だ。

私は静かに「いいね」を押し、冷えきった料理をゴミ箱に捨てた。

ウエディングフォトを燃やし、彼が私に書いた九百九十九通のラブレターを燃やした。

十周年の贈り物にするはずだった、妊娠の診断書も燃やした。

すべてを片づけ終え、もう一度スマホを手に取ると、あの投稿はすでに消えていた。

代わりに、辰悟からの十数件の不在着信だ。

そして百を超える問い詰めのメッセージだ。【どういうつもりだ?

許すって言っただろ。なんで晶のタイムラインで存在感アピールするんだ!

晶が君のせいで自殺した!

なんて悪毒な女だ!】

……

無感情に画面をスクロールすると、その一言一言が鋭い刃となって胸を刺してきた。

そのとき、辰悟は目を真っ赤にしながら飛び込んできた。「晶が出血多量なんだ。

君は彼女と血液型が同じだ。輸血してくれ」

私は冷たく彼の手を振り払った。「嫌よ」

辰悟は目を見開き、怒鳴った。「行くんだ!」

私は凍りついた。

十年間一緒にいて、彼が私に怒鳴ったのは、これが二度目だ。

二度とも、晶のためだ。

辰悟は突然涙を流し、すべてを打ち明けた。「晶は俺の子を妊娠してる。

君は子どもを失ったことがあるだろ、菜月。頼む、彼女を助けてくれ」

それを聞いた私は足元がぐらつき、倒れそうになった。

彼の起業三年目、私は彼の代わりに酒を飲まされたことがある。

強い酒を十本も飲まされ、堀井グループ初の千万円超えの契約を取った。

目が覚めたとき、医者に告げられた。私の子どもはもういない、と。

心音すら感じることなく、あの子は私から離れていった。

入院していたあの一か月、彼は仕事に追われ、一日も付き添わなかった。

私はずっと理解し、彼を責めなかった。

まさか彼が、私の生々しい傷をえぐってまで……

自分の裏切りと、他の女との子どもを受け入れさせようとするなんて。

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