공유

カイルは堕落の次元に堕ちていく

작가: 吉乃椿
last update 최신 업데이트: 2025-06-19 21:27:06
光が消えた。

常に魂の隣で感じていた温かな盾が、まるで存在しなかったかのように消え去った。ナフィーラの世界から、守護という概念がごっそりと抜け落ち、代わりに吹き込んできたのは、肌を刺すような絶対的な孤独と、底知れぬ不安だった。

彼女の清らかな魂に刻まれた契約の紋様が、黒い炎に焼かれていく。その痛みは、カイルが今、魂の対価としてどれほど甘美な毒を受け入れているかを、残酷なまでに彼女に伝えていた。

「どうして……カイル……」

その問いかけは、もはや悲痛な叫びですらなかった。ただ、理解を超えた現実に打ちのめされた、虚ろな呟き。二人が共に紡いできたはずの誓いは、あまりにも脆く、儚く散った。

――そして、その同じ瞬間。

ナフィーラが光を失った魂の亀裂から、カイルは解放という名の新たな光を見ていた。いや、光ではない。彼の魂を縛り付けていた清廉な鎖が断ち切られ、剥き出しになった魂が、生まれて初めて本当の色を放ったのだ。

カイルが古い契約から解放された瞬間、彼の世界はリゼアの色に染まった。

女神セレイナの清らかな光も、戦神セイ=ラムの厳格な教えも、今や遠い夢の残響に過ぎない。彼の魂は、欲望の神《リーヴァ=アラ》と支配の神《ユラエル》が創り出した“堕落の次元層”に、完全に根を下ろしてしまったのだ。

「ああ、素晴らしい……。これこそが、本当の君だ」

リゼアは恍惚としてカイルの胸に頬を寄せ、彼の魂から立ち上る、堕落したばかりの新鮮なエネルギーを吸い込んだ。それは、神聖さを失い、剥き出しになった欲望の香り。彼女にとっては何物にも代えがたい美酒だった。

以前のカイルならば、一分の隙もない立ち姿で、常に周囲への警戒を怠らなかっただろう。しかし今、彼はリゼアの腕の中で、まるで骨を抜かれたかのように身を委ねている。戦神の加護を失った肉体は、代わりに官能的な気怠さと、飽くなき渇望に満たされていた。

「もっと……もっとだ、リゼア……」

カイルの唇から漏れるのは、もはや祈りではない。ただひたすらに、己の欲望を求める獣のような喘ぎだった。彼はリゼアの髪を貪るように掴み、その唇を求めた。ナフィーラと交わした清らかなキスとは全く違う、魂ごと喰らい尽くすかのような、激しく野性的な接触。

リゼアはそれを楽しげに受け入れながら、彼の耳元で囁く。

「欲しいものは、奪えばいいのよ、カイル。それが世界の真理。強い者が、欲
이 책을 계속 무료로 읽어보세요.
QR 코드를 스캔하여 앱을 다운로드하세요
잠긴 챕터

최신 챕터

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   ナフィーラは諦めない

    ナフィーラの祈りが天に届き、神々の新たな試案が動き出した頃。“堕落の次元層”から現実世界へと滲み出たカイルは、夜の闇に紛れ、かつて自らが守護したはずの王都に立っていた。彼が最初に向かったのは、セナトラ神聖騎士団への寄進も多く、カイルを「王都の英雄」と公然と讃えていた豪商の屋敷だった。夜会が開かれているのか、窓からは明るい光と楽しげな音楽、そして人々の笑い声が漏れ聞こえてくる。以前の彼ならば、その平和な光景に安堵し、静かにその場を去っただろう。だが、今のカイルの耳には、その全てが自分を嘲笑う不快な騒音にしか聞こえなかった。(俺が血を流して築いた平和の上で、何の苦労も知らずに笑う者どもめ……)彼の心に渦巻くのは、嫉妬と憎悪が混じり合った、どす黒い支配欲。リゼアの囁きが、彼の背中を押す。『欲しいのでしょう? あの富も、あの快楽も。あなたのものよ。さあ、奪いなさい』カイルは音もなく屋敷の塀を乗り越えた。腰に差した剣が、彼の殺気に呼応するように、鈍い紫色の光を放つ。警備の兵士が彼の姿に気づき、誰何(すいか)の声を上げようとした瞬間、カイルの姿は陽炎のように揺らめき、兵士の背後に回り込んでいた。「――ッ!?」驚愕する兵士の首筋に、手刀が正確に叩き込まれる。かつては敵を無力化するための技だったが、今はそこに一切の慈悲はない。崩れ落ちる身体を無感動に見下ろし、カイルは屋敷の中へと侵入した。広間で繰り広げられていた華やかな宴は、彼の登場によって一瞬で凍り付いた。黒い霧をまとったかのような禍々しい気を放ち、ゆっくりと歩を進めるカイル。その瞳には、かつての英雄の面影は微塵もなかった。「カ、カイル殿……!? いったい、どうなさったのです!」屋敷の主である豪商が、震えながら声をかける。カイルは答えない。ただ、品のない宝石で飾られた彼の指輪や、壁にかけられた高価な絵画、怯える貴婦人たちの絹のドレスを、品定めするように眺めるだけだ。「貴様らが享受するその全ては、本来、俺のものだったはずだ」低い、地の底から響くような声だった。「俺は英雄だった。ならば、英雄に相応しい富と、権力と、快楽があって然るべきだろう?」その理不尽な言葉に、人々は恐怖に染まった顔を見合わせる。カイルはゆっくりと魔剣を抜いた。紫色の刀身が、シャンデリアの光を不気味に反射する。「今日

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   カイルを助けたいナフィーラの願い

    その狂的な叫びを聞き、リゼアは満足げに微笑んだ。 「ええ、それでこそ私の騎士よ。さあ、行きなさい。その剣で、あなたの望む全てを蹂躙し、支配するの。それが、あなたが私に捧げる、最高の愛の証」リゼアに背中を押され、カイルは一歩、現実世界への干渉へと踏み出した。 彼の魂はもはや、光の神々の声が届かぬほど深く、暗い欲望の泥沼に沈んでいた。 戦神の誇り高き騎士は、今や欲望の神に身を捧げ、支配を渇望するだけの、哀れな堕落者へと成り果てていた。 その瞳に、かつての理性の光はどこにもなかった。――その頃。祈りの間に膝をついたナフィーラは、ふと息を詰まらせた。 絞り出した声は、誰に届くでもなく、静まり返った神殿に虚しく響いた。 彼女の頬を、一筋の涙が伝う。それは、ただの悲しみの涙ではなかった。 神託によって定められた「魂の契約」が、一方的に破棄されたことによって生じた、魂そのものの亀裂から流れ出す、痛みと喪失の結晶だった。その瞬間、祈りの間の空気がわずかに揺らぎ、彼女を包む光が一瞬だけ翳った。 ナフィーラは、自らの内にある“神の声”が遠のいていくのを感じた。 あれほどまでに近かったはずの彼の気配が、まるで別の次元へと引き裂かれていくような感覚―― まるで、自分の一部が奪われ、どこか見知らぬ暗闇に囚われていくかのようだった。(……違う。まだ、終わってはいない)その胸にわずかに残る温もりに、ナフィーラはすがる。 それがたとえ、かつて交わした誓いの残響でしかなかったとしても、彼女は信じたかった。 ――魂は、まだすべてを失ったわけではないと。***絶望が、冷たい霧のように心を覆い尽くそうとする。魂の亀裂から流れ込む痛みは、彼女の信仰心さえも凍てつかせようとしていた。もう祈るのをやめてしまえば、この苦しみから解放されるのかもしれない。そんな甘い囁きが、心の隙間に忍び寄る。だが、ナフィーラは手を胸に当て、ゆっくりと目を閉じた。――カイル。あなたがどれほど深い闇に堕ちようとも、私は、あなたの魂の奥にある“光”を信じている。揺らぐ光の中、微かに震える祈りの声が彼女の唇から零れ落ちる。それは神への祈りであると同時に、失われかけた絆への呼びかけでもあった。「セレイナ様……どうか、お導きください。彼の魂が完全に闇に染まりきる前に、私の祈りが届くのな

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   カイルは堕落の次元に堕ちていく

    光が消えた。常に魂の隣で感じていた温かな盾が、まるで存在しなかったかのように消え去った。ナフィーラの世界から、守護という概念がごっそりと抜け落ち、代わりに吹き込んできたのは、肌を刺すような絶対的な孤独と、底知れぬ不安だった。彼女の清らかな魂に刻まれた契約の紋様が、黒い炎に焼かれていく。その痛みは、カイルが今、魂の対価としてどれほど甘美な毒を受け入れているかを、残酷なまでに彼女に伝えていた。「どうして……カイル……」その問いかけは、もはや悲痛な叫びですらなかった。ただ、理解を超えた現実に打ちのめされた、虚ろな呟き。二人が共に紡いできたはずの誓いは、あまりにも脆く、儚く散った。――そして、その同じ瞬間。ナフィーラが光を失った魂の亀裂から、カイルは解放という名の新たな光を見ていた。いや、光ではない。彼の魂を縛り付けていた清廉な鎖が断ち切られ、剥き出しになった魂が、生まれて初めて本当の色を放ったのだ。カイルが古い契約から解放された瞬間、彼の世界はリゼアの色に染まった。女神セレイナの清らかな光も、戦神セイ=ラムの厳格な教えも、今や遠い夢の残響に過ぎない。彼の魂は、欲望の神《リーヴァ=アラ》と支配の神《ユラエル》が創り出した“堕落の次元層”に、完全に根を下ろしてしまったのだ。「ああ、素晴らしい……。これこそが、本当の君だ」リゼアは恍惚としてカイルの胸に頬を寄せ、彼の魂から立ち上る、堕落したばかりの新鮮なエネルギーを吸い込んだ。それは、神聖さを失い、剥き出しになった欲望の香り。彼女にとっては何物にも代えがたい美酒だった。以前のカイルならば、一分の隙もない立ち姿で、常に周囲への警戒を怠らなかっただろう。しかし今、彼はリゼアの腕の中で、まるで骨を抜かれたかのように身を委ねている。戦神の加護を失った肉体は、代わりに官能的な気怠さと、飽くなき渇望に満たされていた。「もっと……もっとだ、リゼア……」カイルの唇から漏れるのは、もはや祈りではない。ただひたすらに、己の欲望を求める獣のような喘ぎだった。彼はリゼアの髪を貪るように掴み、その唇を求めた。ナフィーラと交わした清らかなキスとは全く違う、魂ごと喰らい尽くすかのような、激しく野性的な接触。リゼアはそれを楽しげに受け入れながら、彼の耳元で囁く。「欲しいものは、奪えばいいのよ、カイル。それが世界の真理。強い者が、欲

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   カイルへの甘い誘惑

    「戦神セイ=ラム……剣と誓いの神、ねぇ」リゼアは艶然と微笑みながら、カイルの胸にそっと指を滑らせた。硬質な鎧の上からでも、その指先からは魂を蕩かすような熱が伝わってくる。「そんな重苦しいものを背負って、疲れない? 誓いだの、忠誠だの……そんなもので自分を縛り付けて。本当は、もっと自由になりたいのでしょう?」「自由……」カイルの唇から、無意識に言葉が漏れた。その言葉に、脳裏に一瞬、ナフィーラの祈る姿がよぎる。彼女の清廉な光。神託によって結ばれた魂の契約。それはカイルにとって絶対の理であり、誇りそのものだったはずだ。だが、今の彼には、その記憶さえも色褪せて、無味乾燥なものに感じられた。ナフィーラの光は、あまりに眩しく、あまりに純粋で……今の自分には、どこか遠い世界の出来事のように思える。あの「魂の契約」ですら、今は解き放たれるべき古びた枷のように感じられていた。「そう、自由よ」リゼアは囁き、カイルの耳元に唇を寄せた。吐息と共に“呪香”がさらに濃密に彼を包み込む。「ここでは、何も背負う必要はないの。欲しいものを、欲しいと願うだけ。あなたの魂が渇望する、その全てを、私が満たしてあげる」その時だった。リゼアの後ろ、空間の深い闇が僅かに揺らめき、ひとりの男が音もなく姿を現した。影が人の形を取ったかのような、静かで、底の知れない存在。支配の神ゼルヴァトの意志を体現する男、ユラエル。彼の無感情な瞳が、じっとカイルを見据えている。それは評価するでもなく、断罪するでもない。ただ、そこに在るという事実だけで、空間そのものを支配下に置くような絶対的な圧力があった。誘惑の言葉を囁くリゼアと、無言のまま全てを肯定するユラエル。欲望と支配。二柱の神の力が、この空間で完璧な調和を成していた。リゼアはカイルの動揺を見透かしたように、くすくすと笑う。「彼はユラエル。私の意志を、この世界に形作る者。あなたがここに留まりたいと願うのなら、彼はその願いを“現実”にしてくれるわ」リゼアが手を差し出すと、その空間から滑るように、紅玉を溶かしたような液体で満たされた杯が現れた。「さあ、カイル。飲み干して。これはただの酒ではないわ。あなたの魂を、古い誓いから解き放つための“契約”よ」カイルは、その杯を見つめた。ナフィーラとの契約は、神託による光の契約。そして今、目の前にあるのは

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   香煙の甘美に溺れていくカイム

    香煙が、ゆっくりと意識を滲ませていく。 淡く、甘く、そしてどこか懐かしいその香りに、カイムの心は緩んでいた。(……また、ここへ来てしまった)わかっていた。 ここが“女神の声の届かぬ場所”だと、知っていた。 けれど、どうしても――ここに足が向いてしまう。「あなた、また来たのね」鈴を転がすような声が背後から響く。 リゼアだった。 絹のような衣が香にゆれ、カイムのすぐ傍へと寄り添ってくる。「神殿では、もう窮屈だった?」「……そうかもしれない」その言葉を口にした自分に、カイムは小さく驚いた。 “そうかもしれない”――本当に、そう思ってしまったのか。神殿では祈りと訓戒、約束と責任が彼を取り囲んでいた。 ナフィーラを守ること、神の意志に従うこと。 そのすべてが、誇りであり、使命だった。なのに今は…… リゼアのいるこの場所の、何と静かなことか。 思考も、感情も、ただ香に溶けていくような心地よさ。「君は……何者だ?」 「さあ。あなたは、私に“何を見たい”の?」リゼアは微笑んだ。 その笑みが何かを思い出させるようで、 だが同時に、それを思い出したくないという気持ちも胸をかすめる。(ナフィーラ……)その名が浮かびかけた瞬間、 香が一層濃く漂い、すべてを塗り潰した。もう少しだけ、ここにいたい。 もう少しだけ、このままでいたい。 この違和感ごと、夢に沈みたい。それが、カイムの魂が“静かに落ち始めた”最初の夜だった。訓練を終えたカイムの肌には、微かな香が残っていた。 ――“あの女”と出会ってから、しばしばまとわりつく甘く、湿った花の香。はじめは不快だった。 この香りは神殿の空気には存在しない。 ナフィーラの祈りの香炉からも、女神セレイナの神域からも、こんな香りは漂ってこない。けれどその夜、彼は―― ふと、その香りを吸い込みたくなった。(……なんだ、この感覚は)ほんの一瞬、目眩に似た快さが脳髄を撫でた。 指先がじんわりと熱を持ち、呼吸が浅くなる。それは、戦の後に感じる昂りとも、祈りの後の静寂とも異なる。 ただ――心の底に沈殿していた“何か”が、少しずつ溶け出していくような。(……違う。これは……)否定しようとする思考とは裏腹に、足は自然と“香の気配”のある方へ

  • 過去に失った愛にもう一度出会った~それが運命の始まりだった   月影に揺れる心

    夜が明けても、 ナフィーラの胸のざわめきは収まらなかった。神託の間に座し、香を焚き、月に祈りを捧げる―― それは巫女としての日課であり、使命の証でもある。けれど今朝、 彼女はひとつの祈りすら、口にできなかった。(どうして……)(祈っているのに、声が届かない。こんなはずじゃ……) (こんな沈黙……今まで一度もなかった)祈れば祈るほど、胸の中に染み込んでくるのは“確信”だった。――カイムは、変わってしまった。そして彼を包んでいた“あの気配”。 馴染みのない甘い香り、肌に纏わりつくような違和感。 それはナフィーラにとって――“神殿の空気を乱すもの”以外の何物でもなかった。いいえ、それだけではない。 この神殿を、この国を、女神たちが与えてくださったこの星の安寧を――音もなく蝕む気配。ナフィーラには、そうとしか思えなかった。 感情ではなく、霊魂がざわめくような“拒絶”の感覚。 神が創り、女神が守ってきたこの星の呼吸が、 ゆっくりと、しかし確実に狂わされている……。だがそれは、 “神託によって与えられた真実”ではない。 ただの“直感”――彼女自身の感覚だった。巫女にとってそれは、最大の背信に等しい。神の声に従う者が、神を待たずに動こうとする。それは、“己の内なる声”を、 神の意思よりも上に置くということ。けれどナフィーラは、 その胸の震えを振り払うように、衣の袖を握りしめた。「……エイル」控えていた付き人が一歩前に出る。「騎士団の中に、見慣れぬ女がいたわ。  名前も、素性も知らない。ただ……私の中の何かが、彼女を危険だと言ってる」「神託は……?」「降りていない。だから――これは……」 ナフィーラは目を伏せ、静かに言った。「神託に先んじる、私自身の“直感”です。  このままでは、何かが取り返しのつかないところまで行ってしまう」エイルは息を呑んだ。 巫女が神を待たずに命ずるなど、あってはならないことだった。だが彼女は、神託の器として育てられた巫女ではなく、 “人間としてのナフィーラ”として、初めて口を開いた。その強い眼差しに、エイルは静かに頷いた。「……わかりました。  誰にも知られぬよう、調べをつけてまいります」その背が去ったあと、 ナフィーラは

더보기
좋은 소설을 무료로 찾아 읽어보세요
GoodNovel 앱에서 수많은 인기 소설을 무료로 즐기세요! 마음에 드는 책을 다운로드하고, 언제 어디서나 편하게 읽을 수 있습니다
앱에서 책을 무료로 읽어보세요
앱에서 읽으려면 QR 코드를 스캔하세요.
DMCA.com Protection Status